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WASH OUT!! TALK LIVE vol.6

WASH OUT!! PROJECTではこのコロナによって影響を受け、困難な状況にある人々の問題解決のために寄付を募っています。
その寄付先の状況やコロナによる影響を幅広く知っていただくために、毎回現場で活動されている専門家、活動家をお呼びして「WASH OUT!! TALK LIVE」を開催しています!
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6回目となる今回は日本の貧困家庭の問題をテーマに、主に貧困家庭や中退、不登校となってしまった子供たちの教育支援に取り組むキズキグループ代表の安田祐輔さんにお越しいただき、お話を伺いました。

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今回も、TALK LIVEの中で印象に残ったお話を紹介していこうと思います。

1)新型コロナの影響は支援の現場に
まず、キズキグループさんの活動の中で新型コロナウィルスの影響を受けている部分からお話をいただきました。
キズキグループさんは自治体との協働の中で、困窮している家庭の教育支援として主に2つのタイプの支援を届けています。
・居場所型:公民館などの場所に子供を集めて教育支援を行う形
・家庭訪問型:家庭に直接伺って支援を行う形

新型コロナの影響により、公民館の閉鎖や、家庭訪問の自粛、また年度末をまたいだことによる行政の混乱もあったということで、どちらの型の支援も影響を受け、上手く進められていないというお話でした。

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(画像引用元: https://news.livedoor.com/article/detail/16956714/)
この中で特に、家庭訪問型の支援が必要とされている家庭の方が、一般的には教育に対しての意欲も低く、困窮の度合いも深刻なことが多いため、支援として重要になってくるとのことでした。
この6月から家庭訪問が一部解禁され始めたことで、新型コロナによる貧困家庭への影響というのが見え始めましたが、家庭の収入源の違いなどからその影響度合いというものは大きく異なり、全体的に深刻になっているとは言えないとのことでした。
ただし、社会的なセーフティネットが使えない自営業のご家庭などへの影響はやはり深刻で、子供の教育という部分には全く意識が向かないような、本当に支援を必要としている現場になっているというお話もありました。

2)貧困家庭の問題は何層にも重なっている
このような貧困家庭の問題は、収入減や職業といった経済的な問題は1つの要因ではあるものの、それ以外のも数多くの要因が何層にも重なり合って個別化、深刻化しているというお話も頂きました。
例えば、はじめの要因は経済的な貧困であり、手狭な住環境で暮らさざるを得ないと、その影響で心理的な余裕がなくなってしまい、子供に対して虐待を行ってしまったり、精神疾患になったりするという2次的な問題が発生してくるということでした。
そのため、経済的な問題を解決するだけでなく、精神疾患のケアや子供の居場所づくり、近所コミュニティの形成など様々な複合的な視点からのアプローチが必要ということでした。

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(画像引用元: http://kobajun.chips.jp/?p=28051)
この中でも、特に今回のTALK LIVEでメインテーマとしてあがったのが、貧困家庭の精神疾患の問題です。
統計データとして、困窮世帯での精神疾患患者の割合は一般的な世帯よりも多く、この貧困×精神疾患という問題は大きな割合を占める問題になってきています。
親がうつ病や統合失調症などの精神疾患になってしまうことにより、子供にとって家庭が十分な心理的安全を確保できる場所ではなくなってしまいます。
また、精神疾患による収入減の可能性も大いにあり、貧困の深刻化、子供の教育に対する無関心などが重なり、子供自身も自己肯定感を育むことが出来ず、結果として子供自身もうつ病になってしまったり、発達障害を抱えたり、少年犯罪に手を染めたりといった様々な波及効果が出てきてしまっています。

今回明らかになったことは、貧困家庭の抱える経済的、社会的、心理的な複合的な問題に、精神疾患という様々な症状やレベルを持った要素が加わることで、さらに広がりを持った、そして個別化の進んだ問題が発生してしまっているということです。
これらの問題に対して、問題の分解と整理、そして最も大きな問題はどこにあるのかという特定をしながら、あらゆる方面のセクターが協力して解決に乗り出さなければならない問題であると再認識させられました。

3)相対的な貧困が映し出す残酷さ
普段、東南アジアや新興国での活動が多い菅谷から、途上国のスラム街のような貧困と日本の貧困にはどのような違いや特徴があるのかという投げ込みをさせていただきました。
その投げ込みに対して安田さんは

「確かに*絶対的貧困という意味では、途上国の貧困の方が深刻だと思います。ただ、日本の貧困は*相対的貧困であり、この相対的な格差が生み出す問題は残酷だと思います。」
*絶対的貧困:1日〇ドル以下の生活のような基準を用いた貧困の定義
*相対的貧困:国内の中では貧困であるというような周囲との比較に基づいた貧困の定義

と語ってくださいました。

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確かにスラム街の人々に比べれば収入としては豊かかもしれません。しかし、日本は一見格差のないような環境の中で、見えない壁のような格差が実際には存在し、それが大人になっていく中でまじまじと実感させられるという残酷さがあることを感じました。
例えば、日本の小学校では義務教育課程の中で、将来有名な大学に行くような裕福な家庭の子供も、貧困家庭で何とか義務教育には通わせられる子も一緒の教室で学びます。
そこでは家庭の貧富の差など感じることはなく、普通に友達になったり、夢を語り合ったりすると思います。
しかしそれが高学年、中学と学年が上がっていくにつれ、習い事や塾といった格差が生まれはじめ、段々と貧困家庭の子は裕福な家庭の子と同じ夢を見ることは出来ないんだということに気付かされてしまいます。

一方で、新興国のスラム街であれば、現在の貧困層と富裕層の間にははっきりとした壁が存在するため、あちらにはいけないということを何となく幼少期から理解して過ごすことが出来ます。

新興国の貧困と日本の貧困、どちらが深刻かと言えば新興国だと思います。しかし、その見えない壁の残酷さという意味では、日本の貧困も決して無視できない確かにそこにある問題として認識しなければいけないということに改めて気づかされた内容でした。

今回のTALK LIVEの紹介は以上になります。
個人的には最後の部分、見えない壁の残酷さという部分が非常に心に残りました。中学までを公立中学で過ごしたからこそ、同級生の中でも思い浮かぶ顔があり、改めて大学、大学院を出て、こうして何不自由なく仕事が出来ている自分が社会に対して果たすべき責任は大きいというNoblesse Obligeの精神を心に刻んだTALK LIVEとなりました。

個人としても、very50としても最も身近な問題としての日本の貧困に意識を向けていかなければいけないなと感じました。

安田さん、本当にありがとうございました。


文責:杉谷

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