社会人１年目の私へ、愛をこめて。

やっほー、久しぶり。社会人一年目の私よ、元気にしてる？　なんて、そうでもないか。ほんとはわかってるんだけどね。あなたに会えたのが嬉しくって、つい聞いちゃった。今日は来てくれてほんとにありがとう。

さあ、仕事終わりでお疲れでしょう。どうぞこちらにお掛けください。眺めの良い特等席をご用意しておきましたから。なんて、まるでレストランごっこ。だけど本当に良い椅子でしょう。

本日ご用意したのは、ふっかふかのリクライニングチェア！　ちょっと試しに座ってみてください。分かりますか？　この心地よさ！　極上の綿毛に全身が包まれて、まるでとろけていくようです……！　なんて、今度はテレビショッピングごっこもしてみたり。ついつい冗談を言っちゃう癖は今も変わらなくってさ。こんなので疲れが少しでも癒えるといいんだけど。

社会人一年目の私よ、自分で言うのもなんだけどさ、毎日ほんとよく頑張ってるね。頑張って頑張って、もうぼろ切れみたいになっちゃって。本当におつかれさま。一日中動き回って暑いでしょう。飲み物でもどうですか？　何がいいかな、とりあえずビール？　それじゃあ、キンキンに冷やしたグラスでお持ちしましょうね。って、そんなに慌てて飲んだらダメだよー。でも、疲れた体には炭酸が染み渡るんだよね。喉が焼け付くみたいでさ。なんでこんなに美味しいんだろうね、ビール。

おつまみには何をお持ちしましょう？　そうだ、小芋の揚げたやつなんてどうかしら。ちっちゃい頃大好きだったよねぇ、小芋の揚げたやつ。小芋と里芋って何が違うのか分かんないけどさ、いつも言ってたお店のやつ、大きな鉢に山盛りあって、お箸で一個一個つまむのが楽しかったなぁ。衣は片栗粉でサクサクで、噛んだら中はしっとりほくほく、お出汁の染みた小芋がちゅるん。本当に美味しかった。あのお店、大人になる前になくなっちゃったけどさ、またいつか食べたいなってずっと思ってたよね。だから今日のおつまみは、あの頃と同じ、小芋の揚げたやつ。もっとも子供の頃はウーロン茶と一緒だったけどさ、こうやってビールと一緒に食べるとまた格別に美味しいね。なんか、大人になるってのも良いもんだねえ。しみじみしちゃうねえ。

と、晩酌で一息ついたら、今度はマッサージなんてどうでしょう。毎日パンプス履いてさぁ、きついストッキング履いて、しんどいよねぇ。脚もパンパンになるし、スーツで肩も凝るし。毎日たくさん荷物も運んで、人と話して、お辞儀して。体力仕事とは聞いてたけど、まさかここまでだったとは。だからその分、今日は思う存分揉んであげるから、任せといて！

ほんと、疲れたでしょう。何回言ったって足りないよ。毎日毎日、疲れて疲れて。こんなはずじゃなかったとか、将来どうなっちゃうんだろうとか、考えると泣けてきちゃうよね。周りのみんなは身を粉にして働いて、いつも笑顔でさ。凄いよね。自分はそんなに強くないから、引きつった笑顔で毎日過ごして、みんなともちょっと距離を置いて、無理矢理にでも定時に帰ってさあ。みんなには、やる気ないとか、無神経とか思われてるかもしれないけど、あなたが家に帰っては毎日泣いてること、私はよく知ってるよ。あなたがほんとに一生懸命、頑張ってること。

ねえ、社会人一年目の私。あなたはきっと今、会社辞めたいって毎日そればかり考えてるよね。未来の私が言えることじゃないけど、やめたらいいと思うよ。本当はもっと別のことがしたいんでしょう。むりやり笑いたくないんでしょう。海外にも行きたいんでしょう。ほんとびっくりだけど、人生って何が起きるかわからないんだ。だから好きなことって、できるうちにしておいたら、きっといいことあるよ。

私はあなたに感謝してる。会社を辞めてくれてありがとう。旅に出てくれてありがとう。一生ものの、大切な思い出をありがとう。

あなたがこの先切り開いていく道も、いろんなことがあるかもしれない。だけどきっと大丈夫。今の私は社会人一年目のあなたが大好きだし、未来の私もきっと、今の私を愛してくれていると思う。私だけはずっとあなたの味方だよ。何があってもずっと応援してる。だから、自分の心に素直に生きて。

頑張ってくれていつもありがとう。
大好きだよ。

社会人一年目の私へ、愛をこめて。

―――――

「#社会人1年目の私へ」コンテスト用の文章です。
俺はお前を全肯定！という気持ちで書きました🌏
応援したいなと思っていただけたら、
スキボタン(♡)を押していただけると
ありがたいです！（会員さんでなくも押せます）