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親子ふたり旅と危険

女性と小さい子どもふたりだけで旅をしていて危険はないのか?もちろん何度も聞かれてきたことだ。

ひとり旅時代は、いわゆる「秘境」というような場所を好んで旅してきたけれど、小さい子を連れたふたり旅になってからは、まず旅先選びの段階で危険かもしれない場所は選ばなくなった。子どもを連れて旅したら気持ちが楽しくなりそうな場所を選ぶ。そして絶対に無茶なことはしない。

今まで出かけた先で危険な目にあったことはほぼない。だいたいは小さな子どもを見て大きな愛を送ってくれて、話しかけてくれて、電車やバスに乗れば大荷物のわたしを手助けしてくれて、子どもが乗ってこようものならすぐに席を立ち譲ってくれる人も多い。
日本の交通機関よりも子連れに寛容で親切。それは子連れで旅した多くの旅人が持つ感想だ。

だけれど、油断は禁物。常に気を張っていないと、逆に狙われることもある。子連れに甘んじているときっと痛い目にあう。だからわたしは決して気を抜かない。

決して!というのも、最初にトワを連れて行ったイタリアでまんまとスリ未遂にあったからだ。ローマの地下鉄で、相手は超プロだった。顔のすぐ下にショルダーバッグを下げていたのに、気づいた乗客がわたしとスリの女性を引き離してくれたからよかったものの、指を刺されて見たバッグのファスナーは見事に開いていた。人生初体験だった。

あー、狙われるのね、と自分がそういう目に遭ってやっと悟った。

それから2年後、トワとふたりでチェコで電車に乗った時。わたしたちの指定席にすでに座っているカップルがいる。そこわたしたちの席なんだけどと声を掛けると男が一言。

「この電車はブタペスト行きだ」

彼が座りたいがためにわたしたちに言い放った言葉だったが、わたしは一瞬妙にその一言に浸ってしまった。ブタペストか〜。ハンガリーだっけ〜。へ〜、このへんからもう近いんだ〜。ずっと電車で旅して行ったらいろんなところ行けるな〜〜〜

一瞬の逃避行で現実に引き返し、いやいやいや、違いますよねみなさん、と同じボックス席に座っていた人たちに助けを乞い、男の彼女もそんな雰囲気にいたたまれなくなったのか席を立った。

わたしたちは今のところ、無事に旅を続けている。

Bruno, Czech Republic
2015

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