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【ガラス工芸】エミール・ガレのひとよ茸ランプとご対面!|北澤美術館・諏訪

久しぶりにガッツリ美術鑑賞をしたので、熱く(?)語りたいと思います。

今回訪れたのは、長野県諏訪市の北澤美術館。

諏訪湖の湖岸にある美術館で、主な所蔵品はエミール・ガレ、ドーム兄弟、ルネ・ラリックなどのガラス工芸品と現代日本画。

代表的な所蔵品である、エミール・ガレ作「ひとよ茸ランプ」を見に行きました!


ひとよ茸ランプとご対面!


説明は後で、早速ご覧いただきましょう……

エミール・ガレ「ひとよ茸ランプ」/ 北澤美術館

これがお目当ての「ひとよ茸ランプ」です。

こちらは撮影可能な作品でした。

世界的なガラス工芸家、世界最高峰の技術であり、「アール・ヌーヴォーの巨匠」と言われるエミール・ガレの有名な作品。

最近は美術検定の学習をしているのですが、そのテキストに掲載されていた作品。

世界に3つだけ現存していて、諏訪の北澤美術館、東京のサントリー美術館、フランスのナンシー派美術館に所蔵されているらしい。

長野にあるなら見に行くぞ!と美術館を訪ね、ワクワクドキドキしながらご対面。

結構大きい。家に飾ってあったら存在感抜群だろうなぁ。そして美しい。どこから見ても美しく、当たり前だけど雑さがどこにもない。

アール・ヌーヴォーの代表的な芸術家、そしてガラス工芸の巨匠……いやぁ本当に間違いないなと(素人感想だけど)感じました。ほんとうに美しい。

この作品のモチーフである「ひとよたけ」は、新しく生まれるとすぐにぐんぐん成長するものの、一夜でドロドロに溶けてなくなってしまうというキノコ。

溶けた傍らにはまた別の新しい生命が誕生して……と、生と死を繰り返す。

「ひとよ茸ランプ」はガレの晩年の作品。

そのとき白血病を患っていたガレは、自分の余命を感じていたのだろうか。解説によると、ガレはひとよたけを「生命再生の象徴」とみなしていたという。


ガラス工芸とジャポニスム


北澤美術館の2022年の特別展は「翼に希望をのせて ガレ、ドーム、ラリック-ガラス工芸にみるジャポニスムの鳥-」です。

ジャポニスムとは、19世紀後半のヨーロッパを中心に流行した日本趣味のこと。

鎖国後の開国で、日本の浮世絵などの美術工芸品が大量にヨーロッパへ広まり、西洋美術に取り入れられたのでした。

展示室入口の「ひとよ茸ランプ」の次の部屋には、日本的なモチーフを取り入れた色彩豊かなガラス作品がずらり。

今回は「鳥」のモチーフに着目した特別展。

ツバメやスズメ、カラス、水辺の野鳥などの日本画で多く描かれた「鳥」が、19世紀末のアール・ヌーヴォー期の作家たちの作品に取り入れられているんですね。

エミール・ガレ、ドーム兄弟、ラリックという有名な作家の作品が数多く展示されていました。


ガレ、ドーム、ラリックってどんな人?


この展覧会で、アール・ヌーヴォーのガラス工芸の知識が深まった気がします。

今まで特にガラス工芸には興味も知識もなかったのですが……今回はちゃんと学習してきましたよ〜!

そこで、先程から登場しているエミール・ガレ、ドーム兄弟、ルネ・ラリックってどんな人なのかを調べてまとめてみました。

特別展に展示されていた作品を見た私の感想も一緒に!


その前に……

アール・ヌーヴォーって何?

19世紀末から20世紀にかけてヨーロッパ中に広がった芸術運動。フランス語で「新しい芸術」を意味する。

都市化・工業化された社会の中で、芸術の持つ意味を再考した。大量生産品ではなく、職人の手作りする美しくて温かい工芸品が大切にされた。

植物模様や昆虫の模様、曲線的な装飾が特徴。建築、工芸、絵画など幅広い。

以前noteに書いたミュシャもアールヌーヴォーの有名作家だね


【エミール・ガレ】巨匠・アールヌーヴォー・パリ万博

アール・ヌーヴォーの巨匠。

1846年フランス(ロレーヌ地方ナンシー)に生まれた。のちに父の工場を受け継ぎ、ガラス陶器の制作を開始。

家具工場やガラス製造工場を建てて、職人やディレクターとして数々の作品を制作した。

パリ万博へ出品した作品が次々グランプリを受賞して有名になり、アール・ヌーヴォーの巨匠になった。

ガレが死去した後にも、彼の工場でガレの作品は生産され続けた。


特別展パンフレットより
エミール・ガレ「雪中松に鴉図花瓶」


■特別展を見た感想

ガレの作品は他の二人と比較すると、派手だなという印象。色使いがはっきりとしていて、日本的モチーフもドーーーンと前面に出している。

ランプや花瓶が目立つ。色も形も超絶美しくてカッコイイ!まさに「芸術品」と感じた。



【ドーム兄弟】ガレをリスペクト・新技術で有名に

フランス(ロレーヌ地方ビチュ)出身のガラス工芸家。

兄のオーギュストは1853年生まれ、弟のアントナンは1864年生まれ。「ドーム兄弟」として呼ばれているらしい。

普仏戦争のあとにナンシーに移住、ガラス工場の経営者になった父を手伝い、受け継ぐ。

これまで日用品ガラスを製造していたが、ガレに刺激されてガラス工房を建設した。

最初は高級グラスセットの製造を始めたらしい……が、次第にガレの真似扱いをされてしまう。

頑張って新しいガラス技法を開発したら高評価!パリ万博でもグランプリを受賞し、ガレと並ぶほどに有名になった。

その後アントナンはエコール・ド・ナンシー(ナンシー派)の副会長になった。ドーム兄弟はナンシー派の巨匠?ちなみにガレが会長らしい。


特別展パンフレットより
ドーム兄弟「ツバメ文円筒形花瓶」


■特別展を見た感想

ガレと同じ日本モチーフを扱っていても、ガレよりも落ち着いている印象。

なんとなくふわっとしていて、キレイな美しさ。写実的な風景をガラス陶器に描いているみたい。

ひとつの小さな作品の中に、広大で豊かな土地と空間がぎゅっと詰まっていると感じた。



【ルネ・ラリック】ジュエリー作家・香水瓶・アールデコ

アール・ヌーヴォーとアール・デコの両方で活躍。

1860年にフランス(シャンパーニュ地方マルヌ県アイ村)に生まれた。宝飾工芸家に師事し装飾を学んだあと、高級アクセサリーを手掛ける宝飾デザイナーになった。

パリ万博で宝飾作品がグランプリを受賞すると、アール・ヌーヴォー作家として有名に。

ファッションの流行がボリューミーからシンプルスタイルに変わると、派手な宝飾品が売れなくなったため、宝石からガラスのジュエリー作家に転向。

その後香水商の注文により、香水瓶とラベルのデザインをすると大人気に!本格的にガラス工芸品を作り始めた。

1925年のパリ万博に作品を出品(パビリオンとして作った)。

このときに流行したのが「アール・デコ(装飾美術)」で、幾何学図形を用いた直線的で表現が特徴。アール・デコ作家としても人気に。


特別展パンフレットより
ルネ・ラリック「香水瓶 三羽のツバメ」


■特別展を見た感想

ほかの2人とはまったく違うテイスト。

透明や白っぽいガラス作品でこれも美しい。元々ジュエリーをデザインしていたからなのか、そうかそうかと納得。

香水瓶が美しすぎてびっくり。瓶よりもふたの方が目立っている……!欲しい〜!憧れの逸品です。ガラスの彫刻って感じなの。



まとめ


もしも3人が同じ机上に置けるサイズのガラスの器を作ったとしたら、

ガレ一目見て感動する机上の日本画(これぞジャポニスム)

ドーム兄弟美しい自然を机の上で楽しめる作品

ラリック特別な日に飾りたい憧れの逸品

という異なる印象……

(個人的な印象です)



アール・ヌーヴォーのガラス工芸を知る


今回はじっくり美術鑑賞をして、たくさん学びました~!いいものを見た!

3人の作家について詳しく調べて、とても勉強になりました。


ミュージアムショップで「ひとよ茸ランプ」(ガラスのミニチュア)を購入。

そして美術館内のカフェでものんびり。
諏訪の特産品が「かりん」だと知ったので「かりんティー」を。

諏訪湖畔には、かりん並木があります。
(実はかりんではなくマルメロだったという話も……)

大変充実していた美術館巡りでした!

楽しかった~~!


▽参考



▽諏訪をもっと知る

諏訪湖の御神渡りnoteです。

北澤美術館の情報


▽【マガジン】見てみてアートな世界

芸術関係のnoteを集めました。


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