月末恒例・古新聞一気読み。2022年2月の朝日新聞、ひと月分。北京五輪が進む中、ロシアがウクライナ侵攻の準備を進めていく、戦争になるまで、和平への期待があったことが、わかる。

 月末恒例、古新聞一気読みの続き。今年の2月の朝日新聞を。2月4日に北京五輪が開幕。五輪は21日まで行われたわけだが。

2/1の一面は、コロナ第六波でも「首相が現時点での東京での緊急事態宣言は検討ない」。という国内ニュースがトップ記事。1日は石原慎太郎氏が死去している。

しかし、2日では「国連安保理で米ロが非難応酬。」

ウクライナでは民間人が軍事訓練を受ける動きも報じられている。

4日、五輪開幕の日、「米軍は東欧に増派、。NATO英独仏に温度差。」

欧米首脳が開会式に参加しない「外交ボイコット」に対し、要人が出席したのは、ロシア、サウジ、モンゴル、韓国、カザフ、パキスタン、エジプト。なるほど。

ここから、五輪の進行と並行して、ロシアウクライナ情勢についての報道は一進一退。

8日に「米独首脳会談。」バイデンがシュルツに「侵攻ならガスNS2は止める」と圧力。EU各国はドイツだけでなくイタリアも、天然ガス確保の課題を突き付けられる。

その前日7日にはマクロンとプーチンがモスクワで会談している。まだこの時期、マクロンは戦争を避ける努力を続けている。バイデンは、もう、「避けられない」と考えているようだ。まさに温度差ありありである。

で、10日に、「日本はLNGを欧州に一部融通へ、」という記事が。このニュースを当時、聴いたとき、「コロナが発生した直後、かっこつけて備蓄していたマスクを大量に中国に送っちゃって、すぐに日本で感染が広がってマスク不足で大騒ぎになったのにな。ほんとに戦争になったら、日本だってサハリンからのLNGが止まるし、国際市場でも高騰・不足になるから、簡単に上げちゃうとか言わない方がいいのにな」と思った記憶がある。なんか、本当に戦争になると思っていなかったのか、日本政府が何を考えていたのか、正直、全く分からない。

 全然。関係ないのだけれど、この時期、イギリスのボリス・ジョンソン首相は、コロナ拡大期に、官邸でパーティ・スキャンダルでひどく責められていたのだけれど、しばらくはこの戦争の話題で、うやむやに出来そうになるのだよな。戦争が無ければ、もっと早く退陣していた可能性がある。

 つい最近、ジョンソン退陣が決まったとき、ゼレンスキーは「残念だ。ジョンソンがいちばん親身に自分たちを支えてくれた」って発言していたのだが。ジョンソン的には「ウクライナ戦争を長引かせることで、自分の政権スキャンダルをうやむやにしたい」という意図で、戦争を長引かせる方向で支援していたのではないか、と下種の勘繰りをしてしまう。それくらい、この開戦直前時期と、ボリス・スキャンダルは連動して起きているんだよな。

 またまた関係ないけれど、ファイザーがコロナワクチン売り上げが4.2兆円で、会社の利益が前年の2/4倍の219億ドル。売上じゃなくて利益が219億ドルって、利益が2兆5千万円くらいあるってことか。すごいな。企業の売り上げは812億ドル、10兆円くらいか。

 話はずれたが。この10日、「ロシアはベラルーシと最大規模の軍事演習」を始める。これが終わる予定の20日の後、軍が帰れば、侵攻はなさそうだし、いつまでも軍が残っていれば、侵攻の可能性があるなあ、という分析。なので、ここから20日までの間、楽観論と悲観論がいったりきたりする。

 そんな中、12日に、オリンピックで女子フィギュア金メダル候補のワリエワがドーピング疑惑で、さてどうなるか、という事件が起きる。

 オリンピックの中でも外でも、ロシアvs欧米各国、というような対立が起きていて、なんか、小説とか映画のシナリオのように見えてくる。

 この12日、日米豪印が外相会談をして、連携を確認している。アメリカの大統領補佐官は「五輪中にもロシアの侵攻がある」と警告する一方、バイデン・プーチンは電話で会談をしている。

 15日はゼレンスキーがショルツ独首相と会談し、NATO加盟を希望継続することを伝えている。ところで、この時期のドイツは、まだヘルメットしかウクライナに提供しないと言っている時期だ。

 16日、「侵攻近いと身構える首都」「国境の村、信じたくない」というウクライナの国民の様子を伝える記事。

NATO「注意深く楽観」
という、微妙なニュアンスの見出しの記事も。NATOの事務総長の発言だ。この段階で、侵攻は外交交渉で避けられるのでは、という見方がまだかなり強くあったのである。

 この日、日本国内では「コロナ死者、最多236人」。オミクロンは重症化しにくいとはいえ、感染者数が激増すれば、死亡率は低くても、死亡者数は1日あたり過去最多となってしまっていたのである。

 17日も「米欧、見極め慎重」。ロシアの動きが沈静化したとの見方がやや優勢になっている。プーチンが「交渉を続ける」と軟化姿勢をちょっと見せたのである。

 これに対し、18日、アメリカが「緊張緩和の動きは偽情報だ」と政府高官が発言して、緩和ムードにくぎを刺す。ロシアは「英米の虚報」と反発。そう独仏ではなく、英米と言っている。そういうことだ。

 さて、いよいよ五輪も大詰めを迎え、17日には、銀メダル三個の高木美帆がついに1000mで金メダルを取り、女子カーリングが決勝にコマを進め、20日最終日に金メダルをかけて戦うイギリスと戦う。

 という20日に、バイデンが「ロシア側が侵攻決断」「首都も標的」と記者会見。しかし、G7外相は「緊張緩和求める」という記事が続いていて、正直、この時期、僕も「まさか、ないだろう」と思っていたというか、カーリング女子が金メダル取れるかどうかの方で頭がいっぱいだった記憶がある。

 21日の新聞は「五輪閉幕」が一面トップニュース。その隣に「ロシア軍、演習後も駐留」。それなら、事前の予測では、侵攻ありということなんだがな。まだまさかと思っていた。

 21日夕刊は「続く緊迫、米ロ会談へ」とプーチンとバイデンの写真。「24日外相会議で調整」「ウクライナ侵攻なら取りやめ」

 プーチン氏「外交解決優先」仏ロ首脳会談。これはマクロンが電話会談しているんだな、20日に。

22日朝刊もこの21日夕刊と同じ方向。「米ロ首脳会議へ原則合意」。まだ避けられると信じたい気分が見出しに出ている。


これが。最後の「外交解決できそうな雰囲気の紙面」だった。

22日夕刊「ロシア、親ロ派地域の独立承認」
「停戦合意崩壊か」
「ウクライナに軍派遣支持「平和維持」名目」

23日朝刊「親ロ派地域に進駐へ」
「ウクライナ 米、本格侵攻を警戒」

24日
米大統領「侵攻の始まり」

この日、ちょっとびっくりするのが
「「トランプ氏「独立」承認評価「プーチン、なんて賢いんだ」」
という小さな記事。「天才だ」と、ラジオ番組でプーチンを絶賛。「我々もメキシコ国境で同じことをできる」。

このトランプが、いまだにかなりの支持を得ていて、共和党内でも各州の予備選挙などで、いまだにトランプ支持派がやや優勢くらいだという不思議。

これは過去新聞記事とは関係ないが、参考まで
「米紙ニューヨーク・タイムズとシエナ・カレッジが共同で行った最新の世論調査 7月5~7日に実施
■共和党の大統領候補にふさわしいのは──?

・ドナルド・トランプ(前大統領):49%
・ロン・デサンティス知事(フロリダ州):25%
・テッド・クルーズ上院議員(テキサス州):7%
・マイク・ペンス(前副大統領):6%
・ニッキー・ヘイリー(前国連大使):6%
・分からない/無回答:5%
・マイク・ポンペオ(前国務長官):2%
・上記以外:1%

「プーチンは賢い」って言っているトランプの支持が、こうなのよ。

話は戻って。そして、ついに


25日朝刊見出し。超でっかい墨帯に白抜き文字で
「ロシア、ウクライナ侵攻」
主要都市を空爆

25日夕刊
ウクライナ各地で激戦


26日朝刊
ロシア軍、首都に迫る
政権転覆狙いか

26日夕刊
「今夜、攻撃してくる」首都警戒
ウクライナ大統領 動画公開

27日
「首都キエフ 市街戦」
退避10万人 死者198人に
ウクライナ「停戦協議」実現せず

28日朝刊
「国際決済 ロシア排除」SWIFT米やEUEU、制裁強化

28日夕刊
「ロシア非難 国連動く」
緊急特別会合 決議めざす
安保理要請受け開催 40年ぶり


戦争というのは、起きる直前まで「まさか」「なんとか回避するだろう」という気分、期待があるのに、急に起きるのだな。

という新聞整理をしている横で、CNNを映すテレビからは
●台湾にペロシ下院議長が、中国の強い警告の中、到着したニュースと、
●アルカイダの最高指導者ザワヒリ氏を、ドローン攻撃で殺害したことを、バイデンが「正義は下された」と誇るニュースが、交互に、繰り返し流れている。

ぼくらはそういう世界に生きているのである。

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