見出し画像

Wasei Salon透明化プロジェクト No.5 平山高敏

Wasei Salonメンバーの「好きなもの」や「大切にしていること」から、その人のパーソナリティに迫る『透明化プロジェクト』の第6弾

今回は『ことりっぷ』の元Webプロデューサーで、現在はビール会社でデジタルマーケティングを担当している平山高敏さんの登場です!

人の気持ちが理解できなかった幼少時代の話にはじまり、〝本当の自分を追い求めない〟という生き方や、自分が淀まないために書いている文章のことなど、盛りだくさんの内容となりました。

聞き手は当プロジェクトの発起人である小林やばこ、写真は土田凌、記事の執筆・編集は阿部光平でお届けします!

なお、透明化プロジェクトの概要や立ち上げの経緯は、「透明化プロジェクトを始めます。」から、他のメンバーの記事は以下のリンクからご覧いただけますので、併せてご覧ください!

Wasei Salon透明化プロジェクト No.1 長田涼
Wasei Salon透明化プロジェクト No.2 金井塚悠生
Wasei Salon透明化プロジェクト No.3 竹田匡宏
Wasei Salon透明化プロジェクト No.4 阿部光平


ひとりで頑張っているつもりだった学生時代

やばこ
今回は平山さんが思い入れのある場所として、駒沢公園で撮影をさせてもらったんですけど、学生の頃は陸上部だったんですね。

平山
そうそう。小学校の頃は、少年野球をやってて、足が速かったからずっと一番バッターだったんですよ。だけど、小6のときにチームプレイが嫌になっちゃって。

やばこ
チームプレイが嫌に? 何があったんですか?

平山
試合に負けてチームのみんなが泣いてたんだけど、僕はその試合で3安打だったので喜んでいたんです。

やばこ
個人成績は良かったから。

平山
そう。そのときに、「なんでみんな泣いてるんだろう?」って思っちゃって。それで、自分はチームプレイには向いてないんだなと思い、個人で頑張ろうってことで陸上を始めたんです。ほら、陸上って単純で、0.1秒でも人より速ければ勝ちっていう世界だから。

やばこ
小学生でチームプレイは合わないって、見限ったんですか? 決断がめっちゃ早いですね(笑)。

平山
そうなんですよ(笑)。みんながなんで泣いてるのか本当にわからなくて、冷めちゃったんです。だけど、陸上を始めてからも性格的にはあまり変わってなくて。

やばこ
どういうことですか?

平山
陸上の大会ってチームに何十人いても、出場できる人数が限られているので、必然的に応援される側と応援する側に分かれるんですよ。僕は短距離をやってて、学校では一番速いエースだったので、ずっと応援される側だったんです。だから、応援する側にシンパシーを感じられないというか、「出られなくて、かわいそうだな」って感じで思ってて。

平山
3年生のときの都大会の決勝で入賞して、関東大会に出たんです。結局、予選で負けちゃったんですけど、そのときのリレーは学校の歴代最高記録を更新して、未だに破られてないんですよ。
それで僕はけっこう満足してたんですけど、出場枠に選ばれなかった部員で応援団長と呼ばれてた人が泣いてたんです。なんでだろうと思ってたら、「俺の応援が足りなくてお前らをインターハイに行かせられなかった…」って言われて。その言葉で、「今までの自分は間違えてたのかもな」って思うようになったんです。

やばこ
あぁ。応援する側が、どんな気持ちでいたのかを初めて知ったというか。

平山
そう。所詮は人なので、そんなにガラッとは変われないんですけど、そのときの体験はすごく大きくて。ずっとひとりでやってきた気でいたけど、その横にはいつも誰かがいてくれたんだなと思うようになったんですよね。

やばこ
なるほど。

平山
そこからは陸上も辞めて、完全に遊ぶ方の人間になりました。飲みサークルに入って。

やばこ
(笑)。なんで、そこから遊ぶ方向に行くんですか! しかも飲みサーって(笑)。

平山
疲れちゃったのかな、ひとりで頑張るのが(笑)。

やばこ
振れ幅がすごい(笑)。

平山
能力や知識や経験が人よりも秀でていると、それでマウントを取れちゃうことってあるじゃないですか。相手は違うことで頑張ったりしてるのに、そこに目を向けず、自分の領域に話を持ってきてマウントを取ってしまうみたいな。そういうことを、僕はやってしまいがちな人間だったんです。周りにもて囃されてたのもあって。
だけど、関東大会での経験で、そんなことをしても良いことなんてないと痛感したので、まったくそういうのがない世界に行ってみたいなと思ったんです。そしたら、たまたま目の前に飲みサーがあって(笑)。

やばこ
めっちゃ、それっぽいこと言ってるじゃないですか(笑)。

平山
足が速いとか、肩書きがどうだとか、そういうのはまったく関係ない世界なんですよ、飲みサーは。とにかくその場を面白くできるかどうかというフィールドで、僕はめちゃくちゃスベり倒してましたね(笑)。

平山
それでもやっぱり、ひとりでやりたかったり、マウントしがちな性質が完全になくなったわけではなくて、社会人になっても上司なんかと揉めるようなこともありました。それまで自分がひとりで色々と背負いながら頑張ってきたという自負があったので。

やばこ
はい、はい。

平山
それによって、下の子との関係もギクシャクしちゃったりもして。高校のときに学んだはずなのに、また同じことやってしまったと思うこともありましたね。

阿部
思い切って、そっちに振り切ってしまおうっていう気持ちはないんですか? 「どこまでも自分ひとりでいこう」って方向に。

平山
それはないかなぁ。なぜかというと、自分自身にやりたいことがあんまりないんですよ。何か中心となる軸を持って生きたいって人もいっぱいいると思うんですけど、僕はそういう気持ちがないんです。だけど、僕みたいなタイプの人は、けっこういるんじゃないかなとも思ってて。

阿部
あー。やりたいことがなくても、別にいいじゃんって人が。

平山
そうそう。僕は基本的に、揺れている中で生きてるんですよ。だから、会う人や所属するコミュニティによって、いろんな顔、いろんな面がある。それは、ひとつ間違えると暗い方向に行ってしまう可能性もあるってことなんですけど、そういう危うさの上に立っているということだけは忘れたくないし、常にそういう立場で喋っていたいんです。

阿部
自分は不確かな存在であるってことですかね。

平山
ある一面だけが自分ではないって感じですかね。だから、Twitterとかでも、あまり言葉をきつく言わないように、そこだけは守っています。強い言葉を使えばマウントをとることもできるかもしれないけど、強い言葉には強い言葉が返ってくるじゃないですか。それを受けるだけの体力は僕にはないし。周りで傷ついてる人も少なからずいるので。
誰も傷つけないように生きるなんて幻想に過ぎないんですけど、それでも僕はできる限り傷つけるようなことはしたくないなって。そのために、人との距離感に応じて自分を使い分けるようにしています。前職のときに、後輩が離れちゃった事件があって、やっぱり相手を傷つけるような人付き合いはダメだと痛感したので。

様々な顔を持つことによる生きやすさ

やばこ
透明化プロジェクトでは、みんなに「好きなもの」を紹介してもらってるんですけど、平山さんが持ってきてくれたのは…

平山
mushimegane books.というところが作っている器と、村上春樹の『カンガルー日和』ですね。いろいろと考えたんですけど、あまりないんですよね。大切にしてるものって。この本も、何も言ってない、ただの短編集なんですけど。

やばこ
何も言ってない短編集(笑)。

平山
そう。だけどそこが面白いんですよね。「こういう風にいたいな」って思うので、たまに読み返すんです。

やばこ
「こういう風にいたい」というのは?

平山
何て言ったらいいんだろうなぁ、「わかった気になれない」というか。下らないことをちゃんと下らなく書くとか、それをそのまま受け入れられるとか、そのくらいの自由度は持っておきたいなって思うときに、この本を開くんです。
感動するとかは一切ないんですけど、ただ書きたくて書いたんだろうなって気がするんですよね、この本は。だから、読んでてほっとするんです。

やばこ
わかった気にならないための本…ですか。

平山
なんでもかんでもわかった気になりたくないんです。すべてに答えがあるわけじゃないと思っているので。

やばこ
あぁ、なるほど。

平山
例えば、この本には、ある晴れた日に100%の女の子と出会って、彼女はまだ切手が貼られてない封筒を持っていて、いろいろと考えてるうちに人ごみの中へ消えてしまったみたいな短編が書かれているんですよね。時間にすればわずか1、2分の出来事について、20ページくらいかけて語るだけみたいな(笑)。そして、最後は「どうやって話しかければいいんだろう」って終わるんです。それが面白いなと思って。

やばこ
答えのなさが。

平山
そうそう。強い言葉で書かれたものも読むんですけど、結局はこれに戻るんですよね。だから、自分の原点は、この本なのかなーって。

やばこ
読むたびに新しい発見みたいなのはあるんですか?

平山
全然ないです(笑)。ルーティーンみたいな感じで、年に1回くらい読む本。

やばこ
自分から強すぎる言葉が出そうになったり、なりたくない自分になりそうになったときとかに?

平山
そうです、そうです。そういうときに、自分を戻すために読みますね。本を読んでると、口調とか文体とかが移ってくることがあるじゃないですか。強い言葉を摂取しすぎると、自分の言葉もそうなっちゃうので、定期的にこの本を読んで適当な自分を取り戻すみたいな感じですね(笑)。

やばこ
先ほど、「やりたいことはない」っておっしゃってましたけど、なりたいとか、ありたい姿みたいなのはあるんですか?

平山
それも、本当になくて。

やばこ
この本を読んで自分を取り戻すということは、「こういう自分でありたい」とも違うんですか?

平山
どちらかというと、「決まりたくない」みたいな感じですかね。「これで生きていく」みたいなことはしたくないというか。本当に、ふわふわと生きているので(笑)。

阿部
若い頃って、「これで生きていく」みたいなものを見つけにいきがちじゃないですか。それこそ自分探しの旅みたいな。そういうことをしていた時期はないんですか?

平山
なかったですねー。小学生くらいから、先生が求めていることがわかって、それを演じられる子だったんですよ。だから、〝本当の自分〟なんてものはなくて、いろんな場所でいろんな顔を演じているのが自分だと思ってました。そうやって何層にもなっているのが、総合的な自分なので、「俺はこうだ!」っていうのはないんですね。何か言った1分後には、違うこと言ったりしてるので。

やばこ
前お会いしたときにも、「いくつかの顔を持ってると楽なんだよね」って言ってましたよね。

平山
うん。生きやすさっていうのは、そうやっていくつかの顔を持つことかなと思ってます。僕の中ではですけど。だから、「本当の自分をわかってほしい」とかも思わないですね。それぞれの人に写っている自分で十分。

阿部
人に対しても、「本当のあなたをわかりたい」とは思わないですか?

平山
ないですね。そういう期待もしないです。

阿部
奥さんに対しても?

平山
妻とは一緒にいて楽しいですし、いてくれるお陰で生活がしっかりできているので、パートナーとしてありがとうって感じですね。

やばこ
それもひとつの顔みたいな感じですか?

平山
ん~。夫婦って、ずっと一緒にいるから、だんだんと話すことがなくなってくるじゃないですか。こないだは夕飯を食べながら、「明日の夜は何食べたい?」って話してたんですよ(笑)。無意識に。

やばこ
わかります(笑)。うちも、夕飯のときに「明日の朝は何食べる?」って話したことありますね。

平山
そうそう(笑)。でも、それって良いことなんじゃないかなと、僕は思ってて。そういう会話ができて、それがちゃんと受け入れられて、ニコニコしながら一緒にいられる人がいるっていうのはすごく素敵なことじゃないかなと。
それが本当の自分かどうかはわからないですけど、リラックスしている自分のひとつではあるので。そういうところに妻がいるっていうは、すごくありがたいと思っています。

やばこ
とても、よくわかります。

平山
だから、Wasei Salonの人たちと話してて高揚してたり、仕事で大きなお金を動かして世の中にインパクトを与えようとワクワクしている僕も、同じく自分なんです。そこで、本当の自分ってものに固執しすぎちゃうよりは、もっと気楽なスタンスでも良いんじゃないかなって。

幼少期に養われた俯瞰癖

阿部
平山さんが、小学生の頃から「〝本当の自分〟なんてものはなくて、いろんな場所でいろんな顔を演じているのが自分だ」と思っていたことの背景には、親の影響もあったと思います?

平山
ありますね。うちは親がけっこう厳しかったんですよね。父親は何も言わない人だったんですけど、母親は教育熱心というか、「勉強はしてくれ」、「成績良くなきゃダメ」、「お利口さんでね」みたいなスタンスだったので。
だから、お利口さんでしたよ。家庭訪問で来た小学校の先生が、うちの親に「どうしたらあんな良い子に育てられるんですか?」って聞いてたくらいでしたから(笑)。

阿部
文句のつけようがない優等生(笑)。

平山
そこには、姉の影響もあったと思います。姉は荒れてた時期があって、母親と毎日のように喧嘩をしてたんですよ。それを僕は、「これ言ったら怒るのがわかってるのに、なんで言っちゃうんだろう?」って思いながら見てました。

阿部
うちも、事あるごとに親への反旗を翻していた僕を横目に、弟は冷静な立ち回りをしてたなー。やっぱ、下の子って物事を俯瞰で見れるのかもしれないですね。

平山
そうかも(笑)。だから、僕は小学校高学年のときは、人に合わせて、人からかわいがられるっていうのが自分のパーソナリティになってて、中高生になっていくと、上から認められているという自分のポジションを上手く使って、「お前らもうまくやればいいのに」とか思っちゃう人になっていったんですよね。

阿部
良く言えば世渡り上手、悪く言えば冷めてるみたいな。

平山
本当に冷めてるんです。だから、気づく人は気づくんですよね。「お前冷めてるな」って。高校の陸上部では部長をやってたんですけど、先日、久しぶりに後輩の子に会ったら、「本当に冷たかったです」って言われて(笑)。

一同
(笑)。

平山
「マジで何にも教えられたことないです」とか、「顎で使われた記憶しかないです」って。「ちょっと、あれやっといて」みたいな。

やばこ
やば(笑)。

平山
練習を教えることもなくて、「俺の背中見てればわかるっしょ」しか言わなかったらしいんですよ、僕。

やばこ
やべえ(笑)。

平山
やばいやつだよね(笑)。僕は一応、部長として「一緒に走って上に行く」っていう目標があって、そこにシンパシーを感じてくれる人とはめちゃくちゃ仲良くなるんですけど、そこが合わない人とはちょっと…ってなっちゃってて。

やばこ
その結果が、「本当に冷たかったです」(笑)。

平山
そうなんですよ(笑)。「自分がいる場所で、誰かに合わせて上手くポジション取れればいいじゃん」っていうのが基本的なスタンスだったので、人によっては冷たく感じますよね。

やばこ
そうかもしれないですね。

平山
たまに寂しくなることもあるんですけどね。ちょうどよくいろんなところにポジションを作るっていう自分の在り方が。だけど、そっちの方が性に合ってるし、僕としては生きやすいので。

〝自分について語る〟とは?

やばこ
平山さんは、きっと要領がすごくいいんですね。

平山
要領だけがいいんです(笑)。そこだけが僕の強み。

やばこ
僕も昔からけっこう要領がいいタイプで、誰かが言ったことに対してポンって気の利いた返しをして、「わー!」って拍手されるみたいなことを繰り返してきたんです。その結果、人間性が〝尖る〟ではなく、〝丸く〟広がっていったんですよ。
それで、自分がスペシャリストとは真逆の、ジェネラリストみたいになってるなと実感したときに、「あ、嫌だな」と思ったんです。「どんなことをしてるんですか?」って聞かれたときに、パッと答えられないっていうのが嫌で。平山さんは、そういう感覚はありませんか?

平山
自分について語るときに、例えば「プロデューサーやってました」とか、「今はウェブマーケで世の中を変えようと思ってます」みたいなことは言えるんです。でも、それは役割の話じゃないですか。もしかしたら、専門性とも言えるのかもしれないけど。

やばこ
そう思います。だから、僕の場合は、仕事として自分のことを語ることはできたんですけど、「それで良いんだっけ?」と思っちゃって。

平山
僕も最初に代理店に入った頃はそんな感じでした。「代理店の営業です」みたいなこと言いたくないなって。

やばこ
ことりっぷに入ってからは、なくなったんですか?

平山
なくなりましたね。そういった意味では、仕事が自信を与えてくれたかもしれないですね。いろいろ失敗はしましたけど。ある程度ちゃんとやれたっていう。そこは大きかったかな。

平山
ただし、「じゃあ、平山高敏という個人は何者なの?」って聞かれたときに、仕事というのはやっぱり自分の一面でしかないなと思うんですよね。それはどっちかというと目標であって、人生とイコールではないから。だから、難しいんですよ、自分語りって。

やばこ
そうですよね。

平山
仕事を自分として語ると、すごくシンプルな話ができるんですけど、それ以外で自分のことを語るってなると、何も言えないところに陥っちゃって。特に今は、仕事がいろいろ複層的になってきているし、コミュニティもできはじめて、関係性が増えれば増えるほど、「僕はこういう人なんです」っていうのが逆に言いづらくなってきてますよね。

やばこ
そう思います。

平山
でも、僕は「自分で自分をわかりきりたくない」と思ってるんです。

やばこ
「自分で自分をわかりきりたくない」というのは?

平山
自分が思ってるよりも、もっといろんなことができるかもしれないじゃないですか。だから、「自分をわかったことにしたくない」というか、「決めきりたくない」みたいな感覚があるんですよね。要するに、甘さがあるんですよ、自分に対する。期待はしてないくせに。

やばこ
他人には期待してないけど、自分には期待してるってことなんですか?

平山
うーん…。だったら「もっとちゃんとやれよ、自分」って思いますけどね(笑)。

一同
ははは(笑)。

平山
なんだろうなぁ。「満たされちゃってる」っていうのは、最近あるかもしれないですね。5年前に同じようなこと聞かれていたら、『ことりっぷ』っていうのを主語にして、それらしいことを言ってたと思います。

阿部
模範解答的な(笑)。

平山
そうそう。求められている答えがわかるので(笑)。今日は、これだけふわっとしたことを話して、「まとめにくいことを言ってるな」ってわかってるんですけど、それでいいなと思ってて。本心だし。だから、すごく良い時間です(笑)。

阿部
頑張って、まとめますね(笑)。

平山
(笑)。僕は本当に「これで生きていくんだ」みたいなのがなくて、「この場所にいるから、これやろう」ってことをやり続けてきた結果、「これだったら面白いかも」っていうものが見つかって、だんだんハマっていくタイプなんですよ。特に仕事は。
そうしてハマっていった仕事は、自分の中でプライオリティーが高いものになるので、「=自分」とか「=人生」に近くなってくるんです。だけど、この歳になると、仕事だけが自分でも、仕事だけが人生でもないことがわかってきているので、自分について話すときに仕事だけを強く押し出すのも違うよなって。

阿部
仕事だけで自分を語ると、こぼれ落ちちゃうことが多いですもんね。

平山
ですね。最近は仕事でもそれ以外でも、若い人たちの話を聞いて、「だったらこういうことができるんじゃない?」みたいな提案をすることで、彼ら彼女らが一歩でも前にいけるのが嬉しいと思うようになってきてます。自分の欲がなくなってきて、いろんな関係値でできることの方が楽しいし、そっちの方が嬉しいおじさんになってる(笑)。

やばこ
そっちの方が嬉しいおじさん(笑)。そうやって、いろんな面を持ちすぎることで疲れるみたいなことはないんですか?

平山
今はないですね。前はたぶん頑張っていろんなところに合わせてたんでしょうけど、今はちょうどいいところを見つけたって感じですね。

やばこ
だからこそ、満たされているんですかね。

平山
うん。たぶん。高校までは人の気持ちも考えられなかったし、社会人になってもあまり変わらず後輩がついてこなくなっちゃたりもしたので、今まで人から相談されることとかなかったんですよ。それが社外の人からも相談とか受けるようになって、本当に満たされちゃったというか(笑)。

阿部
頼られる嬉しさを感じるように。

平山
なんか、満たされ方が変わってきたのかもしれないなぁ。今まではどんどんどんどん求めちゃって、どこまでいけば満たされるかっていうのが難しかったけど、今はちょっとしたことでも「あぁ、良いわ」って思える瞬間があって。そういう小さな満足感は肯定していきたいなと思ってますね。

阿部
満足感を肯定するっていい言葉ですね。

体験からしか生まれない〝自分の言葉〟

阿部
話を聞いてて思ったんですけど、平山さんの考え方とか言葉って、すべて体験から生まれてきてる感じがしますね。本とか人の話から得たのではなく、実感から生まれてるって感じが。

平山
あー、そうですね。全部自分の違和感がスタートだと思います。本の言葉って、すごくグッとくるんですけど、すぐ忘れるんですよね。頭悪いから(笑)。だから、言葉は、体験したこととか、自分で感じたことからしか出てこないです。
文体とかは本を読んで影響されますけど、書いてることは、全部自分から出てきたものですね。だから、書くのはつらいんです。だけど、書かなかったら書かなかったでダメになっちゃうんで。

やばこ
「書かないとダメになる」っていうのは?

平山
書くことで、自分の気持ちがようやくわかってくるんですよ。ビジネスの本とか生き方の本って、いろんな示唆を与えてくれるけど、そこに体験が伴ってないと自分の言葉にならないじゃないですか。自分のものになっていない言葉を人に話したりしていると、言葉が空疎になっていくんです。

やばこ
わかります。

平山
自分はいろんな面があるってことがわかっているので、そういう言葉を使う面が強くなってくると、全体が淀んできちゃうんですよ。だから、Twitterとかnoteに、自分の言葉を書くことで、バランスを取るようにしてるんです。

やばこ
あー、なるほど。

平山
あとは、SNSを見てても、煽ったり煽られたりっていう光景が日常的に見られるじゃないですか。そういうのにモヤモヤしてるから、書いてるっていうのもあります。同じように感じている人たちが、僕が書いた文章を読んでくれて、少しでも気が抜けるようなきっかけになればいいなと思って。

阿部
平山さんって、マーケティングの仕事をしてるじゃないですか。マーケティングって、実感値よりもデータを重要視する仕事というイメージがあるんですけど、職場ではどんなスタンスでいるんですか?

平山
そこは一緒ですね。実感値から話します。「データを見る限り、世の中でこういうことが求められてるから、こうしましょう!」みたいなことは、絶対に言わないですね。違和感があることは、やりたくないので。
だから、「会社としては、こうだから」みたいなことを言われても、「いや、意味わかんないっす」ってなっちゃうこともあるんです。企業人としては矛盾してるんですけど(笑)。それをそのままぶつけちゃったりするので、下の子を混乱させちゃうこともあって…。

阿部
会社の意思を鵜呑みにできない故に。

平山
そういうところを面白がってくれる人だと、一緒に仕事しやすいんですけどね。相性って言葉はすごく簡単だけど、やっぱり一緒に何かをやる上では大事だなって思うんです。今はソーシャルのおかげで、相性のいい人同士が近づいてきているので、いろんなことがやりやすくなってきてますよね。

阿部
それは感じますね。

平山
自分が発信したり、いろんな場に出ていけばいくほど、相性のいい人と出会えるじゃないですか。だから、今の若い人は羨ましいですよ。
パターン化された道筋で、経験を積み上げていくことが良しとされていた時代が長かったけど、それは人口や経済が発展する前提で作り上げたものだったわけじゃないですか。でも、その道筋が限界を迎えていて、今はいろんな境界を溶かすようなことが起こりはじめてる気がするんです。だから、人と人の付き合い方も良い意味で変わってきてるなって。

やばこ
最後に、この器についても聞かせてもらっていいですか?

平山
これはね、お酒を飲むのに使ってるんですよ。いろいろと思い入れがあるし、それっぽい話をすることもできるんですけど、とにかくお酒が好きってことです(笑)。

一同
(笑)。

平山
お酒の場って、いろんなものを逸らしたり、ふいにする場所だと思うんです。そういうのって、無益なものとして語られることが多いですけど、僕は大切だと思っていて。ふいにできることって、ふいにしちゃった方がいいと思うんです。

やばこ
ふいにする(笑)。

平山
みんなあまりに答えがあると思ってるけど、そういうのがなくたって生きていけるんですよ。だから、ふいにできることは、率先してふいにしていきたいですね(笑)。

やばこ
いろんな話を聞かせてもらった上で、最後に「ふいしてもいい」ってところに落ち着くの、めっちゃいいっすね。平山さんらしい(笑)。

阿部
お酒飲まないで平山さんと話すの初めてだったけど、面白かったね!

平山
飲まないで、自分の話をするのはなかなか大変だった(笑)。

やばこ
いや、面白かったです! ありがとうございました!

※インタビュー本編は、こちらで終了ですが、この先の有料コンテンツでは、平山さんが思い出の場所やオススメのスポットなどを紹介しています!


ここから先は

2,660字 / 8画像
この記事のみ ¥ 200

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。いただいたサポートは、Wasei Salonの活動費に当てさせていただきます。Wasei Salonの世界観をお楽しみください。