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デジタルは人類にとって福音なのだろうか?

さぁ、今日はなんだか重苦しいテーマを掲げてみました。そう、DX、DXと浮かれている人類に対する「アンチテーゼ」として…

ハードルを自分であげちゃいましたが、それほど壮大なものではありません。内容的には、実務の中で自分が感じていることなので、皆さんの周りでも同じようなことが起きていて、共感が得られるじゃないかな?(希望的観測)

結論から言ってしまえば、私の意見は「無理強いした進化の先に、待つのは破滅」ということです。では、破滅しないためには二つのルート、『変化しない』を選ぶか、『変化し続ける』を選ぶか、どちらかなんかじゃないかと思います。

今日はその辺りを「デジタル人材」という言葉を絡めて自論を述べていこうと思います。


まず、DXという本質についてですが、私はこの言葉の定義に大きな疑問を感じています。それは、DXのXが「Transformation(変革)」ということです。
なんだよ!Xって、どこにもスペル上に入ってないじゃないか!と、、、

いやいや、そこかい!と突っ込まれそうですが、どうやらXには「1文字でトランスフォーメーションという意味合いが含まれている」そうなんです。でも、こんなことは英語圏の人じゃないとわかりませんよね?

それゆえか、今ではだいぶ少なくなりましたが、わかりやすい「デジタル=D」の方が注目されちゃっているような気がするんです。

その逆に、色んな「X」が乱立しちゃったのも事実です。サスティナブルに変えようということで、SXとか、緑を考えて行動するという意味合いでGXとか、、、もう、これじゃ変革のバーゲンセールになっちまいますよ。笑

で、面白いのがこの世の中に溢れる「変革祭り」の中で、結局、人の営みや、企業の方向性は言うほど変わっていないということです。何かにつけてそれっぽい名前をつけて、「やった気になっている」というのは人間の性なのかもしれませんね〜。

なので、本来であれば、この「変革」という言葉の解像度を上げていき、主語や目的語をしっかりと定めるべきところだったのに、いきなりツールとしての「デジタル」が入り込んでしまった...。
ここがデジタルツールを売り込みたいベンダーの思惑に合致してしまって、本来の「変革」よりも「デジタル」の部分が注目されてしまった気がしています。

これは、数年前にあったBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)ときにも、本来のビジネスプロセスの見直しがベンダーの思惑と、楽をしたい企業の間で、「基幹システム=ERPの導入」に議論をすり替えられた現象と変わらないでしょう。

まぁ、過去を嘆いても仕方ないので、これから先、個々人がデジタルというツールにいかに向き合っていき、何に向かって歩いていくのかを考えたいと思います。


この「変革」ですが、正直、自分自身の経験として、企業の中でやってみて思うのですが、並大抵の苦労ではないです。

すでに多くの企業で取り組んでいて、成果が出ていないので、御理解いただけると思うのですが、変革、変革といっても自分たちのマインドはそう簡単に変わらないと共に、変わったことを認識できない。ということがあります。

まず最初に、そう簡単に変わらないの部分についてですが、人間というものは本来、遺伝子によって「変わらない」ということを選ぶのが大多数であるように設計されている、というものがあります。

そりゃそうですよね。人間だって動物です。遺伝子的に危機管理能力というものが備わっており、そんなに変化ばかりしていては、冒険ばかりしてしまい、危険地域に行ってオオカミやライオンに食べられたり、食料備蓄をなくして、絶滅してしまう。

なので、人間が集まった企業組織であっても、同じように基本的には「変わらない」を選択したくなるのは自明の理。だからこそ、弱い部分を弱い、と認めつつ、なぜ変革が必要なのか?を考える必要があるでしょう。

ちなみに、人間は思考回路として、今までやってきたことに対して「積み上げる」のは得意なのですが、今までやってきたことを「無かったことにして」考えるのは脳の構造上、難しいようです。

こういう自己認識ってすんごく大事ですよね。


さて、次に変わったことを認識できないという点です。

これは自分自身を映す鏡がない状態、ということを考えればわかることでしょう。自分自身の身だしなみは鏡を見ればわかるけど、組織という無形のものに対しては、そんなものを映し出す鏡なんて存在しない。

よく組織開発系コンサルなんかは、「あなたの会社の変革度を数値化します」といっているが、あくまであれは「モノサシ」であって、鏡ではない。モノサシには身長や体重などはあるが、それで見ることができるのは「正解がある場合」のみ。

統計学的に個人の健康状態として「この体脂肪率では糖尿病になりますよ」みたいなデータがあるとしても、実際には個人差があるし、企業に至っては統計データが取れるほどに「モノサシ」で測れるデータがあるわけもない。

つまり、何が企業にとって正解なのか?が個々の企業によって異なる中、そんな基準値を図るような便利なモノサシは、この世に存在しないことになります。

でもね〜、悲しいかな、義務教育から最終学歴まで「答えを探すこと」に長けた教育を受けて実践してきたエリートさんたちは、この答えのない問題に直面した時に反応できなくなっちゃうのですよね、、、

答えはない、そうであれば、比較できるのはただ一つ「昨日までの自分(自社)」しかありません。

そう、昨日より今日、今日より明日が良くなっているのか?理想に近づいているのか?それしかないのです。一足飛びに変化することなんてできないから、非常に愚直なのではありますが、昨日までに比べて、ちょっとコミュニケーションが活性化してきたな、とか、社員同士の相互理解がちょっとだけ進んだな、だけでいい。

日々ちょっとだけでも成長している。そんな自己肯定感が組織の中にあれば良いのではないか?と私は思うのです。

ありゃ便利だけど、何を成長として捉えるかは個々の企業によって違うからね〜

さて、話を戻して、この「変革」ですが、そもそも論になってしまいますが、変革って組織にとって絶対不可欠なものなのでしょうか?

私の実感としては「変革はマストではない」です。

ちょっと意外に思った方もいるでしょう。そうです、これは自分が組織を変えようとしてきた結果から導き出した、自分なりの結論です。

つまり、変革したい組織は変革の道を歩めば良い。そうでない組織は現状維持もしくはコツコツとした改善ステップを踏む方が良い。ということです。ただ、重要なのはどちらも正解ではなく、どちらも不正解ではない。その双方の道があるんだよ。ということを相互理解すれば良いのだと思います。

例えば宮大工。これは在来工法を組み合わせて作る匠の技術の塊と言っても良いでしょう。これを生コンやら鉄筋で作っちゃったら伝統は残りません。同じように「虎屋の羊羹」だって、「赤福」だって長い歴史の中で培われてきたものでしょう。

それとは逆にIT業界は日々新しいものが求められます。なぜならば基盤となる情報インフラが日進月歩で進化していくので、それに合わせて自分たちが変わらないといけない。

おそらく、昭和型製造業のような大量生産大量消費の根幹を支えるような産業はまだまだ必要でしょう。ただ、問題は「それだけではない」という世界が実現されている。その事実です。

で、自分たちの会社は「何を為すべき組織なのか?」を深く考えた上で、変化するのか、しないのか、を選択する必要があるし、その選択肢の外にある企業とは一線を画すので、相手に自分の選択を強要しない。が重要になるのだと思います。


最初に言ったように人類には基本的には「変わりたくない」という感情を持っている人がほとんどです。なので、外発的動機で「変わってくれ」と言ってもなかなか聞かず、内発的動機で「変わりたい」と思わないと変わりません。

わかりやすいのはマイナンバーカードの話。マイナンバーカードの良し悪しはココでは問題にしませんが、2万ポイントプレゼント!のキャンペーンをした途端に発行枚数が劇的に上がったとか、、、

同じようにPayPayの広まりも似たようなものがありますよね。あれだけスマホがよくわからない、と言っていた高齢者が軒並みスマホに変えて、マイナンバーカードの発行ですよ。こりゃもう、内発的動機で「変わりたい」と思った瞬間に変わる最たるものですね。

このように、結局「変わる」も「変わらない」もその人の心意気次第。いくら外部から呼びかけても、そう易々と変わるモンじゃない。というのが改革を進めてきた中での私の実感です。

(ホントはマイナポイントのような、社内の生々しい実例をあげようかと思ったのですが、ここでは割愛しますwww)


そろそろ本題に入って、この「変革」と「デジタル人材」ですが、会社として本気でデジタルをベースにした会社に変革したいのであれば、この「デジタル人材」は外部登用ではなく、内部の人間を変革し、デジタル人材に目覚めさせなければならない。と思ってます。(もしく事業に惚れたデジタル人材を中途採用する)

なぜならば、デジタル人材を外部から登用し、「さぁ、みんなデジタルを使いなさい!」と号令をかけたところで、先ほどの話ではないですが、やらされ感でデジタルな業務に変わるだけで、おそらく納得せずに働くことになるでしょう。

でも、それだとおそらく一過性のデジタル化で終わってしまい、継続が難しくなる、と私は思います。

一過性の改革でよければそれでも十分でしょう。ただ、ことこの「デジタル」というものは厄介でして、一過性の変革では追いつけないくらいに、日々バックグラウンドが更新されて、変化したと思ったら、それが定着する前に変化しちゃうというものなんです。

残念ながら、この進化の流れは早くなることはあっても、遅くなることはない。加速度的に時間軸が短くなっているんです。

例えばですが、下記リンクは「5000万人ユーザーを獲得するまでにかかった時間」を分かりやすく解説した記事なのですが、飛行機や車、電話などが5000万人の利用者を獲得するまでに50年の時を必要としたのですが、FacebookやTwitterは2〜3年、ポケモンGOに至っては19日で獲得しちゃったんです。
どれだけ、「デジタル化」という世界観が、変化し続ける世界観なのかがわかるデータですね。


もし、あなたの企業が、「デジタル化する」という選択肢をした場合、その先にあるのは一回限りの「変化する」ではなく「変化し続ける」という覚悟が必要になるのです。

そう、重要なのはこの「し続ける」の部分。継続的にできるのか?です。

先ほども書いたようにデジタルの世界は非常に早い。そりゃもう、カール・ルイスもベン・ジョンソンもびっくりの早さですよ。笑
(この例え自体も昭和マインドセットが残っている証拠でしょうけど)

その変化激しい環境下において、私が実体験として感じるのは「すべてを自分たちで行わないで、全員がスピードに追いつく準備をすること」だと思うのです。

ここでも昭和的な言葉を使えば「全員野球」だと思うんです。こと、デジタルという荒波に挑戦するのであれば、いちいち取扱説明書なんて見ている余裕はありません。習うより慣れろ。考えるな感じろ、です。

そういう意味でも、このデジタルに挑戦する会社という船に乗ったからには、全員で変わり続けなければならないし、その覚悟のない方には下船してもらうしか他に道はない。だって、大嵐の中に船出するんですもの、素人の船員は乗っても足手纏いになるだけですからね。

ちょっと強く言いすぎた部分はあるかもしれませんが、私は本気でこう思ってます。そうでないと「こんなはずじゃなかった」と荒波に揉まれながら後悔する人たちばかりになってしまい、いざという時に船ごと難破する事になってしまいます。


じゃあ、この「変化し続ける人材」をどのように集めるのか?もしかは今いる人材を変えていくのか?というと、私はそこでやっと「デジタルツール」というものが出てくる。と考えています。

変化し続けるとは、いわば生活習慣に組み込まれているようなもので、日々の運動習慣がついているか、否かと同じようなもんだと思うんです。

つまり、常に変化する、ということを意識せずに通常業務の中に取り入れてしまって、「変わることが当たり前」にするということです。

私の会社の場合は、いつも使うコミュニケーションツールをメールからMicrosoft Teamsに変更しました。これにより日々のコミュニケーションのあり方は変わったし、Teamsは良くも悪くも日々UIが変更されます。(最近ではv1からv2になって大きく見た目が変わりましたよね〜)そうなると、「なんか変更になっちゃったけど、Microsoftの仕様だから仕方ない、、、」と、自分たちの方をツールに合わせて変えていくようになります。

つまり、デジタルツールを使うことや、使いこなすことが目的なのではなく、それらを使うことで、自分たちの業務を常に変えていく、というマインドセットを変える事にあるのです。

(他にもkintoneを導入する事で自分の業務を常に見直すように仕向けるとか、boxを導入することでファイルを共有するというマインドを醸成するなどの取り組みがありますが、ココでは深掘りしません。)

こんな風に「デジタルツール」をうまく使い、取り入れる事で「常に変わり続ける」という変革の第一歩が踏める、と私は思っています。


こう考えると、その企業が本気で変革を考えるのであれば、今の時代はいろいろなツールが揃った良い時代と言えるでしょう。

逆に本気でない変革を唱える企業があれば、デジタルツール屋に甘い汁を吸われるだけの受難の時代となるでしょう。

そして、覚悟をした上で「変わらない」を選択した企業にとっては、今の戦国時代のような荒波に挑戦せず、嵐が過ぎ去るまでじっと飢えと寒さを我慢する時代となるでしょう。

どちらにしても、自分たちで考える必要はあるし、従業員も自分の考え方とあった企業と、しっかりと手と手を取り合って働くことが重要でしょう。

おそらくですが、行くも地獄、戻るも地獄、そして止まるも地獄、天国は存在しない!ことだけは明白です。そんな時代に、どんな地獄への挑戦方法が自分と組織にとってベストなのか?は個々によって異なることでしょう。

でも、考えてみれば人類の歴史において「安定的な時代」なんて短い期間しかありませんでした。人類の長い歴史を考えたら、「デジタル化時代」というものは、案外定常的なイベントなのかもしれません。

そんな人間の「普通の混乱期」において、あなたはどういう生き方を選択しますか?

デジタルは福音なのか、そうでないのか、今一度、自分の胸に問うてみていただけると幸いです。


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