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十三人の合議制_03 千葉純胤の時空移動

純胤は続ける。

「『なぜこの十三人なのか』ですが、なにか皆様的に申したいことがあればまずはおっしゃっていただければと」

開口一番、胤盛が返す。

「十三人のうち、北条時政殿は頼家様の祖父にあたり、比企能員殿も頼家様の嫡男である一幡様の母親は比企家なので、いずれも頼家様の縁者です。お二人は妥当でしょう」

次に師常が続いた。

「安達盛長殿も頼朝様が十代半ばよりずっと付き従ってた。いわば家族同然の仲なので入るだろうな」

次に胤信が続いた。

「三浦義澄殿、八田知家殿、和田義盛殿、足立遠元殿も頼朝様挙兵時より千葉一族と共に戦ってまいった。父上とどっちが格上かは別として入ってる分には頷ける」

次に胤頼が続いた。

「中原親能殿、大江広元殿、三善康信殿も頼朝様挙兵前より朝廷側で動いたりと骨を折ってきた。密偵みたいなこともしてたし。何気に苦労人だよね」

胤頼は「実は中原と大江は兄弟なんだよ」と純胤に添えるも純胤からは知ってましたと素っ気ない返事が返ってきた。

次に胤正が続いた。

「父上が入っておらぬならここまでの人選が妥当なところであろう。父上を差し置いて梶原景時殿、二階堂行政殿が参画するとは何事か。義時に至ってはこの中で極端に若輩ではないか」

純胤がここまで千葉一族面々の話を聞いて語り始めた。

「皆さま忌憚なく申して頂きありがとうございます。僕も皆さまがおっしゃった方々はどなたも挙兵以来の重鎮で今回の人選的には同じ思いです。そうですね。先ずは残りの方が何故かの前に千葉常胤がこの十三人に入らなかった推察からいきたいです」

「先ほど胤正が北時を『若輩』と言ってました。これが答えです」

「失礼ですが、もう常胤は御幾つになられましたか」

唐突に振られた常胤は少し戸惑いつつも今年で八十一と返した。

「この激動の時代に第一線でずっと活躍しながら八十を超えるとはもう一族の生神様ですね。流石です。でも齢が人選から漏れた最大の要因と考えています。十三人で一番高齢が確か三浦義澄で当時七十二歳。これでも政事をするにはかなりきついかと」

「ただでさえ権力闘争の渦である合議制です。『常胤殿はご高齢故、無理なさらずに。常胤殿が存命なのに嫡男の胤正殿に参画頂くのは僭越であろう』という体でなかったのでしょうか。まあ十三人もいるので千葉一族側が抗議でもして胤正を常胤の代理として追加して十四人には出来たかもですがまあそこは押さなかったと思われます。思われますって言ってもこれからの事でしたね」

胤通が申し訳なさそうに「あのぅ・・」と純胤に声をかけた

「さっきから気になっているんだけど義時は江間だよ。江間義時。北条義時は昔の名前さ」


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