王女よ、聖杭を撃て!

 夜空に轟音が鳴り響く。
 鎧を着た悪魔が、攻撃用の杭打ち機<パイルバンカー>で鎧ごと心臓を貫かれ、断末魔の悲鳴をあげる間もなく絶命した。

「まず、一人」

 悪魔を殺したのは若い女だった。
 彼女は悪魔の死体から杭を抜き、付着している血を払った。
 雲の合間から月光が差し込み、杭を照らす。
 おお、なんと美しい杭か! 清らかさを感じるほどの純白の輝きは、杭打ち機という無骨な器具に取り付けられてもなお、損なわれることはない。
 これこそ、この世の穢を浄化する聖なる物。邪を滅する必殺の武器!

「お前は誰だ!」

 女は背後からの鋭い声に振り向く。
 そこには鎧の悪魔がもう一人いた。たった今倒した悪魔の仲間だろう。
 女の顔を見た悪魔が驚愕の表情を浮かべる。
 
「馬鹿な! お前は死んだはず!」

「お前の飼い主に伝えるがいい」

 女は悪魔に杭の先を向けて宣言した。

「グラセオス家の第一王女、タンジー・グラセオスが破邪の聖杭をもって貴様を撃ち貫くと!」

【続く】

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