読み切り異色恋愛短編小説『シークレットカーセックスisノンフィクションドライヴ』

(1)

とある見知らぬ中年男が、この小説の主人公だ。

広上洋三(ひろかみ・ようぞう)は憎き悪妻と離婚して別々の家庭となった実の娘・城川蓮(しろかわ・れん)に実際に恋をしていた。何年にも渡り、ストーカー同然の行為を繰り返し、もう金輪際関係のない城川家に自転車で通った挙句、ようやく自動車を手に入れた広上洋三は、自動車に乗って、またもやストーカー行為を城川蓮に対して、繰り返していた。周囲の人間からは、最初は止める者もいたが、後には止めに入るものも、その熱量に負けて、居なくなっていた。

「蓮、今度、ドライヴ行かない??」

洋三の胸にはコロナウィルスという七文字は存在しない。周囲は三密に気を付けろと、散々と注意しているのに、息子の航が注意するまでは、手洗いうがいすら、ままならない堕落したダメ人間だった。

洋三は今年で還暦に近い年齢だ。普段からテレビも見ず、ラジオも聞かず、新聞も見ず、読書もせず、何もインプットすることのない暮らしを送っているので、コロナウィルスの七文字も、航が教えてあげるまで、知らなかったくらいだ。

さっきの言葉を軸に洋三と蓮は「実の親子(実の父と実の娘)」なのにも関わらず、見知らぬ公園や人影の少ない路地裏に自動車を止めて、セックスを重ねることになる。

まだ女子大生?でもある蓮は、実の父の洋三の腕力に負けると悟り、自らの身体を、その生身の肉体を彼氏ではなく、洋三に一番最初に捧げることになる。

「太平洋が三つあるから、洋三。わかるか?蓮。」

そう呟くと、スマホを弄る蓮は、洋三の瞳を見つめる。洋三は、自動車のブレーキを引いて、安全な場所まで移動して、自動車を停車させる。そして、自動車を止めて。

二人はディープキスを始めた。長い長いディープキスだった。実の親子、実の父親と実の娘だとは思えないくらいの深い深いディープキス。そのディープキスが終わると、洋三は蓮からスマホを奪い取り、スマホの電源をオフにした。

「これで誰にも邪魔されない。ね?」

もう一度、深い、いや、不快なディープキスを重ねて、洋三は着衣のままの蓮の胸をまさぐり始めた。蓮は一瞬、嫌な顔をしたが、洋三の腕力を想像し、車内に流れる香水の嗅覚に負けたのだった。胸を匂い立つようにまさぐる洋三。なすがままの蓮。それらが地球の自転を何周もするようにリフレインされていく自動化の罠。

蓮のスカートを脱がそうとする洋三に蓮は深いため息をついた。スカートを自ら脱ぎ、洋三は蓮のレディー・バナナをまさぐりはじめた。レディー・バナナはドンドンまさぐられていく。やがて、絶頂に達して、車内はレディー・バナナの皮の水分で水溜りが完成するだろう。その時まで、洋三は、ずっと、蓮のレディー・バナナをまさぐっていた。

(2)

航はスマホから洋三のスマホに電話をかけようとしていた。電話をかける。しかし、電源が入っていないようだ。洋三の仕事先の急用の電話が自宅の電話にファックスとして送られてきて、用紙がコピーされていた。しかし、一向に洋三のスマホには繋がらない。航は諦念を持ってして、電話を切り、自分の会社へと向かった。まだ夕方すぎだった。

(3)

洋三が蓮とカーセックスをノンフィクションでリアルタイムで実施しているとも知らずに。。

【完】