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前書きをあとがきに変更。『カズオ・イシグロに最適な年齢』という文学評論を書きました。主要長編を連続して論じながら、イシグロについて考えたものです。

以前は前書きとして置いておいたのですが、いきなり本編を読んでもらった方がいいと思ったので、あとがきにすることにしました。 

 カズオ・イシグロの長編小説を、デビュー作『遠い山並みの光』から、最新作『忘れられた巨人』まで取り上げながら、主要長編を貫くテーマと、その変化について論じた作家論アプローチの、文学評論を連載、投稿していくマガジンです。

タイトルは『カズオ・イシグロに最適な年齢』です。

もう、全体、書き終えているのですが、かなり長いので、何回かに分けて、アップしようと思います。

 これを書くに至った経緯について。私的なことですが、備忘録的にまとめておきます・

 書いたきっかけはいくつかあって。どれも友人や家族との会話や、Facebook上でのやりとりなので、まずはそのことから説明。

 まず一つ目は、NY在住の、中学時代の同級生、ハルミさんの夫、ニューヨークタイムズのエディターをしているハビちゃんと会った時のこと。カズオ・イシグロ『忘れられた巨人』について、会話しようとしたときのこと。会話したと言っても、僕は英語で文学の話ができるほど英語ができないし、ハビちゃんは日本語で文学の話ができるほどは、日本語ができない。間にハルミさんに入ってもらっての、伝言ゲームのような会話。ハビちゃんに「イシグロは、記憶と時間をテーマとした作家であり、『忘れられた巨人』もそういう小説である」みたいなことを言われて、「いや、俺、そんな単純な話じゃいと思うんだけど」と反論しようと思ったんだけれど、どういうことか、僕自身も、もちろん英語では全く説明できなかったし、説明しだすとものすごく長い話になるから、その時は、あきらめた。たしか、イシグロが、ノーベル賞受賞のころだったか。それとも『忘れられた巨人』の邦訳が出た直後くらいかなあ。

 もうひとつ、コピーライター学校時代の友人で、今はシナリオライターとして名を成し、シナリオスクールの先生もしているNMさんと、カズオイシグロをめぐって、Facebook上でやりとりしたときのこと。NMさんは『わたしを離さないで』はすごく好き。でも、『忘れられた巨人』には、あまり興味がなさそうだった。僕が、『忘れられた巨人』と『わたしを離さないで』は、舞台設定は、ものすごく違うけれど、実は連続した、共通のテーマをめぐる小説なのだ、と説明しようとして、うまくできなかったということがあった。他の私の友人でも『わたしを離さないで』は、映画の成功もあり、映画でも小説でも、好き、感動した、泣いた、という人が多いのだが、『忘れられた巨人』は、読みにくい、つまらないという人が多くて、「えー、なぜ、この連続性に気が付かないのだ」とすごく不満に思ったこと。

 三つ目は、物書き修行中の長男と、イシグロとは、全然関係ないのだけれど、ちょうど、去年の今頃、妻の誕生パーティで、『グレート・ギャツビー』をめぐって猛烈な口論になって、長男に「俺は父ちゃんの書いたものはおよそ読んではいるが、ただの、ひとつも面白いと思ったことはない!」と、面と向かって罵倒されたこと。くそむかついたけれど、「くそー、みてろー、面白いもん、書いてやるー」と、長男が帰った後、怒りをパワーに換えて、一晩で、カズオ・イシグロ論、原稿用紙60枚分くらい、一晩で書き上げた。

 中身としては、グレート・ギャツビーとは何の関係もなくて、ハビちゃんに反論しようと思って、考え続けてきたこと、NMさんに説明したかったことが、長男の暴言に対する怒りパワーが原動力となって、一気に形になっというわけ。

 しかし、書きあがったもの、なんといっても、頭の中の記憶だけで書いたので、各小説の設定やあらすじ内容、人物名など、かなりあやふやなものだった。
 ちゃんと人様に読ませるには、全部の作品を読み直して、人物とか設定、筋とか、推敲しなくちゃいけないな、と思うと、これは猛烈に面倒で、そのまま放置してあった。読書人生の師匠、しむちょんと、妻にだけ読んでもらって、そのまま放置して、一年がたった。

 四つめ、最後、最新のきっかけ。今回、急に思い立ったのは、コロナでみんな家にこもっている昨今、みなさんご存じの「ブックカバーチャレンジ」というチェーンメイル的なやつ((7冊のおすすめ本のカバー写真を投稿するというもの)が、僕のところにもj回って来て、読書家である、私の妹にバトンを渡したところ、何日目かに『忘れられた巨人』を、妹がアップした。それを見て、一年前に書いた文章のことを急に思い出した。妹に聞いてみると、日本語で読めるイシグロ作品は、全部、読んでいるとのこと。流石、わが妹。まずは妹に原稿を送って感想を聞くことにした。のだが、なんか、せっかくだから、この勢いのまま、noteに投稿を開始してしまえ、ということにした。推敲、特にしてないです。「記憶に頼って書いたまんま」です。

 各小説のあらすじをまとめるのが、面倒なので、そこは、Amazonの内容紹介を、各回の冒頭に、参考として引用しまうことにします。

 各作品の個別性ではなく、それらの共通性、連続性を見ていく作家論です。が、各作品については、ネタバレ多数ありなので、ネタバレ嫌な場合は、各作品を読んでからが良いかと思います。別にイシグロ作品は読む気はないが、イシグロって、どんな作家なの、というのを知りたい方には、わりと、分かりやすいことか書いてあると思います。ただし「記憶について書いた作家」みたいな、世間で言われているような、一般論は書いていないです。それへの反論が書かれています。

本編は下記の下線部をクリックするとスタートします。

カズオ・イシグロに最適の年齢  ①「遠い山なみの光」


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