掌編小説 写真
旅先で写真をたくさん撮りました。
山の景色に電線が映り込まないよう、ズームをしました。
観光用の小径で、人が通りかからない瞬間を狙いました。
道端に落ちていた柿を真ん中に移動させて、地面からの目線で撮影しました。
団体客の喧噪を背にしながら、流れ落ちる滝をレンズに納めました。
メガソーラーの黒光りが映り込まないギリギリの位置を探りました。
茅葺き屋根の隣に建つ、トタン屋根の家が入らないよう一歩右にずれました。
観光客の存在を紛らわしたくて、ピントをずらしました。
そうしてブログに「これが旅先の景色です」と紹介しました。
了
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