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ウェイボーで12.8億回閲覧?中国政府と大手プラットフォーマー達が推し進める「地攤経済」とは

要点:
①露店経済を意味する「地攤経済」が中国でバズっている
②政府が雇用政策、景気刺激策として奨励
③アリババやテンセントなど大手プラットフォーマーも露店経営支援
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 「地攤経済」というワードが、中国でバズっている。6月4日23時時点で、ウェイボーでは、地攤経済のハッシュタグがついた投稿が12.8億回見られており、多くのニュース記事でも特集されている。地攤経済とは何か。なぜ突然ここまでバズっているのか。

 地攤とは、一言で表すと露店であり、地攤経済はすなわち露店によって生まれる経済である。中国ではお祭りの際だけでなく、合法なものと非合法なものを含め、日常的に運営されている露店だが、いわゆるB級グルメやアクセサリー、服など様々なものが買える。しかし、都市開発とともに、交通の邪魔となり、終わった後に出るゴミの量が多くて不衛生というイメージがあった露店の数は、減少傾向にあった。

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 では何故、今話題になっているのだろうか。きっかけは5月28日に閉幕した全人代期間中の李克強首相の発言だ。西部地域のある都市で、露店が雇用を大量に生んでいることを賞賛。その都市では3.6万の露店が開かれ、その夜の間、10万人の雇用を生んだと話す。また、その後山東省を視察した時にも、地攤経済が重要な雇用源であり、かつ中国の元気の源であることを強調した。実際、露店経営者は3000万人いるとされている。

 背景には、他国同様、中国でも新型コロナウイルスにより経済が減速し、多くの人が失業や収入減を経験している事実がある。全人代でも、李克强首相は中国では6億人が月収1000元(約15000円)で暮らしており、今回のコロナウイルスの影響から、彼らを含めた民衆の生活を守ることが重要だと発言。そこで、雇用を創出し、消費を刺激する一つの方法として、国家が地攤経済をプッシュしようとしているのである。実際にその動きは早々にあり、日本の内閣に当たる国務院が3月20日に公布した、雇用安定策に関する意見書の中にも、露店が言及されていた。 

 国の方針を受け、上海、成都、西安、南京、鄭州といった各地方政府が、各地の実情に合った形で、地攤経済を推進し始めている。例えば南京市では、交通や環境に悪影響を与えないという前提のもと、露店を出せる134カ所設定している。また、筆者が住む上海でも、市政府主導で6月6日から露店をテーマにした、第一回「上海夜生活節」が開催される。このように、露店経済が推し進められている地域は、6月5日の時点の人民日報のウェイボーによれば、全国各地に少なくとも27カ所もあるという。

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新型コロナウイルスの震源地 武漢でも

 このような政府の動きに、中国を代表する名だたる企業もいち早く対応、新たなビジネスチャンスを見出している。国内最大手のビジネス向け購買プラットフォーム 1688を持つアリババは、露店運営者を商品の供給面や、資金面でサポート。例えば、総額700億元の無利息掛け払い制度を導入し、運営者の資金繰り安定化の手助けをする。また、テンセントは、WeChat Payを通じて露店経営のデジタル化を支援。例えば、露店で販売している商品を簡単にオンライン店舗で売れるようにした。他にも大手ECプラットフォーマー京東、最近シェアリングバッテリー市場に本格進出したメイトゥアン、大手家電量販店蘇寧などが、関連サービスを続々と提供し始めている。
 
 雇用を増やしたいという思惑から、突如火がついた露店ブーム。政府による推進に、大手プラットフォーマーたちの力も加え、新型コロナウイルスで冷えてしまった中国の景気を、どこまで取り戻してくれるのだろうか。皆さんも中国に来た際は、ぜひ露店で臭豆腐を試してみて欲しい。

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文/邵 鴻成(Kousei Sho)

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