自分の子を忘れた祖母
父の実家である熊本に、私の転職前の有給消化を使って家族で行った。
実に6.7年振り。
前は祖母と一緒に指宿に行ったっけ。車の中で何回も同じ話されたの思い出したな。
でも、ちゃんと私の事認識してた。母のことも。
もちろん、自分の子である父のことも。
6.7年の年月は、小学校卒業できるくらいだ。
そこそこある。
その間に、認知症は進行し、祖母は施設に入った。
なかなか会えないから会いに行こう。
きっと私たちのことは覚えてないよね。
母と私は覚悟しながら向かった。
『 どちらさま?』
祖母の第一声だった。
ちゃんと自分でしっかりとした足取りで歩いてきた祖母を見て、元気そうじゃんよかったね と安堵しながら、
「久しぶり」と言ったら、『 どちらさま?』と返事が。
「なかなか会いに来れなくてごめん」
「あなたの息子だよ、わかる?」
『 どなた?』
「息子だよ、息子。」
「元気ならそれでいいんだ」
「困ってる事ない?ご飯食べてる?」
「欲しいものはない?」
「全然会いに来れなくて本当にごめん」
「ごめんなさい」
そんな言葉をかける父を見ていたら
私が泣くのはおかしいと思いながらも
溢れた涙はとめどなく流れていった。
『 あなたは?可愛いお嬢さんね』
私を見る目は、もう、他人を見る目だ。
私を私と認識して見てくれたのは、あの日が最後だった。もっとたくさん話をしておけばよかったな、もっとたくさん写真撮っておけばよかったかな、もっと、、、
後悔しても遅いな。
自分の親にもいつか、私を忘れられる日がくるかもしれない。
きっと、後悔しないことなんてない。絶対する。
もっと優しくすればよかった、もっとたくさん話せばよかった、なんて思う日が必ずくる。
なるべく、なるべく。
その後悔を少なくしたいと思う。
ちゃんと年に数回は親の顔を見に帰ってきたいと思う。
そう思う。
最後に涙ながらに
『 また会いに来てね』
と言った。
「うん、なるべく早く、すぐに、来るからね」
『 何話したか覚えてないや』
「大丈夫、私たちが覚えてるから」
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