
100年前のレシピ本を訳してみます28・B. スープ⑨ V.果物のスープ&VI.冷製スープ
とうとうスープの章の最後にたどり着きました。最後の項は短いので2つまとめます。
V. 果物のスープ
甘い果物のスープは、日本ではあまりなじみのない料理ですね。ドイツではたくさん採れた果物を生食、ジャムやコンポートにした他、このようにスープとしても食べます。
94. イチゴのスープ
細かく砕いたラスクを水に入れてとろりと煮詰め、ワイン、砂糖、シナモンと、もしスープにとろみがつかなければ、水で溶いたデンプンまたはじゃがいもの粉を加えます。火からおろし、1時間前に砂糖をまぶしておいた、受け皿数杯分の完熟したイチゴを加えて混ぜます。ビスケットの砕いたもの又はラスクを添えます。
95. 新鮮なサワーチェリーのスープ
サワーチェリーを、ラスク少々とレモンの皮または丁子2,3本と必要量の水と合わせて、さくらんぼの果肉が煮崩れない程度に加熱します。スープを濾して再度火にかけ、砂糖、赤ワイン(煮過ぎないこと)、塩とシナモンを加えます。クッキーまたはラスクを添えます。
冬は乾燥さくらんぼを使います。燕麦の粥とレモン汁を煮て、上のように調理します。
96. リンゴのスープ
小さく切った酸味のあるリンゴをスープ皿一杯と、受け皿一杯分の湯がいた米を水に入れてやわらかく煮たら、濾して砂糖、シナモン、レモンの皮と塩を加えて煮詰め、卵黄1個を混ぜ入れます。
米の代わりにジャガイモのサゴもおすすめです。リンゴのスライスを蒸し煮にして、盛り付ける時にスープに入れると素敵です。
ここにも米でとろみをつけるレシピが出て来ましたね。少しおかゆっぽいスープでしょうか。
97. カラントを使った上記と同じスープ
リンゴと白パン少々を一緒に煮て濾したら、すりおろしてバターで炒めた黒パンをカラントと丁子少々、塩を加えて少し煮たら、シナモンとクリーム大さじ一杯を混ぜ入れます。
98. レモンのスープ
熟した大きなレモンを、半分皮をむいたら、果肉全部を薄く切り、種を取り除きます。 半リットルの水にレモンスライスを入れ、柔らかくなるまで火を通して濾します。ここにりんごワイン半リットルと必要量の砂糖を加え、大さじ2杯のモンダミンを水で溶いてとろみをつけます。卵黄2個を混ぜこみ、卵白を泡立てて団子を作ってスープの上に浮かせます。
99. 新鮮なセイヨウスモモのスープ
スープ皿一杯のセイヨウスモモの種を取り、白パンと一緒に水に入れてやわらかく煮ます。スープを濾して砂糖とシナモンを入れて火を通し、バターでローストした白パンを添えます。
日本で作るならプルーンやスモモでよいと思います。
100. 新鮮なセイヨウスモモと牛乳のスープ(夕食にちょうどよいスープ)
スープ皿いっぱいの熟したセイヨウスモモを濾して、大さじ山盛り2杯の粉を水で溶き、牛乳1.5 ℓと塩少々を加えてセイヨウスモモと一緒に火にかけ、よく混ぜながら粉に火が通るまでしばらくスープを煮ます。セイヨウスモモはつぶれても構いませんが、煮詰めてはいけません。セイヨウスモモが十分熟していれば、砂糖を加える必要はありません。このスープはきちんととろみが付いているのがよく、ある程度冷ましてから食べます。
VI. 冷製スープ
ドイツ語でKaltschaleといいます。kaltは冷たい、Schaleは実験室でおなじみのシャーレですが、ここでは器、特にスープ皿のようなある程度深さのあるものを指します。Kaltschaleで一つの単語として、日本語だと冷製(果物)スープという訳語を見かけますのでこちらを使用します。
101. ワインの冷製スープ
盛り付ける1時間前にマコロンまたは小さなラスク(大きなものは小さく割る)をスープ鉢に入れ、種を取ったレモンのスライス、シナモン、白ワインと砂糖を入れた水を半々ずつ注ぎます。
マコロンはドイツ語でMakrone(n)ですが、現在よく見かけるフランスのクリームをはさんだマカロンと似てはいますが、クリームはなく、卵白、砂糖をベースにナッツを入れて焼いたものが一般的です。ちなみにココナツを入れたKokosmakronenはドイツではクリスマスによく食べられます。
102. オレンジの冷製スープ
色々な果物のジュースにワインと水を半々ずつ、シナモン、皮をむいて8等分に切ったオレンジに砂糖をまぶしたものを合わせます。ラスクをワイン少々で柔らかくならない程度に湿らせ、砂糖をまぶして重ねてスープに添えます。
103. 杏の冷製スープ
杏の皮をむいて種を取り、杏仁数個とシナモン、多めの砂糖を水に入れ、柔らかくなりすぎないよう煮込み、半分をスープ鉢に入れ残りの杏は煮汁と一緒に濾します。冷めたら水と同量のワインを入れて十分に砂糖を加えて甘くし、杏に注ぎます。ビスケットかラスクを添えます。
杏仁は杏仁豆腐でも知られる、杏の種の中身です。ドイツでは、これでペルシパン(Persipan)を作ります。アーモンドで作るマルツィパン(Marzipan)の代用品です。イタリアではアマレットの材料ですね。
104. さくらんぼの冷製スープ
スープ皿一杯のサワーチェリーを、種を取って1ℓの水に入れ、さくらんぼの種の中身数個、丁子2、3本を合わせて15分火を通したら、濾して冷まし、赤ワイン3ℓ、砂糖とシナモンを加えます。ラスクを割って中に入れるか添えます。スープのとろみが足りなければ、とうもろこしの粉をワインで溶いたものでとろみをつけます。
泡立てたクリーム(A章3番)を載せてもよいです。
杏の種ならまだしも、あの小さいさくらんぼの種の中身をわざわざ取り出して食べるとは知りませんでした。さっと検索してみると、レシピなどはなく、代わりに飲み込んでしまった時の注意とか、種の中身は毒性がある、などという情報が出て来ますね。アンズなどもシアン化合物が若干含まれていますが、サクランボの種にはアミグダリンという有毒物質が含まれているそうです。ただ間違えて数個飲み込んでしまったとしても中毒性はないとか。でもこのレシピを作る時はサクランボの種は除外した方がよさそうですね。
105. イチゴとラズベリーの冷製スープ
イチゴを必要に応じて水で洗いますが、ラズベリーはそのまま使います。両方をスープ鉢に入れ、たくさんの砂糖をふりかけたら蓋をして、1時間置いておきます。次に白ワインと砂糖を入れた水を半々ずつ、レモン一個の汁、シナモンを合わせて注ぎ入れます。 果物の半分を越して砂糖を加え、良質の牛乳を代用してもよいです。盛り付ける際丸ごとの果物を牛乳に入れ、小さなマコロンを添えます。
イチゴのスープはネット上でもレシピがいろいろあります。材料はこのレシピと違いますが、例えばこちら。他のレシピに何度も登場する卵白を泡立ててスープに浮かせるのがこれ。
106. サゴまたはお米の冷製スープ
純正のサゴまたは米125gを湯がいたら、水に入れてかき混ぜずに柔らかくどろっと煮ます(粒が残る程度に)。スープ鉢に入れ、その上に砂糖をたっぷりと、シナモン、レモンの皮のすりおろしと、よく洗って湯がいたカラントを茹で汁と一緒に加え入れます。冷めたら赤ワイン1瓶と水1瓶、砂糖を入れます。
赤ワインを入れて沸騰させたりしないようなので、アルコールはそのまま残りますね。このレシピを試す場合は気を付けて。
107. ビールの冷製スープ
古くなった黒パンをすりおろし、洗って湯がいたカラントをたっぷりと、シナモン、レモンスライス、苦くないビール、砂糖を好みでまぜ合わせます。
ビールスープは温かいものが多いですが、冷たいバージョンもありますね。アルコール度の弱い、薄めたビール(Dünnbier)というのを昔はよく飲んだそうで、ビールスープもこれで作っていたそうです。朝食に食べたりしていました。
108.ヴェストファーレン風冷製スープ
古い黒パンをすりおろし、濃いサワークリームを泡立てて、茶色の苦くないビール、砂糖、シナモンと混ぜ合わせます。
ヴェストファーレン風というのは、プンパニッケルの地元であるこの土地ならではの、黒パンを使うところでしょうか。サワークリームを泡立てるというのは、やったことがありませんが、生クリームのようにふんわり泡立つのか分かりません。いつかやってみたいと思います。
109. 冷たいニワトコのミルク
ニワトコの花を二つ、1ℓの牛乳に入れ、約10分火を通して火を止めます。そこに大さじ一杯のでんぷんまたはじゃがいもの粉を溶いて入れ、煮立たせます。これに砂糖、塩、卵黄1~2個をスープ鉢で混ぜ合わせ、砂糖を加えて泡立てた卵白の団子を浮かせたら、蓋をして冷まします。
ニワトコのミルクを好むのは一部の人だけで、一般にはニワトコの味は敬遠されがちです。
ニワトコ(ドイツ語でHolunder)はエルダーフラワーのことで、ヨーロッパでは花を風味付けに使ったり、シロップを作ったりしますね。あとドイツでは花をフリットにして食べたりもします。エルダーベリーもドイツでは、ジャムやゼリー、ジュースとして使います(生食は向いていないそうです)。
日本でも輸入物のエルダーフラワーコーディアルなどが手に入りますね。それほど大きく好みが分かれる味という気はしませんが、どうなのでしょう。
110. バターミルクの冷製スープ
黒パンをおろしてフライパンで軽く炒め、大さじ4杯のパンにつき大さじ2杯の砂糖を入れ、かき混ぜながらさらに炒めます。そこにクリームか牛乳を少々混ぜたバターミルクを注ぎ入れ、盛り付ける前にラスクか白パンを砕いて入れ、最後に冷ました黒パンをまぶします。
この冷製スープは大変美味でさっぱりとします。
バターミルクはドイツでは普通に市販されていて、フルーツジュースを混ぜて飲みやすくしたものなどもあります。脂肪分が少ないので、クリームや牛乳を少し混ぜてコクを出すのでしょうか。
111. 泡立てたクリーム
甘く濃いクリームを、冷たい場所で泡立て器でふんわり泡立てます。砂糖とバニラを加え、盛り付けてラスクとおろした黒パンを添えます。
スープというよりはクリームを食べるって感じですが、あまり角は立てない程度に泡立てればいいのか、その辺は詳しく書いてありません。おろした黒パンは振りかけて食べるということなのでしょう。
112. 泡立てた酸乳
牛乳は濃くとりますが、クリームはまだかなり滑らかでも構いません。先ほどと同じように酸乳で泡立て、砂糖とシナモンを加えてかき混ぜます。
短いレシピですがイマイチピンときませんでした。特に乳製品に詳しくない日本人からすると余計に分かりにくいです。
牛乳を濃く取る ー 家庭に樽などに入ったミルクがあるとして、上にクリームが浮いているとすると、そのクリームも十分に含ませてすくい取る、という意味でしょうか。そうするとクリームはまだ「滑らか」ではあるかなと。
酸乳というのは、生乳に乳酸菌を加えて発酵させたもので、これが段々と固まっていき、チーズの元となります。
これもふんわり泡立つのかどうか分かりませんが、よく混ぜ合わせる、くらいの意味合いかもしれません(108番も)。
酸乳はドイツ語でDickmilch(Sauermilch)と呼び、スーパーの乳製品コーナーで購入できます。ミューズリーに混ぜたりして食べます。大手メーカーのものはこちら。
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では、これでやっとスープ終わりました。次回からは「C章:野菜とジャガイモの料理」に入ります。
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