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学生時代に8mmフィルムで撮った『19』

僕の初監督作品となった『19』は、学生時代に撮影した8mm版がベースとなっている。8mm版を19歳のときに撮影したことで、タイトルを『19』にした。また、8mm版は、1996年のぴあフィルムフェスティバル(第19回PFFアワード)の準グランプリを受賞し、映画の世界を目指すきっかけになった。

「8mm」とは、まだビデオカメラが一般家庭にが普及していなかった時代につくられた小型のフィルムカメラのことで、装填するフィルムの幅が8mmだったことから、「8mm」と呼ばれた。これが、16mm、35mmとフィルムの幅が増えると、映画館で上映されている映画と同じフォーマットになる。

撮影してすぐに見れるわけではなく、現像所に持っていって1週間ほどかけて現像を行い、ようやっと撮影した素材を見ることができる。しかも、3分程度のフィルムが800円、現像に700円ほどかかり、たくさん撮れば撮るほど、フィルム代と現像代がかかる。フィルム撮影は、いまじゃ考えられないような根気が必要な贅沢品だった。

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1996年当時は、もうすでに家庭用のビデオカメラが普及していたのだが、『19』を撮るときには、敢えて8mmで撮影することを選んだ。1週間、現像をたのしみに待って、露出不足やピンぼけで写っていないこともざらだったが、独特のフィルムの粒子感は、根気が必要な不便さを補ってあまりある魅力があったからだ。

今回、『19』のBlu-rayに映像特典として、8mm版も収録する。8mm版は50分、劇場版は82分と単純に30分ほど尺が増えているので、8mm版をどう展開させて劇場版を仕上げたかがよくわかると思う。また、劇場版に出演している僕と野呂武夫くんは、8mm版でも同じ役柄を演じているので、見比べると、少しは芝居がうまくなっているかもしれない(笑)。

『19』(Blu-ray版 2020年1月9日発売)
監督・脚本/渡辺一志
出演/川岡大次郎、渡辺一志、野呂武夫、新名涼、遠藤雅、野沢那智
サラエヴォ映画祭新人監督特別賞/トロント国際映画祭/トリノ国際映画祭/シンガポール国際映画祭/台北金馬映画祭 …etc 正式出品