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フランスの旅(3)~アルル

Bonjour ! 三月( mars )に入って、私の地元浜松もだいぶ春らしい雰囲気になりました。が、喜んでもいられないのがこの私。小さい頃から持病の花粉症( le rhume des foins )があり、毎年この月になると鼻水は出るわ目はかゆいわで今から戦々恐々としております。

今回は、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ( Vincent van Gogh )ゆかりの街アルル( Arles )の話をしたいと思います。去りがたい思いを抱えながら地中海の街を後にした私が訪れたのがこのアルルの町でしたが、私がこのオランダ人( Hollandais )画家に興味をもつようになるのはまだ後の話。この時の私と言えばまだ無教養な若者で(今でも教養があるとは自分では思っていません、念のため)、ただバスから見るプロヴァンス( Provence )の風景にぼんやり見入っておりました。

そうしてたどり着いた先があのアルルの跳ね橋。恥ずかしながら当時の私はこの跳ね橋とゴッホとの結びつきをまったく知りませんでしたが、それでも日本の橋にはないその独特の形態と、そこから醸し出される詩情に強い印象を受けました。それより私が印象に残ったのが、橋の周りの風景。夏の終わりの風にやわらかな草がなびくその光景を見て、なんとなく私は「まるで昔の日本に戻って来たような気分だな」と感じました。そして驚いたのが、数年後に何気なく読んだ本の中で、実はアルルにいた当のゴッホ本人も「ここの景色はすばらしい、まるで日本版画のようだ」手紙( la lettre )の中で書いていたことです! ここで書かれている日本絵画とは、おそらく浮世絵のことだと思いますが、道理で外国にいながら懐かしい気分になった訳だと思いました。なにしろ江戸時代の絵師が見て描きゴッホにも見せた風景を見ていた訳ですから。

なお、私が見たこの橋はゴッホが絵に描いたオリジナルのものではなく、実際に架かっていたものを取り壊した後で今の場所に再現したものだそうです。

アルルにやって来たゴッホは同じ画家で親友のポール・ゴーギャン( Paul Gauguin )と同居し、有名な『アルルの跳ね橋』( Le Pont de l'Anglois )の他に『夜のカフェテラス』( Terrasse du café le soir )などをここで描く訳ですが、しだいにゴーギャンとの関係も上手く行かなくなり、最後は自分の耳( l'oreille )を切り取って病院( l'hôpital )に一時収容されるなど悲劇的な形でこの街を後にすることになります。少なくとも私が訪れた時には、ここの明るく穏やかな風景の中に人を狂気( la folie )に陥れるようなものは全く感じなかったのですが・・

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