100年前のレシピ本を訳してみます20(A-3)
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100年前のレシピ本を訳してみます20(A-3)

また時間がかかってしまいました。「A. 一般的な調理技術の説明」の41~61番です。これでこの項は終わりになります。
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  41.マッシュルームの下ごしらえ 新鮮なマッシュルームの傘と柄の表面を剥き、傘の下にあるひだを取り除いたら、冷水で洗います。洗ったマッシュルームをスライスし、バターと一緒に火にかけ、マッシュルーム自体の水分で煮るように手早く火を通し、汁と共にフリカッセに加えます。あまり長く加熱するとマッシュルームが固くなります。
  乾燥したマッシュルームは、他の乾燥キノコ同様、調理前に水でふやかします。お湯を注いで15分おき、水気をきったら、今度は熱湯で茹で、新鮮なキノコと同じ外見になるまで入れておきます。通常45分ほどかかります。茶色のマッシュルームを白い料理に使う場合、2回茹でて茶色の茹で汁を捨てます。水気を絞って、ラグーやフリカッセがぐつぐつ沸騰してきたら加えます。

  42.子牛の膵(胸腺)をフリカッセやソースに使う 子牛の膵を冷水に入れて火にかけます。熱くなったらお湯を捨て、再度冷水を注いで加熱します。これを膵が白くなるまで繰り返します。白くなったら冷水にとり、長い側の皮を引きはがし、別の側から肉づきのいい部分を外します。さいころに切り、フリカッセに入れて10分煮込みます。

  43.アスパラガスの下ごしらえ アスパラガスの頭の方を4~5㎝の長さに切り、フリカッセに入れて15分煮ます。根元の方は40分ほど要します。

  44.ピスタチオの下ごしらえ 冷水に入れて火にかけ、沸騰させたら皮を剥き、冷水にとります。使うまで入れておきます。ラグーには30分煮込みます。

  45.牡蠣の調理 牡蠣は盛り付ける時にフリカッセあるいはソースに入れましょう。煮込むと固くなってしまいます。

  46.玉ねぎの熱湯処理 皮を剥いた玉ねぎに熱湯をかけ、8~10分経ったら冷水ですすぎ、布巾で水気を拭き取ります。料理には常に熱湯処理した玉ねぎを使うことをお勧めします。不快なにおいや辛みが取れ、程よい香味野菜の風味を出してくれます。

  47.栗をことなる調理に使う ラグーや鳥の詰め物として使う時は、ナイフを使って外側の茶色い鬼皮を剥き、渋皮がアーモンドの皮のように剥けるまで湯がき、冷水に取ります。栗を温めたオーブンに入れたり、熱い天板に乗せたりすると破裂しますが、鬼皮や渋皮が楽に剥けるので、湯がく手間が省けます。そうしたら水少々、バター、砂糖ひとかけと一緒に、栗を色がつかない鍋に入れ、蓋をしてさっと煮ます。そうすると栗は白く、柔らかく、崩れにくくなります。
  キャベツと一緒に料理する時も同じようにします。盛り付ける前によく混ぜる、あるいは好きでない人もいるため、栗は別途小さな器に入れ、キャベツの飾りとして添えます。
  栗をデザートや、バター付きパンと一緒にお茶の時間に食べる時 鬼皮に十字の切込みを入れ、栗500gに対して一つかみの塩と一緒にコーヒーロースターか鍋に入れ、よく振ったりかき混ぜたりしながら柔らかくなるまでローストします。30分から34分くらいかかります。
  盛り付ける時は、栗を粗い布で包んで皮を手早く擦り落とし、熱いまま蓋つきの器に入れてテーブルに出します。
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コーヒーロースターを現代ではKaffeerösterといいますが、原文にはKaffeebrenner(コーヒーバーナー)とありました。検索してみるとイラストがあったので興味があればこちらクリックしてご覧ください。
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  48.マッシュルームの醤(ひしお) マッシュルームを、植物学者リンネによる学名ではAgaricus campestris といいますが、ドイツのキノコの中では一番美味しく栄養価が高く、水分を多く含むので醤を作るのにとても適しています。晩夏に育ち、他のキノコとは若干異なります。初めは小さく丸い傘と短くまっすぐな柄を持ち、雪のように白く、さらに育つと黄色味を帯び、表面が絹のような質感になります。傘の下にあるひだはバラ色で、後に赤茶色になり、身は真っ白で、石づきは根元のところで太くなっていて、柄の内部には中心に一枚皮のような輪があります。若いマッシュルームは生で食べるとナッツのような味がしますが、これはピクルスや肉のローストに加えましょう。もう少し大きくなり、小さな傘も大きく広がったら、これを醤油にします。ただ新鮮で身がしまっている状態のものを選び、傘も柄も使えます。傘の下にあるひだは取り除き、汚れた石づきは切り落とします。重さを量って洗った後ザルにとって水気をとったマッシュルーム2㎏、皮を剥いて小さく切ったエシャロット250g、塩70g、粗挽きの香辛料15g、割合はオールスパイス2対コショウ1対丁子1/2、さらに月桂樹の葉12枚、エストラゴンとバジルを一つかみずつ、細かく刻みます。これらを石鍋に重ねて入れ、2~4日間置いておきます。その後マッシュルームを手でしっかり絞り、汁を煮沸した布でゆっくり濾します。濾した汁を鍋に入れて火にかけ、ゆっくりとシロップのように煮詰めます。瓶に入れ、コルク栓をしておけばこのエキスは長持しますし、肉料理やソースに力強く美味しい味を出してくれます。ただこのエキスは濃縮してあるので、使う時は小さじで少しずつ使いましょう。
  このマッシュルームの醤の他、ソースやスープ、ラグーの色付け、味付けにイギリス製や日本製の醤油が購入できます。この醤も使う量に気を付けましょう。
  醤を作るより簡単なのは、マッシュルームの粉末を作ることで、これはとてもお薦めです。マッシュルームのひだと石づきを取り除き、白い紙に並べてオーブンに入れ、指で押したら崩れる状態になるまで乾燥させます。これを乳鉢で丁寧に細かく潰し、良質のコショウを少し混ぜ、小瓶に詰めてコルク栓をし保存します。ラグーや肉のファルスなどに風味を効かせてくれます。
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醤、ですが原文ではSojaとなっており、これは大豆を意味します。大豆と訳すとおかしくなり、レシピを読む限り大豆から作られるエキス=醤油のことでしょう。作者、編者は醤油がどのように作られるのか、正確に知らなかったのではと思います。
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  49.エストラゴンビネガー 摘みたての新鮮なエストラゴンの葉を洗わずにそのまま瓶に入れ、美味な白ワインを注ぎ入れ、コルク栓をして14日間日当たりのよいところに置いておきます。このお酢はサラダによい味をつけてくれます。ただ万人好みの味ではありませんから、使う時は気を付けましょう。このお酢をラグーに使う時は、エシャロットを一つかみ、月桂樹の葉を数枚、コショウ、丁子、オールスパイスをホールで加えます。7月および8月がエストラゴンの旬なので、このお酢を作るのによい時期です。

  50. ディルをキュウリのピクルスを作るお酢に漬ける ディルは大変人気のある風味のよい料理用ハーブで、特にキュウリのピクルスにはとても合います。花の時期が終わる頃ディルの香りは最もよくなりますが、その頃キュウリを漬ける時期は過ぎてしまっていることが多いです。そのため青いディルをグラスに入れ、未使用のお酢を注いで、使うまで漬けておきます。お酢に漬けたディルをキュウリの間に入れ、ディルを漬けたお酢と新しいお酢を混ぜてキュウリを漬けます。

  51.ソースに添えるハーブを煮詰める みじん切りのエシャロットか玉ねぎをコーヒーカップ1杯、パセリ、エストラゴン、タイム、バジル、レモンの皮をそれぞれ少々、月桂樹の葉を1、2枚をバター70gと一緒に火にかけ、バターが溶けて透き通るまで混ぜます。茶色くしてはいけません。口の開いたガラス容器に入れ、14日保存できます。

  52.コショウ、ナツメグ、オールスパイス、メースは使用する度に潰します。これら香辛料の有効成分は揮発性オイルに含まれるためで、粉末の状態で保存すると、それらの成分が失われてしまいます。コショウには実用性があり見栄えもよいミルがあり、コショウを入れた小皿を食卓に出す代わりにミルを置くこともできます。
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ナツメグにあたる言葉は、原文ではMuakatnelkeとなっています。これは初めてみる言葉で、検索してもなかなか出て来ません。イギリスのカレーパウダーの原材料表を英語とドイツ語で見比べたところ、どうやらナツメグらしいので、そうしておきました。ちなみにドイツ語でナツメグはMuskatnussといいます。
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  53.カラシを作る しばしば品質が疑わしい製品を購入するよりも、カラシは自分で準備する方が美味しいのでお勧めです。黒と黄色の粉カラシを同量ずつ用意します。それぞれ125gの場合、ここにグラニュー糖35g、すりつぶした丁子4g、オールスパイス7g、白ワインと白ワインビネガーを半量ずつ、全体がどろっとするくらいまで入れます。全体がよく混ざってなじんだら小さなガラス瓶に入れ、コルクの蓋をして8日間置いておいてから使います。

  54.アーモンドをおろすまたは潰す アーモンドを使う時潰していると時間がかかります。これをしなくて済むよう、アーモンドはおろすのがお勧めです。異なる大きさや仕組みのおろし器がどんな日用品店でも購入できます。まずアーモンドに熱湯を注いでしばらく置いてから薄皮を剥き、まだ湿っている状態で使用します。アーモンドを潰す場合は、該当するレシピに書かれている通り、まずアーモンドを完全に乾かし、清潔な乳鉢で潰す時に表面だけ水、卵白、またはアラックで湿らせます。乾かした状態で潰したアーモンドは油が出て来ます。

  55.小粒レーズン(カランツ)をきれいにする 種と大きい枝を取り除いたら、ふるいにかけ、ぬるま湯を入れた深いボウルに入れ、両手で擦り洗いします。小さな枝が取れてぬるま湯の中に溜まります。ぬるま湯を変えて何度か繰り返します。焼き菓子などに使う場合は、カランツやレーズンは再度乾かし、粉をまぶしてから使います。

  56.レーズンをきれいにし、下ごしらえする レーズンは枝を取り除き、丁寧に粒を選りすぐってぬるま湯で洗い、ザルにとって乾かし、粉をまぶします。上品な菓子には細かく刻んで使います。

  57.バニラ 良質のバニラはさやが細くしわが少なく、柔軟性があり、先端には傷がなく、また油分の照りがありますが、白い紙の上で擦っても油じみがつきません。バニラの鞘が白い結晶でおおわれているのは、よいバニラの目印です。バニリンが揮発してしまわないよう、バニラはすず箔で包みガラス瓶に入れて蓋をしておきます。同じように実用的な主婦の皆さんにお勧めするのは、密閉できる陶製またはブリキの容器に砂糖を入れ、バニラのさやをそのまま砂糖に埋め込むようにして保存すれば、バニラの品質を損なうことはありません。バニラの使用量は、それぞれの品質や味にもよりますので、特に決まった規則はありません。ただし使いすぎには気を付けましょう。Dr.エテカーのバニラシュガーも代用品としてお勧めです。

  58.レモンについて気を付けるべきこと、またその保存について しばしば苦いレモンにあたることがありますので、料理に使う前に味見しましょう。使う前に洗って拭き取り、種や白いわたを取り除くのも忘れないようにしましょう。
  レモンを保存するには、レモンを薄く柔らかい紙で包み、まっすぐに立てた柴ぼうきに入れて、風通しの良い涼しい場所に置いておきます。
  レモンの皮を新鮮に保存するには、砂糖の上でレモンを丸ごとすりおろし、黄色くなった砂糖を細かく削って、このレモンシュガーを口の広い密閉瓶に入れて保存します。薬局でどろどろした薬をもらう時に入っているような瓶です。
  レモン汁の代用としては、Dr.ナウマンの良質のレモンピールエキスやレモン汁エキスがお勧めです。どちらも多くの場合において、生のレモンがなくとも大丈夫と思わせてくれるものです。
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ちょっとここは首をかしげる箇所がありました。柴ぼうきに入れて保存するというところです。柄の部分ではなく柴の部分を上に向けて、ということでしょうか。
あとこの時代の砂糖はどんな状態のものが多かったのか、ということです。砂糖を削る、とあるので、グラニュー糖のような細かいものでなく、ある程度の大きさの塊だったのでしょうか。ちょっと調べてみないとですね。
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  59.オレンジの使用、保存方法 オレンジの皮がレモンの皮の代用になることがあります。特にコンポートにはおいしく安価な調味料になります。オレンジを食べる時、皮は使わないので利用できます。
  長期保存する場合は、よく切れるナイフでオレンジをできるだけきれいに皮を剥き、皮の黄色い部分を細切りまたはみじん切りにし、削った砂糖大さじ2杯と混ぜ合わせ、密閉できるガラス瓶に入れて保存します。時間が経つと砂糖水が出て来ますが、これはオレンジの皮の風味を含んでいるので、皮も汁も全て使いましょう。後から砂糖を追加しても構いません。

  60.スパイスのエキス 前述にて、通常のスパイスの利用法を十分に考慮しましたが、利用者が増えているドレスデンのDr.ナウマン社のスパイスエキスについても主婦の皆さんにお伝えしようと思います。このスパイスエキスは良心的な商品で、生のスパイスの完璧な代用品となるだけでなく、その都度効果に大きな差がある生のものと違い、常に均一の効果が期待できます。さらにこれらスパイスエキスは楽に使え、時間も多いに節約できます。生のスパイスに付きものの、きれいにしたり、刻んだり粉砕したり、煮詰めたりする作業が不要だからです。生のスパイスは、通常料理に使える有効成分はほんの一部分であることが多いのに対し、エキスは製造時に成分をすべて抽出し、原料のスパイスは大量に仕入れると安くなることを考えれば、安く購入できるのも理解できます。それでもエキスが自然のスパイスに完全に取って代わることはできないでしょう。料理にスパイスを使うのは、その見た目も重要だからです。料理にパセリ、ケイパー、キャラウェイのみじん切りが見えなければ、無意識に私たちの味の想像が影響されるでしょう。
  スパイスエキスを使う際、Dr.ナウマンのエキスの場合は、レモン一個はレモン汁5gに、レモンの皮一個分とレモンの皮エキス4gに、マッシュルーム10gはマッシュルームエキス1gに、ビターアーモンド5粒はアーモンドエキス1gに相当すると覚えておくと、便利です。

  61.マギーの調味料 この秀逸な調味料はここ数年の間、広く多くの家庭に取り入れられるようになりました。マギー調味料はとても安く少しずつ使えます。味の薄いスープ、ソース、その他の料理によい味をつけてくれます。肉エキスとは違い、マギー調味料は調理する時に加えるのではなく、盛り付けの時に加えます。とても経済的に使え、実用的な主婦の皆さんには大変お勧めです。さらにこの調味料は医学的な検査でも刺激物は含まれていないため、病人食にも使えます。マギーのブイヨンキューブは肉のスープの代用になります。
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  マギーは日本でもおなじみ、キューブブイヨンのマギーです。設立者はスイス出身のJulius Maggi、読み方はユーリウス・マッジ。イタリア語です。父親がイタリアからスイスへの移住者でした。ユーリウスの父は製粉業で成功し、ユーリウスも事業を引き継ぎ、当時栄養や料理時間の不足が問題視されていた労働者の食事情を改善すべく、栄養があり楽に調理できる食品の開発に力を入れます。まずは豆類から作られた粉、次にインスタントスープが作られ、そしてマギー調味料が生まれます。日本では固形または粒状のブイヨンが知られていますが、この調味料は液体でした。今でもドイツでは売られています。

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 1897年にドイツでマギー有限会社を設立、ナチス政権下ではナチスの模範企業とされ、戦後そのイメージを払拭するため1947年にネスレと合併します。
  ちなみにドイツにはMaggi-Kraut、マギー草と呼ばれるハーブがあります。ラベージのことです。マギー調味料には全く使われていませんが、このハーブの風味があることから、このハーブにこの呼び名がつきました。ドイツ語の正式名はLiebstöckelです。
  肉のスープの代わりになる、と書かれているように、リービッヒの肉エキスを凌ぐほどの人気商品になったようです。
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次回からスープに入ります。

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