女と暮らしてる女の恋愛遍歴 〜中学校時代〜

女性への恋心を自覚出来なかった小学校時代、まだまだ少女漫画の恋愛に憧れるだけのお子様だった。中学に入っても「恋に恋する」ことには変わりはないが、ちゃんと女性への気持ちを「恋愛感情」だと認識するくらいには成長する。今回はそんなお話。


合唱部に入る

中学に入って何部に入るかは、学校生活をどう過ごすかを決めるとても大切な選択だ。私は小学校でやってた「合唱」かな〜とぼんやりと決めていたが、入学してすぐの部活動紹介でそれは決定的となる。

それぞれの部の部長さんが檀上で各部の紹介をする。真面目に説明しているだけの文化系の部活、勢いと面白さで勝負してる運動系の部活といろいろだ。私が注目していた合唱部は当時は女声合唱団、壇上には小柄ながらとても元気のある女性、K先輩が登場。「新入生全員、合唱部へ団体入部せよ!」と威勢の良い宣伝ぶりで、とても面白いスピーチをしていた。「こんな楽しそうな先輩がいるなら、きっと楽しい部活に違いない」と入部の決意を固める。


初めての「先輩・後輩」体験

期待して入った合唱部は当時かなりの大所帯で、女ばかりながら先輩にもいろんなタイプの人がいた。K先輩は超フレンドリーなタイプだったけど、他の3年生はやたら「先輩風」を吹かす人ばかり。入部してすぐに「先輩と接する時の礼儀作法」的講和を聞かされた。

「校内で会ったら必ずお辞儀して挨拶すること」「先輩には馴れ馴れしく接しないこと」などなど。なんか……怖いね、中学校。高校の部活ではこんな指導なかったから、中学校ならではの子供じみた上下関係なのかしら?私はこの形式的な付き合いが面倒で、そのうち校内で先輩がいそうな場所を避けて通ったり、いても気づかないふりしたりしてたわ。それでも怒られたりはしなかったけどね。


フレンドリーなK先輩は人気者

女声合唱は大抵3つのパートに分かれる。K先輩はソプラノ、私はアルトの所属で、真ん中にメゾソプラノを挟んでもっとも関係の薄い先輩・後輩関係となる。3年生だしパートは違うし、ほぼ口をきく機会はない。しかし部活動紹介の印象と、遠くから見てるだけでも分かる人柄の良さで、K先輩はいつしか憧れの人となっていた。

K先輩は部長をしているだけあって、歌も1番上手かった。後に東京の音大まで進んだとのことで、弱小合唱部にあっても、当時から1人だけ本気で歌を志してた。部活動で憧れの的になる要素である「部活動の実力」「人柄の良さ」「リーダーシップ」、その全てを持っていたK先輩は、他の1年生からも人気があった。

一度K先輩が不在の時に、1年生が目をつぶった状態で3年生の質問に挙手で答えるという、なんとも不可解なことが行われた。その質問の中に「K先輩のことが好きか(尊敬しているか)?」という質問があって、かなりの1年生が手を挙げたようだ。後で3年生が「あの子(K先輩)、後輩にかなり人気あるね〜」って言ってた。他も似たような質問で、1年生は挙手せざるを得ないような状況だったはずなのに、わざわざそんなことを言っていたのだから、ほぼ全員が挙手したのだろう。


ストーカー化していた私

私の教室の前の廊下の窓から、隣の校舎のK先輩のクラスの窓が良く見えた。いつしか、そこからチラッと見えるK先輩の姿を追うのが私の日課になる。いつも同じ人間が見てるのだから、K先輩のクラスでは「あの子、このクラスに好きな人がいるのね」って思われてたはず。今思えばストーカーのごとき行いだな。

女性を対象にそんなことをしている自分に「違和感はなかったのか」と問われそうだが……なかった。「本格的にお付き合いしたい」とか思ってたわけじゃないし、「アイドルを好きなファン心理」的な感覚だったのだと推測する。

碌に口をきくこともなくK先輩は部活を引退、そのまま卒業したらもう会うこともないだろう。それは困ると思った私は、さらにストーカー的方法で連絡手段の確保に乗り出す。同じクラスのHさんは、お姉さんがK先輩と同じクラス。Hさんを漫画3冊で買収して、お姉さん経由でK先輩の連絡先(住所)を聞き出してもらったのだ。……結構怖いことしてるね、私。K先輩が卒業してから、調べてもらった住所宛に手紙を送る。すると返事が来て、数回にわたって文通が行われることとなる。文通……今はもう廃れてしまった文化だわね。


文通の中身

私が初めに送った手紙には「部活でずっと憧れてたこと」「私は特にレズビアンといういわけではないこと」などを書いたと記憶している。「レズビアンではない」と書いたのは、当時の私の中のレズビアンのイメージが「セクシャル」な「不道徳」なものだったからだと推測。「そんないかがわしい、怪しい者じゃございませんぜ」と言いたかったのだろう。

そんな私の心配を他所に、「あ、ファンレターが来た!」くらいに思ってくれたらしいK先輩、いつもながらの超絶フレンドリーな返事が来た。私が「先輩のプロフィールを知りたい」と書けば、当時流行っていた「メッセージ帳」のリーフにプロフィール情報を書いて同封してくれた。

その他、将来の夢や通っていた高校の音楽科の話とかが書かれていたと記憶。当時人気のあった「TM NETWORK」が好きだったK先輩、夢は「ROCK STAR」だったらしい。高校の音楽科から東京の音大に行った後は、声楽家として活躍しているのだろうと推測するが……。


淡い恋の終焉

しかし……そのうち手紙のやり取りは自然消滅する。互いに異なった環境での生活、共有することもあまりない。返事をもらってからすぐにまた手紙を出しては、先輩の負担になると思って間を置くと、手紙を書くこと自体を忘れていたり。最後は、あまりにも間があきすぎてこちらから手紙を出すのが躊躇われたのと、文通活動への興味が薄れたことで文通は終わりを告げる。

あのまま細々とでも文通を続けてたら、今でも連絡をとることが出来たのだろうか?今ならSNSで簡単に連絡が取れるし、K先輩の演奏会を聴きに行ったりも出来たかもしれない。ネットで検索してみたこともあるが(またストーカーしてる)、良くあるタイプの名前で先輩らしき人を絞りきれなかった。いつかどこかでお会いできることを夢見て……。


次は初めて「お付き合い」と名のつく経験をした高校生時代のお話〜。待て、次号。

私の文章に少しでも「面白さ」「興味深さ」を感じていただけたら嬉しいです。