自称発達障害が増えている件(精神科医からの警告)
本日は、「自称発達障害が増えている件(精神科医からの警告)」というテーマでお話しします。
なかなか刺激的なタイトルですけど、何を警告すんのや?という感じがしますけど。
発達障害と診断される人が増えてきている、自分はADHDだよ、遅刻しちゃうんだよね、という形でファッション感覚で言う人が増えていると言われています。
言われたりしてますけど、これって問題ですか、どうしてこういう現象が起きているんですか、そこら辺を精神科医目線でお話しします。
実際、自称が増えてるだけで発達障害自体は増えてないんじゃないかみたいな意見もあるんですけど、そんなことはなくて、やはり診断数は増えているし、医者が診断する人達、医者で発達障害を実際に診察した人が増えてるし、通級を利用する親御さんたちも増えてるという感じです。
そのコアな層が増えてるので、その周りの人達で、困ってるよ、だけどまだ通院まで至ってない人達が増えてるというか、声を上げやすくなってるというのはあるだろうなと思います。
これは社会現象というか、あるんでしょう。
というのは思いますね。
「自称何々である」みたいなものが増えるのも、そもそも悪いのかというと、悪くないと思います。
コアが増えてるんだから、コア層が増えてるから周りも増えるのは当然なわけで。
コア層が増えてるというよりは、これまで診断できなかった人達が診断できるようになってきてるということなので。
それに伴い、今まで困っていたんだけど声を上げられなかった人が上げられるような形なのかなという風に思います。
他の動画でも話していたんですけど、ちょっとこの逆向きの方がわかりやすかったかもしれないですけども、右方向に行けば行くほど発達障害(AS)傾向が強いとした場合、基本的には発達障害というのは一方性のスペクトラムなんだろうという風に考えられているんです。
社会の要求、社会が一人前として求める力、頭脳労働やマルチタスクなどで求められるレベルが上がってきてるので、それに合わせてグレーゾーンと呼ばれる人達が増えてるよ、と。
あとは育て方、EQが育ちにくい、兄弟が少ない、少子高齢化しているということ、高齢の両親から生まれた時や低体重の子ども達というのが自閉症のリスクが上がるとかも、そういう研究データもあったりするので、何となく人数として増えてもおかしくないかなという気はします。
AS傾向がある人達が全体的に増えてる。
一方で社会のニーズ、求めるレベルが上がってきてるので、こういう双方の要素から増えてるという、あとスクリーニング能力が上がってるという、色々な理由から増えているのかなと思います。
皆さんが思う疑問に対して答えていこうかなと思います。
◼︎過剰診断?
まず、そもそも過剰診断じゃないですか、という問題ですね。
これはね、ちょっとムズいんです。
過剰かどうかわかんないですけど、困ってる人たちが増えているので、それに対して発達障害ないし発達障害傾向という風に診断する先生は増えてるんだろうなとは思います。
過去にはどういう風に診断してたのかというと、人格障害、難治性のうつ、そういう形で診断されてたんだけれども、いや、そうじゃなくて、発達傾向があるからなんだろうなということがわかってきている。
昔は、境界性パーソナリティ症、自己愛性パーソナリティー症、シゾイドパーソナリティー症、そういう風に診断された人達が発達障害という風に診断が変更されている、なされてるケースもとても多いなと思います。
人間の見方が変わってきてるというのがあります。
人間とはこういうものであるというモデルが変わってきてる。
精神医学も進化していって見方が変わってきてるので、そういう要素かなという気がします。
それが過剰か過剰じゃないかというのはちょっとわからないですが、そういう背景かなと思います。
◼︎疾病利得に甘えてしまう
あと、病気を自称することで甘えてしまうのではないか。
病気だと自称することで他人からの追及は減るかもしれない。
お前もっと頑張れよ、というのは減るかもしれないけれど、そういう風に言われないが故に甘えてしまうのではないかとか、自分のことを発達障害と決めつけることによって思い込みの力が弱くなるので、自分はやれるんだという思い込みの力が弱くなってしまうので、自らの可能性や能力を狭めるんじゃないか、将来を狭めてしまうんじゃないかという風に思う人達がいるみたいですね。
これは一部当たってると思います、はい。
そうだろうなと。
甘えてしまったり、ラベリングによって自分の可能性を抑えてしまう可能性は全然あると思います。
ただ、じゃあどちらがいいかということですよね。
診断をしていくことで得られる総合的な利益と、社会全体の利益と、個人がわかることの利益とわからないことの利益はどれがいいのか、と言った時に、全体としてはわかる方がいいよねというのが色々な研究でわかっていますけれども、でもミクロに見ていけば逆にわからない方が良かったというパターンも絶対あるだろうなと思います。
ただ可視化しなければ物事の問題は解決できていかないので、可視化した上で、どういう風に人間の生き方を考えたらいいのか、社会はどうあるべきかを考えていくのか、イノベーションをどう起こしていくのかということが大事なので、あまり昔は良かったなという話をしても仕方ないのかなと僕は思います。
◼︎資源の食い合い、仲間内の対立
あと、資源の食い合いですよね。
より重い人に限られる福祉や医療の医療資源を提供すべきなのに、軽い人が入ってきたせいで資源の食い合いになるんじゃないか、軽い人に取られてしまうんじゃないかという話ですけど。
これは、仲間内の対立と書いてますけど、よくあるんです。
例えばPTSDの問題でも、トラウマと言うけど、あなたぐらいの病気の場合、トラウマと言うべきでない、あなたぐらいの被害だったらトラウマと言うべきじゃない、あなたぐらいの性被害や虐待で、それは虐待と呼んではいけない、被害と呼んではいけない、仲間内の対立はたくさんあったりするんですけど、これは良くない対立だなと思っています。
本来だったら手を取り合うべきところが対立し合うということは、この分野ではよくあるんですけど、できるだけ軽い人も軽いんだけど、共感し合って治療してけばいいのに、対立し合うということはよくあるので、気をつけなければいけない。
これは人間のある種のバイアスだったりします。妙に嫉妬し合ってしまう、あなたの方がマシでしょうと嫉妬したりするとか、そういうのが人間の本能であるので、この嫉妬という概念、妬ましい、ズルいという気持ちをどうコントロールするのかというのは、臨床上とても大事です。
悔しいとか、究極、嫉妬心というのは自分の身を滅ぼしてでも相手に得をさせたくない、これが嫉妬心の本性なので、この嫉妬心、嫉妬というバイアスをコントロールしつつ、うまく手を取り合うのが大事かなと思います。
◼︎偏見の増長?
あと、偏見が増長するのではないか、何でもかんでも言ってくると、自称発達障害の人がイメージを悪化させるんじゃないか、と言うのもあるんですけど、これもちょっと違って、世間の人は、困ってる人や病気の人達は苦しんでいるから、弱くて性格もいい人達だと思ってることが多いんです。
性格が良くて、優しくて、でも弱い人達なんだというイメージを持ってることが多いんですけど、そんなことなくて、そもそも嫌われやすい自己中な人達はとても多いです、患者さん達というのは。
非常に攻撃的だったり意地悪だったりすることが多くて、そういうステレオタイプなイメージが実はあるんですけど、僕も医療者になる前はそういうイメージがあったんですけど、実際はそんなことなくて、普通の人と同じで性格良い人もいれば悪い人もいるし、どちらかというと悪い人の方が多いですね。それは困ってるし、傷ついている人なので、悪くなってしまう。
余裕がないので自己中のようになってしまうのは仕方ないんです。
困ってる人達なので、ちょっと感じ悪く見えるというのはあるのかなと思います。
そこもグッと抑えるというのはとても大事です、臨床上のテクニックの話ですけど。
■本当に困ってる?
本当に困ってるんですかというのもあるんだけど、実際には茶化して言ったりふざけて言ったりしている時もあるけど、本当に困ってる人たちがとても多いなというのが僕の臨床的な感覚です。
例えば友達が離婚するかも、とふざけて言ったり、深刻そうに言ったりするんですけど、多くの人は、いや、またまた、と言ってしまうんです。
よくあるって、大丈夫だと言うんだけど、やはり後日聞いてみると本当に離婚してしまったということがよくあると思うんです。
これととても似てます。
本当に困ってることが多いので。
そういうテーマですね、発達障害系のことというのは。
まだまだそういう感じ。
もうちょっと普及してくれば、俺って本当は貧乏でさぁ、とそういう感じで、ちょっとお金がなくてさぁ、と言いやすいような形になるのかもしれないけれど、まだまだ、ブームになりつつあるとは言えども、まだ一般化されてない言葉なので、本当に困っている人たちが使ってるんじゃないかなという気がします。
◼︎ブームを終わらせないために
あとはブームを終わらせないために、やはりコア層だけじゃなくてカジュアル層も取り込んでいかなければいけないんです、わかりやすく言えば。
本当にコアな人達、苦しんだ人たちしか言っちゃいけません、医療を受けちゃいけません、と言うと、やはり発達障害という言葉が広がらなくて留まってしまって、その結果、届くべき人に届かなくなるかもしれないので、やはりブームを終わらせないということが大事かなと思うので、自称発達障害が増えてるからダメだとか、そういうことはしなくていいと思います。
彼らに対して怒りを感じてしまうというのが人間の持ってる本能というか、直感的にはそれが正しいんです。
妙に嫉妬したり、色々思うんだけれども、そこの自分の直感、本能、そういうものを抑えて、バイアスを抑えて、やはり向き合うというのが大事かなと思います。
社会はどうあるべきかというモデルを、同じ大きさの同じものを平行移動させるのではなくて、より大きくしていく、人間理解、社会理解を広げていくという、人類全体で理解を深めていくというのが大事だと僕は思ってるんです。
矛盾を内包する次のモデルというものを生み出していく必要があると言うことです。前に宮台さんと話していて、宮台真司さんに教わったんですけど、やはりマルクスやフロイト以降、人文系の学者で、本当に新しいモデルや世界を提示している人がいるのかということを宮台さんはおっしゃっていて、確かにそうなんだろうなと思いました。
新しいモデル、新しい世界観というのが、 、次の世代、次の次かわからないですけど、いつか生まれるんだと思います。
大天才が生まれて作ってくれるんだと思います。
僕らは宇宙の真実をまだ知らないし、人間の認知能力ではたぶん宇宙の真実を知らないまま人類というのは過ごしていくし、滅亡を迎えるんだと思いますけど、それでも少しでも人類は知っていることを増やしていきたいという欲望があるわけです。
それに合わせたモデルチェンジをしていくので、この問題というのも新しいモデルを内包していくことになる、この矛盾を内包していくことになるんだろうなとは思っているという感じです。
それが僕らが生きているうちに現れるのか、そうじゃないのかわからないですけれども、そういうことなんだろうなと思っております。
ということで、今回は自称発達障害増えてる件、というテーマでお話ししました。️
◼︎本日の宿題
本日の宿題は、難しいんですけど、人間が元々持っているバイアス、新しいことを受け入れたくない時にあるバイアスだったり、その背景にある心理葛藤を皆さんの中で言語化してもらったり、自分はこういうことを感じました、別のテーマだけどこういうことを感じたことがあります、ということを伝えてもらうといいかなと思います。
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