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法華寺のお守り犬(奈良県・奈良市)_20190417

全国各地の張子を自分なりに模倣しているのですが、制作にともなって必然的に触れる歴史や地理、さらに日本や中国・朝鮮など大陸の慣習などなど、これを知るのがまた無上の楽しみでありまして。

暦や歳時記を知ることで季節に敏感になったり、またそれによって旬の食べ物や植物なども知ることができたりと本当に面白いです。

郷土玩具という形をしたものが、あらゆる文化の氷山の一角であり、それが深いところで複雑に絡み合っていたり通じあったりしていることに気づかされて、知れば知るほどにズブズブと深みにはまっています。

こんなことをしていなかったら古事記を繰り返し読むこともなかったでしょうし。

ちょっと前にkindleの『まんがで読破』シリーズという、古今東西の古典をマンガでわかりやすく読めるシリーズがセールをしてまして(¥11という破格のセールでした)、こういう機会でもなければ名前は知っているけれど読んだことのない古典や既に知っているものも含めて買い漁りました。

『古事記』はもちろん、『日本書紀』『史記』『三国志』『論語』『平家物語』『資本論』『国富論』『五輪書』『失われた時を求めて』『罪と罰』『ドグラ・マグラ』『人間失格』などなど、すごく充実。。

特に『古事記』は面白くて、古代の日本人の思考に触れることができるので、色々なバージョンを読むことで日本人の世界(といっても大陸からの渡来人が日本列島に来てなじむまでの世界と言っても良いと思いますが)の捉え方を多角的にうかがい知ることができます。

例えば「八百万の神様」のように土着の全てに神が宿っている感覚に加えて、おそらく朝鮮半島由来の「技術」や「技能」などの能力自体にも神様の名前をつけているあたりなどは興味深いです。

"細部に神が宿る"といった言い回しにも、古事記などの古(いにしえ)から続く感覚が含まれている気がします。

ぶっちゃけこのシリーズの『古事記』は現代的にし過ぎていて鼻白む部分がなくもないので、マンガで読むならこちらが本当はオススメかもです。

こういった古事記に出てくるような神々を主に祀っているのが「神社」なのですが、日本には「寺」という仏教の仏様を祀っている場所も多く存在しますよね。

郷土玩具は神社の授与品という形では多くのバリエーションがあり、また「お守り」や「お札」のように神社では様々な授与品が存在しています。一方でお寺で頂けるものって僕にはあまりイメージがありませんでした。

それでも神社のようにお守りなどを授与しているところも存在しているようで、ざっくり調べたところ、たとえば名古屋の龍泉寺で授与される「串馬」や、群馬県の迦葉山弥勒寺の天狗面などいくつか存在していますが、やはり神社ほどは多くないようです。


前置きが長くなってしまいましたが、そんなお寺の授与品の中でも特に素朴で愛らしいのが奈良県にある法華寺(ほっけじ)の『お守り犬』です。

本来は山土に護摩祈願の灰を混ぜ、法華寺の尼僧の方々が手でこねたあと素焼きしてできる"手びねり人形"を張子でつくりました。

法華寺は、飛鳥時代から奈良時代初期にかけて朝廷で力を持っていた藤原不比等の娘である光明皇后によって、父である不比等の没後にその邸宅を相続し、この皇后宮を総国分尼寺としたことが始まりで(745年創建)、以後女性たちの信仰の中心となってきました。

伝承では一千座の護摩供養を行い、その灰を清浄な山土に混ぜて、光明皇后自らつくられたとされ、病苦や災難の厄除けを願い、結縁の者に授けられたことが始まりと言われるのがこの『お守り犬』です。

現在でも尼僧の方々が日々のお勤めの合間につくられていて、桐箱に入れられて授与され、疫病・災難・厄除けのお守りとして授与されています。

ありがたみがハンパない。。いつか頂きたい授与品であります。

【張子制作MAP】

27/47。昨日「近畿地方は残すところ、兵庫県と和歌山県となりました。」と書きましたが、奈良県が抜けていたので、これで残り2県でした。1月1地方のペースだから夏には終わるかなー。

その間にも季節の行事があるので色々とつくってみたいと思います。



張子制作に使う粘土や和紙や糊やジェッソや絵の具や筆や竹串やなんやかんやを買いたいのでサポートしてください!!