営業電話【三橋雄斗】
昼下がり、アイスを食べながらテレビを観ていると、突然知らない電話番号から着信がありました。
恐る恐る出てみると、
「突然のお電話失礼いたします〜!本日は三橋様にとても良いご提案がありご連絡いたしました〜!」
とのこと。
いつもなら、すぐにお断りして電話を切るところですが、
時間と心に余裕があったので、話を聞いてみることに。
「三橋さん、不動産投資ってご興味ございますか?」
と聞かれ、興味が無いところか、今の家賃を払うのでさえ精一杯なので、
「いや、考えたこと無いですねぇ」
と答えると、
「皆様、最初はそうなんですよ!不動産投資ってリスクが高そうとか!そんな余裕ない!とか!でもそんなことを仰っていた方々が今では何軒も保有していらっしゃいますよ!」
と、そこから怒涛の営業トーク。
個人の不動産投資といえば、マンションの一室を購入するくらいだと思って聞いていましたが、
どうやら彼は僕に、低層マンション一棟買わせようとしている。
そもそも何故、僕の名前を知っているのか。
何故、営業リストに僕が入っているのか。
甚だ疑問でありましたが、
話を聞いているうちに、僕にも買えるのではないかと思えてきました。
確かに、家賃収入があればバイトをしなくて済むし、マンション一棟買ってそのうち一部屋に住めば家賃を払うことがない。
そもそも、僕にも買えるかもしれないから営業の電話がかかってきたのだ。
最高ではないか。全てが上手くいく。
そう思い、「ちょっと確認させてください!」と電話を保留にして、ひかりちゃんに聞いてみました。
「マンション一棟買ってもいい?」
すると、
「すぐに電話を切りなさい!」
と怒り気味に言われてしまったので
、怯んで何も言い返せず、
電話先の営業マンに「すみません、家内に反対されまして…。この話は無かったことにしてください…。」
と伝えると、
「私に説得させてください!」
と力強く言われましたが、
「あなたには無理ですよ。他の方に当たってください。」
と言い、電話を切りました。
スマホを置くと、ひかりちゃんに、「頼りないねぇ。口車に乗せられてさ。これから心配だよ。」
と言われてしまい、少しションボリーナジョリーになっていると、
ひかりちゃんが続けて「そういえば営業マンにアタシのこと『家内』って言っていたね」と言うので、
「あ!ごめん!気が早かったね!」
と即座に謝ると、
「いや、アンタ奥さんのこと『家内』って言うタイプだったんかい!と思ったよ。家内って。」
と言い残し、皿洗いを始めました。
今度は『女房』と言ってみようかな。
【相方へ】
恐らく、ひかりちゃんが「あー…」というタイプのラーメンかと思います。
どちらに転ぶかはわかりません。
完全なる賭けです。乗ってくれますか?
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