20年かけて電子政府に デンマークから学べること|【特集】漂流する行政デジタル化 こうすれば変えられる[COLUMN1]
高福祉国家、北欧の小国、きれいな街並み──。多くの日本人がデンマークに抱く印象はこのようなものではないだろうか。しかし、それだけではない。デンマークは国連がとりまとめる最新の電子政府指数で堂々の1位になるなど、世界でも高く評価されるデジタル先進国でもあるのだ(下図)。
デンマークは世界屈指のデジタル先進国である
現在デンマークでは、あらゆる行政手続きが電子化されており、市役所の窓口に行列ができることも、各種の申請手続きを紙で行うこともない。デジタル化の経緯を見ると、二つの特徴が見てとれる。一つは時間をかけて長期の目標を立てぶれずに実施したこと。もう一つは「強制力」を行使しデジタル改革を進めてきたことである。
デンマークでは、住民の取得意思の有無にかかわらず、日本のマイナンバーにあたる個人番号(CPR)が強制的に付与されている。CPRは地方政府で導入された1924年から納税・医療・教育などあらゆる場面で利用されるようになり、今では銀行口座の開設や医療サービスの受領など、生活のあらゆる場面で不可欠なインフラとして根付いている。
また、デンマークの電子政府政策は20年かけて段階的かつ強制的に導入されてきた。2001年から、4年ごとに「電子政府政策」が発表され、各政策では達成目標とマイルストーン(中間目標)が掲げられた。特筆すべきは、14年11月1日を区切りに、政府や自治体などの公共機関から市民への連絡を、半強制的に電子移行したことである。この間、国や地方自治体のデジタル化(第一・二次電子政府政策)を端緒に、公共機関と関わりのある民間企業(第三次)へと浸透させ、段階的に基盤を整えてきたからこそ、最後に市民(第四次)へと電子化を広げることができたのである。
デジタル化の進捗は可視化され、誰でもオンラインでチェックすることが可能だ。政府はいつまでに何をやるべきか、あらゆるメディアや著名人を使い、戦略的な告知を徹底するなど、デジタル化を一般市民に浸透させるための工夫を凝らした。
さらに、各種行政手続きのデジタル化は、全てを一度に実施したわけではない。戦略的に対象となるサービスを選び、一歩一歩進めていった。例えば、……
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