二年間外に出ないと夜に見る夢はどのように変化していくのか

謎の奇病にかかりし候、私がぶっ倒れたのは今から約二年前のことである。それからしばらくはぶっ倒れ度120%の生活を送っていたため記憶が全然ないのだが、半年近く経ってぶっ倒れ度が110%になったあたりで面白い出来事があった。それは夢の内容が変わってきたということである。

最初の半年間は、過去のそれまでと変わらない、日常生活と関連性があるのかないのか分からない、いかにも夢夢しい夢を見ていた。ところがどっこい、半年も寝たきりで誰とも合わず家からも一歩も出ない生活を送っていると、脳内で夢に使える題材が枯渇してくるらしく、最近起きたこともない中、ありあわせで作りましたみたいな夢ばかり見るようになったのだ。

具体的には過去の夢ばかり見るようになった。小学校や中学校の同級生がやたらと頻繁に出てくるのだ。私は小学校中学校ともに暗黒少女として瞳にきらめきのない人生を送っていたため、そのような内容の夢を見るのはたいへん辛く、はじめのうちはかなり戸惑ったし、目覚めた瞬間にそれらの夢を悪夢だと認識したりもした。

ところが人間の慣れとは凄いもので、そこから更に半年近く経ったあたり(つまりは病床に附してから一年後)から、もう小学校の同級生も中学校の同級生も怖くはなくなってきたのだ。彼らが夢に出てきても、「ああまたね。……しかし、なんで?」と、存在の恐ろしさよりも登場の不思議さの方が勝るようになった。

よく、認知症のお年寄りは自分の年齢の認識が若返ったり子供の時代に戻るというが、あの現象に似ているのかもしれない。私はこの生活に入ってから、「年寄り」というのは年齢が作るのではなく、暮らし方が作るのだとつくづく感じるようになった。老人というのは基本的に身体のあちこちが悪く、家から出にくくなったり、行動範囲が狭くなったりしがちだ。すると時間が余るようになり、細かいところに目が付くようになり、新鮮なネタがなくなり、新しいことは記憶から抜け落ち、昔のことばかり思い出す状態になっていくのだ。

長く続く病床生活で私に起きているのもきっと似たようなことなのだろう。人の人格形成は子供のうちでほぼ完了している、みたいな話をよく聞くが、人の脳は7割くらいは子供のうちの記憶でできていて、あとは残りのスペースにぎゅうぎゅうに新しい情報を詰め込んでは溢れた分から順に抜け落ちていっているような気がする。

ところで病床に附してから二年と少しが経った今では、小学校や中学校の同級生の、その中でも特に印象の薄かった、接点もなかったような人が夢に登場するようになった。目が覚めているうちでは絶対に思い出さないし、名前もわからないのに、夢を見ている間にはまるで目の前にその人が立体となって存在するような感覚がある。目が覚めると「○○さんだ!」と、その人の名前も思い出せてしまう。不思議にもほどがある。

高校生の頃の夢はたまに見るのだが、大学生、留学、社会人になってからの夢は年を重ねた分だけ見ない確率が上がっていく。個人的には高校生以降の方が自分の人生の重要な登場人物が多いため、むしろそっちの夢を見たいものだが、脳の意思には背けないのが実情のようである。あと、空調が寒いとやたらとスキー場の夢を見る。

そうして私は今日も脳の支配下にあるのだ。



執筆期間:思い付き即出し



HAPPY LUCKY LOVE SMILE PEACE DREAM !! (アンミカさんが寝る前に唱えている言葉)💞