観光とAIの関係について(受け身として考えておかなければいけないこと)
2024年もインバウンドサミットに参加してきました。
その中で気にしていたセッションが「AIはインバウンドをどう変えるのか?」です。
THE GULIDの深津さんの発言要約ですが、「対話型AIの普及で、イヤホン型のウェアラブルが一般的になったら、予約とかウェブサイトへ行かないで済む」と話されていました。
この事象は全体の中でも最初の方に触れられただけで、その後突っ込まれなかったネタですが、さらっと流して良いレベルの話じゃないので、僭越ながら補足しておこうと思います。
Google I/O 2024より。
※Google I/Oは、Googleが毎年開催する開発者向けのカンファレンスです。このイベントでは、Googleの最新技術や製品の発表が行われ、特にAIやAndroid、Chrome、Google Cloudなどに関する新機能やアップデートが紹介されます。
まずは日本向けのPR動画。
PR動画では詳しいオペレーションがわかりませんが、Google I/O 2024のキーノートでその過程を説明しています。
英語ですが、翻訳機能を使ったり、画面の動きを見ているだけでもGeminiがどのような動きをしているかわかります。(関連箇所は5:34まで)
注目は、観光案内系のウェブサイトへ一度もアクセスしていないこと。
オンライン予約までGoogleのGeminiだけで完結する日もそう遠くないと考えられます。
Booking.comならすでに予約までできるAIサービスが実証実験として開始されています。(2024年9月現在)
ウェブサイトを経由しない衝撃とは
対話型AIは、Google Gemini、Microsoft Copilot、OpenAI ChatGPTが先行しており、おそらくこの3サービスがサービス提供国では利用標準になると考えられます。
現時点でこれらの対話型AIについて、スマートフォンレベルでのやり取りができるようになっていることから、ウェアラブル系端末との連携(連携しなくともスマートフォン単体でも使える前提だが)によって、AIに対する命令を音声で行うことが当たり前になることは確定しています。(すでに実現しているため)
その一つが「イヤホン」で、歩きながらでも、だれかと話しているかのようにAIとコンタクトできてしまいます。
ユーザーは、「めんどくさくない」ことを選択する傾向にあるため、現在普及の障害となっているようなことは、UXテクノロジーを活用して次第に解消していく傾向にあります。
ここでAIと話している情報は、もともとウェブサイトなどに掲載されているものが元となっているはずですが、この時点ではどのウェブサイトの情報を元にAIが話しているのかわかりません。
つまり元情報にアクセスしていないため、アクセス解析のAnalyticsには反映しないこととなります。
もしアクセス解析を通じてユーザーの行動を把握し、効果的なプロモーション戦略を立てている場合、ユーザーは直接AIと対話するため、ウェブサイトのアクセスデータが減少することになります。
アクセスデータからユーザーの興味や行動を把握する手段が限られ、プロモーションの精度が低下する可能性が考えられます。
同時に検索上位表示を狙って、順位を上げるための努力は徐々に無駄になる可能性があります。対話型AIにレコメンドされるため、ユーザーがウェブサイトを直接探索する機会が減少するからです。
つまりAIにいかにレコメンドしてもらえるか? が大切になってきます。
またGoogle検索から公式のサイトへ誘導して、写真を見て来訪動機を狙っている場合、対話型AIが情報アプローチの最初となった場合その写真は「見られない」ことになります。
観光系ウェブサイトでは、美しいイメージフォトを使って訪問者の興味を引くことがパターン化していますが、対話型AIが情報提供の主役になると、視覚的な魅力が薄れ、テキストベースの情報提供が中心となります。
雰囲気の良い庭やきれいな風景といった漠然とした情報だけでは、対話型AIが説明しきれず、会話の候補から漏れていくこととなります。
文化観光によるカテゴリ分けと明文化の重要性
Windows11は23H2のアップデートによってCopilotがOSに組み込まれました。この先CopilotはローカルPCでも稼働するようになり、パーソナライズ情報は手元で管理するようになっていくと考えられます。
その情報を元に、対話型AIがパーソナライズされたリコメンドを提供するためには、提供元の情報がしっかりとカテゴライズされていることと、明文化されていることが不可欠です。
具体的には、地域の歴史や文化に基づいた詳細な情報を、ユーザーが欲する興味を中心に整理し、対話型AIに学習させる必要があります。
各対話型AIサービスの学習プロセスはブラックボックスであるため、先行者が有利となることは非常に確率が高いと考えられます。
まとめ
実際には対話型AIが台頭するのはもう少し先になると思われますが、しかしポストスマートフォン、ポストサーチオペレーションとなる対話型AIの台頭は、観光プロモーションにも、予約販売にも、現地での滞在サポートにも大きな変革をもたらしてくることが予想されます。
ウェブサイトを経由しなくなる衝撃はまだ他にも考えられますが、少なくとも現在の感覚のまま、プロモーションのあり方は続かないと考えていたほうが良いでしょう。
かつてPCが普及してきた時代と似通っている部分がある反面、情報伝達ルートの変化と速度は段違いに大きく、早くなっていることを実感しないと行けない時代に入っています。
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