AIワークフローとノードUI―文系大学生と非クリエイティブ系中小零細企業担当者向けに、次世代に必要なITスキルの一部を紹介―
DXで効率化の流れが進んでいますが、その中にはAIのワークフローが含まれます。ChatGPTのイメージが強すぎるため、チャット形式でAIを利用することが一般的ですが、これがワークフローにどのように導入されるかのイメージがつきにくいかもしれません。
またググる代わりにチャットGPTという使い方だと、ググってた時とそんなに変わらない、自動化できていないじゃないかと感じてないでしょうか?
映像編集・3D・ゲーム業界では比較的一般的なUIに「ノードUI」というものがあります。
一般事務では馴染みが薄いUIですが、AIワークフローが取り込まれてきた時、一般事務でもこのUIは普及する可能性が高くなっています。
そのノードUIについて、少し触れておこうと思います。
AI自動化の真価はノードUI
ノードUIとは?
近年、動画編集ソフトのDaVinci Resolveや3DモデリングソフトのBlenderにも導入されている、ワークフローを線で繋ぎ、処理を視覚化できるUIです。例えばBlenderではGeometry Nodesで映像を作る時にも用いられます。
上図画面下方に紐のようなもので継いでいるエリアがありますが、これがノードです。
従来はテキストベースのプログラミングコードで表現していた部分です。
処理すべきデータをブロックとして表現し、それらを繋ぐことで、全体の流れを視覚的に把握しやすくするのが特徴です。一般的に、処理は左から右に流れ、インプットからアウトプットまで、データがどのように加工されるかを示しています。つまり、処理が重い部分がどこなのか、どのくらいのステップを踏んで出力されるのかが一覧できます。
このUIは2000年代のゲーム開発において、UnityやUnreal Engineなどのツールに搭載されたことからも察せられるように、ゲーム開発者にとって非常に重要なツールとなりました。これにより、プログラミングの知識が少ないデザイナーやアーティストでも、視覚的にゲームロジックを構築できるようになりました。
ノードUIの普及と進化
冒頭で触れたアプリのように、ノードUIはゲーム開発以外の分野にも拡大しています。DaVinci ResolveのエフェクトツールにもノードUIが採用され、複雑なエフェクト処理やアニメーションの作成が容易になりました。
またデータサイエンスの分野でも、分析などにノードベースのインターフェースが導入され、データ処理や機械学習モデルの構築が視覚的に行えるようになりました。
画像生成AIのStableDiffusion ComfyUIは、ノードUIのみで生成処理を行います。
このComfyUIを組み込んだKrita AI Diffusionは、イラスト制作やPhotoEditの手助けを行う新しいワークフローが展開されています。
Adobe製品にも独自の生成AI Firefly が組み込まれていますが、Krita AI Diffusionの利点は、独自で学習させたAIモデルを組み込めること。
これによって、社内イラストレーター属人化を解消できるワークフローを組み立てることが考えられます。
教育とトレーニング
ノードUIは教育分野でも利用され、プログラミング教育の一環として視覚的なプログラミング環境が提供されています。
例えば、ScratchやBlocklyなどのツールが子供たちにプログラミングの基本を教えるために使われています。
ノードUIの未来
ここまでは2024年前半にComfyUIが盛り上がるまでの数年間の動きをまとめたものです。
AIに関して言えば、2010年頃と比較して5年分くらいの環境整備が約半年で整ったイメージです。
AIとノードUIの融合
AI技術が進化することで、ノードUIもさらに賢くなり、ユーザーの意図を理解して自動的に最適なノードを提案する機能が追加されるでしょう。これにより、さらに効率的なワークフローの構築が可能になります。
その一端がすでにGitHubで公開されています。
更に踏み込んだ理論がこちら。
連続性を担保した自己成長するプログラミング理論。
さらっと書かれていますが、内容は大変なもの。
Personal AI Assistantの可能性が見えてきましたし、従来のゲームではシナリオを用意しなければならなかったものが、あるアクション(ゲーム世界に影響を与える大きな事象など)をいくつか設定するだけで、勝手にシナリオが進むようなMMORPGも夢でなくなってきました。
これは新しいエコシステムができる可能性にまで言及できるもの。
拡張現実(AR)と仮想現実(VR)への応用
消えているように見えている「メタバース」ですが、2025年をマイルストーンに市場が急速に伸びる予想をされています。
その原因の一つがXREALなどのスマートグラスデバイス。
Excelなどを使っていると、もっと横幅が広いモニターが欲しい状況になることがあります。こうしたグラス型デバイスはその問題を解決します。
その際、VBAを使って業務を自動化していた場合、ノード型UIで空間上に展開したほうが扱いやすくなります。つまり、仮想空間内で視覚的にプログラムを構築できるようになるでしょう。これにより、より没入感のあるインターフェースが実現します。
この流れは、プロトタイプであったApple Visionが作り出した「空間コンピューティング」の概念です。大型で重かったApple Visionですが、小型・軽量化された姿がスマートグラスに受け継がれています。
プログラミングとは段取り力
ここまでノードUIと近未来(おそらく2026年頃にはかなり普及していると思われる)空間コンピューティングについて書いてきました。
必要なスキルの話
ノードUIは必要な処理をブロックとして考えそれを繋ぐ考え方とは、つまり「段取り力」。わかりやすいイメージは「ピタゴラスイッチ」。
装置全体がプログラム全体の姿で、ビー玉がデータの流れ。仕掛けの部分が処理ブロック。処理ブロックの動作が無事に終わったら次の装置へ受け渡せれば成功。失敗したらエラーという考え方はプログラミングそのものです。
ピタゴラスイッチのDVD映像を見るだけでもイメージはつきやすいかなと思います。
もうちょっと実践的な考え方の方が良いという人にはこちら。
考え方はピタゴラ装置と同じ。それが業務に対して実践的になっただけで、準備するものとページの組み立て方はピタゴラ装置のアルゴリズムそのもので、装置にはプレゼンを聞く人が入ります。(エラーは顔色を伺うしか無い)
またプレゼンを設定する場合も、少なくともゴールが見えていなければ全体を作れません。
マーケティング職は影響大
特にマーケティングに関しては大きくフローが変わります。
データドリブンをはじめ、市場の対象が日本人以外になる場合も多々考えられます。その際、過去の経験という謎の慣習は一切役に立ちません。
(特に観光分野はインバウンドの関係で直接影響を受けると考えられる)
なんせ文化が違う人達が対象になる可能性が高いので、少なくともデジタルマーケティングは必須となります。
マーケティングで最も必要となるのは、データ分析と可視化です。
たとえば、マーケティングキャンペーンのデータフローを視覚化し、リアルタイムでパフォーマンスを追跡するといったものも、自社にあわせたフローを自動で組み立て、細部の調整を行うだけで実現することも考えられます。
そしてデジタルマーケティングではおなじみのマーケティングオートメーションツール(HubSpotやMarketoなど)の活用。ワークフローを設計し、見込み客管理(リードナーチャリング)やメールキャンペーンを自動化する仕組みですが、AI導入でメールのセールス文まで自動生成し、開封率やランディングへの誘導率なども合わせて分析・A/Bテストなどを行ってくれるようになるのは時間の問題でしょう。
このときも、ノードUIはフロー設定に必要なものになります。
まとめ
ノードUIは、AIワークフローの自動化と効率化において重要な役割を果たします。視覚的なインターフェースを活用することで、複雑な業務フローを直感的に管理でき、少人数のチームでも高いパフォーマンスを発揮できます。特にマーケティングや経理、経営企画の分野での活用が期待され、今後ますます普及していくでしょう。ノードUIを取り入れることで、企業全体の生産性向上と戦略的な意思決定が実現します。
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