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エッセイストになりたいねん

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自分の人生や日々の生活に起きたことをエッセイにしています。
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#コラム

綿生さんちの素朴な毎日/昼と夜の混ざる時間

綿生さんちの素朴な毎日/昼と夜の混ざる時間

「内の光と外の光が混ざる時間が一番あかんねん」

夕方五時、廊下に車椅子を停めて庭の景色を眺めていると、刻一刻と空が夕方から夜へと色を変えていく。街灯が灯り、庭の向こう側の原っぱから鋭い光が差し込んでくる。夕暮れは綺麗だけど、この時間が一番苦手だ。自然の光と人工の光が混ざり合って、目の明るさをどこに合わせればいいのかわからない。

「いや、なんか文学的な表現やん」

私の苦手発言を聞いて家族はこう

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喪失の響き

わたしには文学の才能ってものがない。自分で書いていて虚しいほどにわかる。語彙は少ないし、小説も数えるほどしか読めたことがないし、コツコツと地道な作業を続けるのも苦手だ。

それでも、書かないと生きられない瞬間があったから、これまで書き続けてきた。

わたしが本当にやりたい芸術は音楽だ。音楽でなら、どんな言いたいことだって表現できる。音は血肉となってわたしの中を流れている。こどものころからずっと、記

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人はシェイクスピアにすらも慣れる

昔の洋画を重点的に観るようになってからひと月ほど経つだろうか、最初のうちは「すごい!白と黒ですべてが表現されている!」とかなり根本的なところにすら感動を抱いていたものだが、今では映画が白黒であることは当たり前に感じるようになり、逆にカラーの映画を観ると「うわっ、色が付いてる!」だの、「カラーなだけでなくデジタルではないか!」だの、過去から来た人のような反応を示すようになった。

そういう意味では私

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二年間外に出ないと夜に見る夢はどのように変化していくのか

謎の奇病にかかりし候、私がぶっ倒れたのは今から約二年前のことである。それからしばらくはぶっ倒れ度120%の生活を送っていたため記憶が全然ないのだが、半年近く経ってぶっ倒れ度が110%になったあたりで面白い出来事があった。それは夢の内容が変わってきたということである。

最初の半年間は、過去のそれまでと変わらない、日常生活と関連性があるのかないのか分からない、いかにも夢夢しい夢を見ていた。ところがど

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2020/6/11 トラブルの嵐ならドリブルでかわしちゃえ

2020/6/11 トラブルの嵐ならドリブルでかわしちゃえ

こんにちは。本日も語り掛けるスタイルで参ります。しあのです。

今日の関西はザーザー振りの雨模様で湿気がハンパなく、びちゃびちゃびちょびちょぐっちゃぐちゃで全体的に気持ちの悪い一日となりました。

我が家は南側の日照権が完全に剥奪されていて、おまけに普段いる部屋が北向きのため、ここは和風の北欧か?と疑うほどに室内が暗いです。

そんな日は気持ちもマイナス寄りになるのか、ウジウジぐじぐじ考え込んだの

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2020/6/7 介護・看病される側の気持ち

2020/6/7 介護・看病される側の気持ち

※明るい話ではありません

こんにちは。介護され歴も二年を越えた綿生しあのです(正確には看病され歴ですが)。

今日、たまたま一瞬観たテレビに、自宅の階段をゆっくりと上るおばあさんの姿が映っていました。二階のカメラから見下ろす形で、左手を手すりに、右手を膝の上に置いた、薄紫色のセーターを着た、白髪交じりのおばあさん。

「私みたいな人が映ってるやん」
と私が言うと、
「しあのより元気そうやけどな」

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2020/6/2 元気をくれるアマビエの和菓子

2020/6/2 元気をくれるアマビエの和菓子

先週くらいから一気に暑くなってきましたね。みなさんいかがお過ごしですか? How do you do?

私は相変わらず古い映画を観るのにハマっています。

特に『若草物語』(画像上)と『素晴らしき哉、人生!』(画像下)には感銘を受けてしまい、もうあちらの世界から帰って来れません。善意が前提の世界……やさしい世界……夢の世界……

と、夢の話はさておき、今日はアマビエちゃんの和菓子をいただきました

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ブラとおばさんと私 〜ロンドンのコインランドリーで起きた珍事〜 (#キナリ杯 応募用)

ロンドンに住んでいた時のことである。私の下宿先には洗濯機が無かった。いや、正確には洗濯機自体は存在していたのだが(それも部屋の目の前にあるバスルームに)、同居する大家さん以外は使えない決まりで、私は仕方なくコインランドリーに通っていたのだった。お風呂やトイレを使うたび、その場に鎮座する洗濯機が視界に入り、こんなにも近いのにこんなにも遠い…と、恨めしげな目をしていたが、それも今となっては良い思い出で

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2020/5/26 古い洋画で逃避行

2020/5/26 古い洋画で逃避行

たとえばの話だけど、日本のどこかの地下牢で産まれ、生身の人間には誰とも会わず、特定の年代(たとえば1940年代)のアメリカ映画やアメリカ文学だけを観たり読んだりして育った場合、その人はやはり1940年代風の単語やアクセントを使うようになるのだろうか?

みたいな、ありえない人体実験的な疑問がずっとある。英語に興味を持ち、話せるけど、邦人である限り拭えぬ疑問である。

現在の日本のテレビ放送を観るこ

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ヘッダー画像を毎回さがすの大変すぎ問題

ヘッダー画像を毎回さがすの大変すぎ問題

note歴も2年半となると毎回の投稿に対してのドキドキもなくなってくる。ただ息を吸うように文章を書き、いやむしろ吐くように書いているのだが、とにかく自分の内に秘める想いをただ爆裂なる勢いでガーッと書き出しただけの文章をインターネットの海に放流することにさほどの抵抗もなく、実際は "ここ" は「学校へ行こう」における未成年の主張の舞台となった学校の屋上くらいにはなんらかのてっぺんに位置するはずなのに

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取り憑かれ力②

オカルトや占いは信じない方だが、月に一度ほど、これはもしかして取り憑かれているのでは?と疑うほど人が変わってしまう時期が必ず来る。その期間中は目に映るすべのものは呪われしメッセージと言わんばかりに何をされても言われても腹が立って仕方がなく、憎しみの権化となった私は胸中で念仏のように呪詛を唱え続けているのだが、そんなことハハは知るよしもない。いや、期間中の彼女を見ると明らかに怯えているのでもしかする

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5月13日(水)取り憑かれ力

私は取り憑かれ力の強い方である。つい先ほどもディノスのカタログに取り憑かれていたところだ。春から夏へと変わる今この時期に欲しいアイテムがありすぎるのだ。「好きな人や物が多すぎて見放されてしまいそうだ」などと椎名林檎が歌っていたがまさしくその通りである。薄めの肌掛けに、ハーフケット、トイレマットも変えたいし、そういえばタオルがいい加減ゴワゴワを通り越してズソズソになってきてたぞ、ああラグも素敵なのに

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【季節の記録】五月は急に暑くなる

【季節の記録】五月は急に暑くなる

四月になりぽかぽか陽気にうかうかしているとあっという間に五月がきて、それでもまだこれでもかというくらいのぽかぽか陽気にうかうかしていると、さすがのお天道様も何を思ったか我々に夏日という名の試練を課してきた。そういう日が五月上旬には必ずある。必ずあるのだよ、ワトソンくん。そう来年の自分にも釘を指しておきたいのだが、一年もあれば忘れてしまうのが記憶力の極めて低い人間の性である。

あー夏休み。

私が

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5月3日(日)好きなお寿司の食べ方

5月3日(日)好きなお寿司の食べ方

好きなものの話をすると健康に良いとの研究結果が出ているので(当人比)好きなお寿司の食べ方の話をします。

前々から薄々勘付いていた事実がある。それはお寿司を食べると寒いということだ。

あれは数年前の冬の日のことだった。私と友人は寿司を食べるためだけに街合わせ、駅前の回転寿司屋に入った。カウンター席だけの、入口からの風がびゅうと吹き込んでくるような、小さな店であった。

私と友人は流れてくる寿司を

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