表現の自由は毒薬である


 皆さん、こんにちは。世の中、気に入らない意見で溢れてますよね。|木賃《もくちん》ふくよし(芸名)です。

 いきなりタイトルに関係があるようなないような、微妙な「とある珍しい病気」と「その特効薬」の話をさせてもらうが、あまり気にせず読んで頂けると幸いである。
 長文を読むのが苦手な方は、●●●●●●●●の部分まで読み飛ばしても大丈夫なように要約してある。
 どちらでも構わないが、早速本文と行こう。

 そこに「薬」がある。薬品名は「T-Alexia」
 このT-アレクシアは、魔法でも詐欺でも偽薬でも何でもなく、普通の医薬品だ。
 しかし、この薬、地味に非常に強力なのである。
 なんと、T-アレクシアは、とある病気をほぼ100%の確率で治療できるのである。
 そもそもこの、T-アレクシアは「ベロニカ病」と呼ばれる非常に珍しい病気の特効薬だ。
 ベロニカ病は約10万人に1人しか罹患しない奇病であり、稀有な病気であるがために特効薬の開発は絶望的と見られていた。
 しかし、全く別の病気を併発していた人物が、ある日、ぴたりとベロニカ病が完治していた事が発端となり、原因を追求すると、全く別の病気の薬がベロニカの特効薬になる事が判明したのである。

 ベロニカ病は難病である。罹患する原因はいまだに詳しくわかっていない。突然と細胞が崩壊してしまう病気だ。進行は実に遅く、発症から数えて数年で不調を感じる。徐々に細胞が崩壊するためだ。しかし、進行は遅いため、何の治療や対策をしなくとも、行動不能の寝たきりになるまで10年から15年ほどかかる。
 そこから死に至るまでも、更に5年から10年。つまり、この病気に罹ったとしても、最短で15年、最長で25年ほどは生きられるので、緊急性も問われない。罹患している事に気付かないまま死ぬ人もいる。稀な病気であるため、普通の病院では発見できないケースも多い。無論、これは暗数になるため、正確な数字は把握できないのが現状ではあるが。

 で。このT-アレクシアはベロニカ病をほぼ100%の確率で完治する、奇跡の薬だ。
 早期発見であれば10回程度の投与。最長でもわずか3ヶ月間の連続投与で、ほぼ100%細胞の崩壊を食い止め、しかも再発はない。
 何しろ罹患者が稀有であるため、充分と言えるデータは取れないのが現実だが、どうやら、今のところ全員が完治している。
 まさに夢の薬だと言える。

 また、目立った副作用もないのだから奇跡だ。
 もともとあった薬の転用であるため、開発コストも安く、量産薬であったため、価格も安く入手も困難ではない。これを奇跡と呼ばずして何と呼ぶのだろう。
 しかし、そう都合が良い事ばかりではない。

 問題はアレルギーである。


 とあるアレルギー物質が含まれているため、この薬を投与できない人間が存在するのだ。
 アレルギーと言ってもすぐさまアナフィラキシー・ショックによる死亡を引き起こすような強度のものではない。
 ただそれでも、確実にアレルギー症状が出てしまう。
 これも個人差はあるが、死亡例はないものの、激しいアレルギー反応で苦しんだ例は多くある。

 そこで難しい選択となるが、「病気とともに残り25年を生きる」か、「10回アレルギー反応で苦痛を味わって治療するか」と言うどちらかを選ぶ事になるのだ。


 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●


 要約しよう。
 10万人に1人が罹患する、ゆるやかな死に至る難病がある。
 この病気には特効薬があるのだが、アレルギー物質があり、特定の人間に限ってだが、死には至らないまでも、激しい苦痛を伴う事になる。
 アレルギーを持たない者にとっては夢の特効薬だが、アレルギー反応がある人間にとっては、ゆるやかな死か、激しい苦痛を伴う完治かの選択を強制される、というものだ。


 要約終わり。

 なお、この病気を持たない者にとっても、この特効薬は同様の効果である。
 飲んだからと言って問題が発生する訳ではない。ただ、特定のアレルギー体質を持つ人には激しい苦痛が襲う。

 では、そろそろ本題に移ろう。


 この特効薬と言うのが、
 「作品」なのである。
 アレルギーは、
 その作品が嫌いな人なのである。


 その作品を求める人にとって、それは特効薬となりうる救済なのだ。
 無論、その作品を嫌悪する人は一定数いる。
 しかし、それは接種しなければ済むだけの話なのである。

 少年漫画が男らしさを是とするがために、女性キャラクターが活躍しないかも知れない。男に都合がいい女になるかも知れない。
 女性だけではない話だ。それを苦痛と感じる男だっている事だろう。
 自分がひ弱なために、少年漫画の強い男に絶望する少年もいるかも知れない。
 しかし、ひ弱だからこそ、少年漫画の強い男に救われる男だっているのだ。

 作品は薬である。


 誰かを救う事のある薬なのだ。
 その薬には、一定数、確実にアレルギー反応を示す人間がいる。

 だが、だからそれが何なのだ?


 その薬を接種しなければいいだけの話だ。
 薬の箱には注意書きがある。
 アレルギーがあるなら接種しなければいい。それだけの話なのだ。
 自分にアレルギーがあるからと、誰かの特効薬を奪う権利はない。

 無論、薬には厳しい審査が必要だ。
 また、子供が誤って服用しないように、管理する必要がある。ただそれだけの事なのだ。

 子供が服用しないように高い場所に保管する。子供に飲まないように教える。それが大人の務めだ。
 誰かにとって薬でも、それは同時に、誰かにとっての毒になるかも知れない。
 しかし、薬も毒も自ら接種するものである。
 我々は、それを取捨選択できる人間なのだ。

 大体、

 目に触れたら死ぬ


 ほどの劇薬となる作品なんて存在しない。

 不愉快なだけだ。死にたくなりそうだったら読むのをやめればいい。見たら死ぬってお前は貞子かよ。

 だいたい、こう言ってるワタクシだって嫌悪する作品なんて山ほどある。
 それでも、わざわざ見なきゃ済む話なのだ。

 自分が不愉快だからと言って、
 誰かの救済を取り上げる事は
 あってはならない愚行なのである。


 さて。ツイッターを毎日見てると、ひょっとするとワタクシだけかも知れませんが、表現規制と表現の自由の飽くなき戦いが繰り広げられています。

 そう。飽くなき戦いです。


 (´・Д・)」 ワタクシゃ、もう飽きた。


 同じ話をくどくどくどくどと。
 ワタクシの中ではとっくに結論が出てる事を何故この人たちは繰り返し続けるのだろう。ワタクシにはわかりません。
 それも、バカな行動を取る人が出る度に、それが火種となって争いが勃発します。
 ヤクザで言えば縄張りの境界線で喧嘩するチンピラみたいなモンでしょう。その度にいちいち組が争っていてはお互いに疲弊するだけです。

 事を起こした馬鹿を
 差し出して手打ちにする
 ヤクザの方が理知的ですよ。


 なので、ワタクシはこの手の話題を避けたい。そもそも時事ネタも好きじゃないから、ラディカルな行動を起こした人物が出たぐらいで、いちいち取り上げるつもりもないのだ。

 そんな時、漫画家の田中圭一先生のツイートを見て、非常に感銘を受けると共に、ワタクシの中で「新たな結論」をひとつ得たのである。
 なので、今回は敢えてこの話題をしてみたいと思った次第である。

 ※ ご自身が鬱病を患った経験から、「こーゆー方法で鬱が改善したよ」という発言が、人によっては「それが余計に苦痛だ」という意見が寄せられたというもの。


 なお、薬と病気の話はすべて嘘である。わかりやすく説明するために創作した。


 ちなみに、今回の記事のタイトルに素晴らしいモノを思いついたのだが、流石にアウトかな、と思ってタイトルを変更した。

 本来のタイトルはコレである。



 『フェミと毒薬』




 遠藤周作のパロディである。絶対に怒られると思ってやめた。



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 なお、この先には今日書くべきだった時事ネタについて少しだけ書かれています。

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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。