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【感想】はじめましてから始めましょう【ブルーアーカイブ】

私がここに書くのは、「ブルーアーカイブ」の復刻イベント「放課後スイーツ物語 -甘い秘密と銃撃戦-」の感想である。
甘々なタイトルから繰り出される関係性は、少しほろ苦かった。
感想と銘打っている以上、ネタバレは多分に含まれますので、ご容赦を。

イベントストーリー

はい!?ストーカーですか!?

このイベントは、ある生徒からの電話から始まる。シャーレの先生に届く生徒からの電話は、大抵生徒自身では解決できない厄介ごとである。ゲーム開発のための探検引率から学校存続にかかわる事案、果てはキヴォトスの危機まで。先生の職掌は無限に広い。千手観音もびっくりだ。
とはいえ、そんなキヴォトスは週刊世界の危機みたいなことはなく、先生にも日常というものはある。今回のイベントは、そんな日常的な事件の一つだと思っていただきたい。

ちゃんと自己紹介できるカズサ。いい子。

電話の主は、トリニティの1年生、杏山カズサ。クールでキュートな猫耳っ子だ。口調はやや砕けつつ、ちゃんと敬語が使える、等身大のイマドキ女の子という印象を受ける。
放課後スイーツ部とは、彼女の在籍する部活動だ。放課後にスイーツを求めて一緒に活動する……マジで絵に描いた女子高生っぽい活動でビビる。詳しく知らない人は放課後スイーツ部のグループストーリーを読もう。アイリとヨシミは恐らく誰もが持っているので、きっとすぐに見ることができるはずだ。
話を戻すと、そんなグループのクール担当であるカズサには、先生に相談するほどのお悩みを抱えているようだ。Hey you, その悩みって何だYO!

キヴォトスは日常的にストーカーが発生する学園都市ではないです。信じてください。

す、すすすすすすすストーカー!!!?!?!?!?!?
失礼しました、つい取り乱しました。
はてさて、導入からストーカーとはフックとしてかなりのものだ。銃撃戦や爆破、強盗などが横行する終わった治安のキヴォトスだからこそ、「ストーカー」の威力が高い。よっぽど日常に潜む恐怖だし、何より「等身大」だ(治安終わり国家のダウンタウンに住んでいるなら話は別だが)。何より「生徒がストーカー被害に遭っている」というのは、生徒が皆銃を携行しているとはいっても、先生としては心穏やかには居られないだろう。
さて、そんな不穏なスタートを切った今イベント。甘い秘密、銃撃戦、その真意は……?

カズサとレイサ

さて。相談をされた先生は、カズサと話を進めていくうち、その「ストーカー」が普通のストーカーでないことを知る。確かに、普通のストーカーであればイベントにはならない。ではそのストーカーはどこが普通ではないのか。

確かつきまとい行為ではある。

「決闘」「挑戦状」など、武闘派な単語を並べて戦いたがる点だ。しかもカズサ個人を執拗に狙って。
話を聞くに、この一昔前のポケモンに出てくるライバルみたいな少女「宇沢レイサ」につきまとわれる理由は自覚している様子。

ワオ!

そう、カズサは中学時代にその名をとどろかせた「スケバン」だったのだ。ここで第二の衝撃だ。カズサのふるまいは、どう見たってちょっとクールな普通の女子高生だった。そして、「元スケバン」という出自の子をネームドで出すということの驚き。自分では思いつかなかった、しかし確かに居るであろう人種。膝を手で打ったよね。
ともかく、スケバンを辞めたカズサは、その過去を「恥ずかしいもの」として、普段は封印して生きている。所謂、「黒歴史」ってやつだ。

で、それがなぜつきまとわれる原因になるのか、というと、宇沢レイサは中学時代を「不良生徒の成敗」で過ごしてきたのだ。宇沢レイサにとって、カズサは中学時代に倒せなかった無敗の敵であり、その認識で止まっている。現在のカズサが不良時代を忘れて普通の女子高生になろうとしていることを知らないのだ。この状況と認識の齟齬により、カズサに災難が振りかかってしまったのだ。カズサからすれば既に終わった話を蒸し返されるような気持ちなのに、レイサからすれば、ようやく見つけた宿敵なのだ。

かわいいね!

ここで重要なのは、この二人、会話をしていないのだ。レイサはカズサを最強のスケバンだと信じて疑わず、カズサは突っ込んでくる騒がしい馬鹿が嫌いだ。会話は大事。だけども。お年頃にそれを試みるのは少し難しいというもの。だからこそ、会話をしないことで悲劇が広がっていくのだ……
ちなみに、ここでレイサはカズサがカタギに戻ったことを知る。元気はなかった。

スケバレしたカズサに、スイーツ部は

これは完全に先生の不手際だが、カズサのスケバン時代がスイーツ部にバレてしまう。

何やってんだ先生(おまえ)ェ!!!!!!

スイーツ部は今更カズサの過去を知ったところで今の関係を辞めるつもりはない(いい子だね)のだが、もっとカズサのことを知りたい、カズサにとって居心地のいい場所でありたい。頑張って普通になろうとしているカズサにとって、ここは自然体で居て良い場所なのだという配慮をしようとした結果がコレだ。

良い子たちなんだけどね

カズサにとって、考え得る限り最悪であった。そこへレイサも来る始末。
レイサはこれを新しいスケバン集団の結成と勘違い。おしまいである。

カズサは本気でうんざりしていた。

気持ち、わかるよ。

カズサにとって、スケバンとは黒歴史。封印したい過去。最悪の思い出。忘れたいもの。それを公衆の面前で晒される。しかも相手は会話が通じないと来た。本当におしまいである。この世の終わりみたいな感情だ。レイサをボコボコにした後でようやく、カズサは気持ちをはっきり表明する。「忘れたい過去である」と、「いい加減うんざり」と。「やめてほしい」と。スケバン時代を想起させるものとは、全部縁を切りたいカズサにとって、レイサも忘れたい存在だったのだ。

レイサの再起

悲しいことに、このセリフをレイサはがっつり聞いていた。そもそも「正義の使徒」を名乗るような中学時代の精神性をそのまま持って来たような子がレイサなのだ。マジギレされたらそりゃあ正気になってこう(下画像)もなろう。

レイサはこういう子です。

レイサが自らを「忘れたい過去」と指した時、僕は「やっべ……」って思った。「言わせてしまった」と思った。そういう気持ちも痛いほどわかるのだ。こうした状況にしないことも、先生ならできたのではないか?と思った。でも、これは先生が介入すべき問題ではなく、カズサとレイサ、そしてスイーツ部の課題なのだ。だから、先生は橋渡しに徹するだけ。なるべくみんなが幸せになる方向を、それとなーく示すだけ。放課後スイーツ団の下りは先生がノってんじゃねーよ!!とは思わなくもなかったが、この辺以降は先生が粋で好きだった。

さて、レイサやスイーツ団の活躍もあり、最凶のスケバンが復活する、という噂が巷で拡散され、あわやカズサを狙う一大スケバン勢力が形成されるという事態になる。カズサが「普通の女子高生」であることを理解したレイサは、カズサを狙うスケバンたちを独りで相手取る。

結局、先生によってそれを知ったカズサたちは気絶寸前のレイサに(トドメを刺したにせよ)加勢し、夜明けまでスケバン相手に立ち回って、トンズラします。「もう二度と関ることはない」と渡された挑戦状を返して。

ちなみに悪ノリの主犯であるナツもきっちり制裁されました

最終的に

カズサはレイサにもう二度と会うつもりがなかった。のだが……

何故かいるレイサ。かわいい。

「放課後スイーツ団」はそうでもないようで。

粋だね。

カズサの苦難はまだまだ続きそう、というオチでした。

ヨシミがすっごい面白がってるの、良いね。

今回のイベントで感じたこと

「等身大」

カズサのキャラ造形、友人関係、レイサという存在。導入までもがそれぞれ「リアル」だったなと思った。これは銃や強盗、戦車、合法的な悪徳金融、学園間戦争、ゲーム開発やRPG的救世譚のような、高校生が普通経験しないような話ではなく、「成長速度のずれ」や、「羞恥心」、「嫌いなヤツとの距離の置き方」、果ては「黒歴史」といった、誰にでも経験があるであろうものがストーリーの要素だ。等身大の彼女らが、等身大の感情で、等身大のやりとりをする。ミカ実装の辺りから入った自分にとっては、こういった日常に近いイベントは初めてで、新鮮だった。

過去の清算

やっと断ち切れたと思った過去に振り回され、黒歴史を掘り返されて、友人からはおちょくられ……という散々なカズサ。ストーリーでも言われていたように、「受け取り方」が大事だったのだが、カズサもレイサも、各々が各々の意味で過去に囚われていたからこそのこの話なのだ。
「過去の清算」をしないと過去は無限に追いかけてくるし、「過去の清算」は決して「封印」、「なかったことにする」という方法で上手くいくとは限らないという話だったのかな、と思う。今回、過去の清算ができたのか。私はそうは思わない。これから清算していくのだろう。過去を受け入れて、さてじゃあどうしますか、これが「清算」だと思うから。

はじめまして、から始めましょう。

実は、このイベントストーリーにはゲーム外に続きがある。

ア゛ッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
失礼しました。取り乱しました。余りにも尊かったから……

カズサもレイサも、見知った仲ではあるのだけれど。きっと「はじめまして」から始めることができる。既に打ち切られた苦い関係性から始まる「はじめまして」は、いつかスイーツのように甘くなるといいね。

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