『ジョブ理論』イノベーションを予測可能にする話

ジョブ理論という本を遅ればせながら最近読みまして。
結構いいなと思ったので、その内容についてまとめたいと思います。もうすでに読まれた方はブラウザ閉じちゃってください。

考えてみれば「そうだよな」という内容なのですが、よくまとまっていて、シンプルなだけにすぐに実践・応用できそうと思っております。

背景にある問題意識

まず、このジョブ理論が解決することとはなんなのかっていう話です。
簡単に言うと下記のようなものがあります

1. イノベーションのジレンマからの脱出 (イノベーションのジレンマは、著者が過去に提唱して一斉を風靡した理論で、テキトーにググれば出ます)

2. 新しいアイデアやビジネスが、一体どこの誰にぶっ刺さりして、競合はなんなのか、といった検証・分析

どうやって?

ジョブ理論では、人が何かに対してお金を使うとき、その人は何らかの進歩を遂げている、という風に考えます。言い換えれば、人は何かに満足していないとき、それをエレガントに解決してくれるプロダクトやサービスがあれば、喜んでお金を払いますよ、というシンプルな話です。
その「人が遂げるべき進歩」のことを「ジョブ(job)」と定義しています。
その際発生する、「購入」というアクションのことを「雇用(hire)」と呼んでいます。ちなみに、雇用には「大雇用」と「小雇用」があって、前者は製品を初めて雇用する瞬間のこと、後者は雇用済みの製品を再び使用する瞬間のことだそうです。

まとめると、「ユーザーには解決しなければいけない問題(job)があって、それを解決するためになんらかの製品やサービスを利用(hire)する」、という風に考えます。
英語由来の言葉を無理やり日本語に訳して使っているので少しややこしくなっていますが、内容としてはシンプルな話だと思ってもらって大丈夫だと思います。

ハンバーガー屋のミルクシェイクのジョブは?

この「ジョブ理論」の肝とも言っていい「ジョブ」はどのように分析・利用するべきなのでしょうか。

本文にも実例があったので、ハンバーガー屋のシェイクのジョブについて考えてみましょう。
こういう話が書かれています。

1. ハンバーガー屋で、シェイクの売り上げを伸ばすためにユーザーインタビューをしました
2. 「どんな味があったら飲みたいですか?」「量は多いほうがいいですか?」「いくらなら買いますか?」みたいなよくあるやつです
3. ユーザーの声に応えて製品を改良したところ、売り上げは全く変わりませんでした
4. そこでジョブ理論に基づいて、シェイクが解決する「ジョブ」はなんなのかリサーチすることにしました
5. 1日中ハンバーガー屋の駐車場に張り込んで購入者を観察したところ、早朝、車で来てシェイクだけを買って行く人が多いことに気づきました
6. その人たちに話を聞いてみると、「運転中暇で、お腹も減るから、手も汚れず長く楽しめるシェイクが最適」ということがわかりました

これでシェイクの「ジョブ」が解明されました。
シェイクを買う人(の一部の人)は、「運転中の手持ち無沙汰」というジョブをシェイクを雇用することで解決していたということですね。スニッカーズやバナナだと手が汚れたり、車が汚れたりします。シェイクだとそういうことはありません。しかも飲むのに時間がかかるから、運転中の暇つぶしにもなる。カップホルダーもあるので、こぼしたり置く場所に困ったりする心配もない。
このように考えると、シェイクのライバルは「他店のシェイク」や「飲料」だけではなく、スニッカーズやおにぎりなどもでもあるということが分かってきます。
それらライバルの中でも、シェイクはこのジョブを解決するのが最も上手な製品、ということになります。
そのように考えると、シェイクの改良は「ヘルシーにする」ではなくて、「もっと飲むのに時間がかかるようにする」かもしれませんし、「チキンナゲットを紙カップに入れて、爪楊枝を刺して売る」かもしれません。(日本のサービスエリアとかでは一般的な売り方ですね。)
ここではもはや商材がミルクシェイクではなくなっていますが、顧客のジョブという視点に立てば、シェイクを売ることだけが正解ではないということも分かってきます。

ジョブは文脈込みで考える

上記にある通り、ジョブはかなりシチュエーションに依存します。朝は確かに、通勤ドライバーの友かもしれませんが、週末になれば全く違う文脈(コンテクスト)でシェイクが雇用されていきます。例えば、子連れのママ友が女子会で盛り上がりたいときに、子供たちにシェイクを与えておけば一定時間静かになるから、とか。知らんけど(笑)
ジョブを考える上で、この「コンテクスト」がとても大事になります。あなたが売りたい製品は「いつ」、「誰が」、「どんな時(シチュエーション)」、「なぜ(なんのために)」雇用して、どういう進歩を遂げるのか、という風に明確に分析・記述してみましょう。

あなたの製品のジョブが分析できれば、本当のライバルが見えてきます。ママ友の例で言えば、子供をおとなしくするのは、シェイクより「アンパンマンの動画を見せてくれるiPhone」の方が優秀かもしれません。ジョブ単位で言えば、シェイクの競合がiPhoneにもなり得るということです。

無雇用とは!?

ジョブを分析することで、競合が明確になったり、それにより改善の余地・方向性が示されるということがなんとなくわかってもらえたと思います。
ここで、重要なポイントになるのが「無雇用」という選択肢だと著者は述べています。ほとんど全ての製品に共通して存在するライバルというのは、同カテゴリーの他社製品ではなく、「そこにジョブがあっても解決しようとしないこと」であったり、ジョブをより上手く解決してくれる製品を知らないために雇用しない、「無雇用」という状態だと言います。
例えば、電動カミソリのライバルは他社の電動カミソリや、使い捨てカミソリではなく、「ヒゲをそらないという選択」であったり、「床屋」であるかもしれません。

最後に - ジョブ理論の問題点

本書では、ジョブ理論がイノベーションを予測可能にする万能の理論のように書かれてる節が若干ありますが、個人的に感じた疑問点が1つあります。
それは、ジョブが明確に定義できてそれに基づいたプロダクトを提供できたとして、それがビジネスとしてペイする(持続可能なレベルに儲かる)とは限らないのでは?ということです。

実際に嫁とジョブ理論に基づいて、イノベーティブなビジネスを考えてみたのですが、最後に行き着いたところが、「では、1人頭いくら払ってもらえればこのビジネスは成立するか」というところで難しくなりました。

この辺りはまだ読み残している残り1/3ぐらいに書かれてるかもしれませんので、全部読み終わったらまた追記でもしようかと思います。


UI/UXデザインに関する情報発信をしています。この分野のコミュニティに貢献できるように、全てのnoteは無料で公開しています。サポートしていただけましたら、デザインのツールを購入するのに使いたいと思います。ツールの使い方や、レビューを投稿しておりますのでぜひご覧ください。