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『コンヴァージェンス・カルチャー』あとがき「YouTube時代の政治を振り返る」リンク集

ヘンリー・ジェンキンズ著、渡部宏樹、北村紗衣、阿部康人訳『コンヴァージェンス・カルチャー: ファンとメディアがつくる参加型文化』のあとがき「YouTube時代の政治を振り返る」で言及されている動画へのリンクをまとめました。基本的にページ順に従ってYouTubeへのリンクを貼ってありますが、前半よりも後半のほうがAppleのCM、『ハリー・ポッター』などのポップカルチャー、オバマをはじめとする現代の政治家への言及もあり面白いです。

*ヘッダー画像はWalmart Watchのビデオ「Harry Potter and the Dark Lord Waldemart」より引用。

ちなみにヘンリー・ジェンキンズはここに挙げているYouTube上でのパロディという政治的実践を、それが参加型であるからといって即座に肯定しているわけではありません。この章の末尾をまず最初に引用しておきます。

「良くも悪くも、これがコンヴァージェンス文化の時代における民主主義の姿である。多様性を促進し、民主主義を可能にするメカニズムとしての参加型文化の将来に関心があっても、現在の文化がこれらの目標に遠く及ばないことを無視していては世界に何の恩恵ももたらさない。市民がボトムアップの手段を使って他人を押さえつけることがあることを認めずに、すべての草の根メディアを何らかの形で支配的な組織に「抵抗性がある」と見なす傾向があまりにも多い。[...] 私たちはしばしば、草の根文化がその潜在能力を十分に発揮するのを妨げるかもしれない対立や矛盾を特定し解決するよりも、単に草の根文化への批判をそらそうとしてきた。私たちはあまりにも頻繁に、外部に締め出されてしまった声を考慮することなしに、アイデアの市場に持ち込まれているそれらの代替的な声を称賛してきた。[...] ピエール・レヴィが「達成可能なユートピア」と呼んだものに向かって進むためには、取って代わりつつある実践や制度について厳しい問いを投げかけ続けなければならない。政治に関与しているその倫理的側面に注意を払う必要があるのだ。」(p499-500)


Billiam the Snowman “CNN/YouTube Debate: Global Warming”

CNNとYouTube共同開催で行われた民主党の大統領候補者を選ぶための討論会で取り上げられた「地球温暖化について「この国の雪だるまにとってはたった一つの最重要問題です」と語るクレイアニメの雪だるま」(p467)。


anonymousAmerican,“Fuck You, CNN” 

「匿名のアメリカ人」なる人物の「クソ食らえ、CNN 」と題する動画。「彼 の仮面によって、彼はどこにでもいる人物として話すこともでき、また政治的抑圧を視覚的に表現すること もできた。また、仮面をつけることによって、自身の動画をしばしば仮面をかぶった人物を使って社会的不正に抗議したというルチャドール(メキシコのレスリング)の伝統にも関連づけた。」(p477)


Billiam the Snowman, “The Original Video”

最初に作られた政治性のない雪だるまビデオ。「ミスター・ビル」というクレイ・アニメを模倣したもの。(p479)


Billiam the Snowman “Billiam the Snowman Responds to
 Mitt Romney”

ハメル兄弟が作ったビリアムが雪だるまの質問に答えることを恐れたロムニーに「もう少し気楽になってくださいよ」と言っている動画」。(p480)


CNN, “Snowman vs. Romney”

CNNが上記のハメル兄弟の動画を取り上げた報道。 ロムニーが「オバマ、オサマ[・ビン・ラーディン]、そしてチェルシーのママ[=ヒラリー・クリントン]にノー」(p480)という看板を掲げている人と一緒にいるところを捉えた映像も含まれており、事件の全体像がまとまっている。


“Ask a Ninja Special Delivery 4 ‘Net Neutrality’ ”

雪だるまに触発されて忍者の姿でネットの中立性について議論する人。


Mckathomas, “Bomb Bomb Bomb, Bomb Bomb Iran” 

「古典的なロックンロールの曲をまねて「爆撃、爆撃、爆撃イラン」と歌いながら、サポーターたちと冗談を言い合うジョン・マケイン」(p480)


“Keep America Beautiful”

「1971年のアース・デイのための「キープ・アメリカ・ビューティフル」キャ ンペーンでは、米国の景観の中でゴミのポイ捨てについて泣いているアメリカ先住民の姿をした「鉄目のコーディー」[=イタリア系米国人のハリウッド俳優でネイティブ・アメリカンの役柄を多く演じ、晩年には自分がネイティ ブ・アメリカンだと主張した]のイメージが使われた。」(p481)


Lyndon Johnson, “Daisy”

「核爆弾の爆発までのカウントダウンのサウンドトラックに重ねてデイジーの花びらを摘む少女を描いた有名なリンドン・ジョンソンのテレビ広告」(p481-2)


I'm a Democrat, I'm a Republican - It's The Economy, Stupid

「スモール・メディア XLと呼ばれるグループは、人気のあるMacとWindows パソコンの比較宣伝に倣って、共和党と民主党の違いを比較した話を作成した。[...] ここでMacとWindows パソコンを比較する雛形が、二大政党とそれらの政策の結果の違いを脚色した新しい顔(ペルソナ)を作り上げ、大統領選候補者を比較して評価する場に私たちを招待するのだ。」(p482-483)


Hillary Clinton “Sopranos Spoof”

「有名な例では、元大統領夫妻が『ザ・ソプラノ』の最後のシーンを再現したものが挙げられる。[...] ヒラリーが夫の食事制限をしようとしていることやチェルシーが縦列駐車に苦労していることをジョークにしたこの動画を通じて、クリントン夫妻はホワイトハウスで過ごしてきた時に得た超人的なオーラを払拭し有権者の生活の世界に復帰しようと考えていた。」(p484)


Mike Huckabee, “Chuck Norris Approved”

「あるいは、[元アーカンソー州知事で共和党の大統領候補者である]マイク・ハッカビーの、最初はテレビで放送され後にYouTube でも広く視聴されたキャンペーンについて考えてみよう。[...] 米国とメキシコの国境を守るためのアーカンソー州知事の方針として、アクション映画スターのチャック・ノリスが発表され、ノリス本人が動画に登場するのだ。つまり、動画はハッカビーの男の中の男としての信用を証明しようとしながら、同時に彼がそうする必要性自体をからかっている。」(p484)


Billionaires for Bush in Action

「「ブッシュを支持する億万長者たち」は、街頭演劇を利用して、選挙資金改革、メディアの集中、富裕層への減税などの問題に注意を喚起した。彼らの批判を「階級闘争」として描き出そうとする保守派の批判をかわすため、漫画に描かれるような富裕層の姿を装い、選挙遊説場に姿を現し、 他のブッシュ支持者たちと一緒に歌ったりすることで、このグループは遊び心のある態度を見せた。こうした「グルーチョ・マルクス主義者」は、単にブッシュをからかうのではなく政治運動を楽しい活動と見るために、ジョークの過程へと支持者も傍観者も等しく導き入れた。」(p486)


Harry Potter and the Dark Lord Waldemart

ハリー・ポッターが元ネタのウォルマートの労働問題に注意をむけるための動画。「ハリーと(ドラァグで演じられる)ハーマイオニーは、「例のあのスーパー[ここではウォルマート]」という言い方で名指しされるスーパーのおかげでダイアゴン横丁の伝統的な商店が危機に陥っていることに気付く。彼らが自分たちのコミュニティの「魔法」を維持するために、ハリーと彼の仲間はヴォルデモート卿(そのスマイリー・フェイスの外観は、屋敷しもべ妖精を食い物にしたり、地元の競争相手を追い出したり、手下に医療保険を提供することを拒否したりするといった邪悪な意図を隠している)と戦わなければならない。」(p487)

ちなみにこの動画はシリーズ化している。


Obama Girl, “I Got a Crush . . . On Obama”

一連のオバマ・ガール動画の最初のもの。「ニュース解説者は女性の政治的関心を男性候補者の魅力で簡単に籠絡できるものだと単純化することが多い」(p489)が、オバマ・ガールの動画はむしろそのような認識を逆に利用した動画で、「テンポの速い画像と重層的な言葉遊びは慎重な解読を促し、消費者にジョークを「理解する」ためにオバマの選挙活動をもっと学ぶ必要性を生じさせる。」(同)


ParkRidge47, “Vote Different”

アップルの広告「1984 」をリミックスしてヒラリー・クリントンがビッグ・ブラザーとなっているパロディ動画。「この動画は、リチャードソンとオバマ両方の大統領選挙キャンペーンにテクノロジーを提供したインターネット企業ブルー・ステイト・デジタルの社員であるフィル・ドゥ・ヴェリスが制作したものであることが判明した。」(p490)


MADtv, “Hillary vs. Obama”

ヒラリー・クリントンとバラク・オバマまたその女性やマイノリティとして表現される支持者を描いた動画の元ネタになった『マッド !』の寸劇。「両民主党陣営の対立が物別れとなったところでジュリアーニ支持者の拍手で幕を閉じ、これは党内抗争の危険性に焦点を当てた解釈を示唆したものだ。」(p497)



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