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【#Real Voice 2022】 「誰かのためにプロになる」 3年・森璃太

誰かのためにプロになる。
この言葉は約2年半前、新入部員紹介動画の際に自分が示した決意である。

それから2年半が経ち、いよいよ最終学年を迎えようとしている。

進路選択という人生の岐路に立って、自分が入学当初、決意した「誰かのためにプロになる」ということに対して少し考えてみたい。

そもそも、誰かのためにプロになるとはどういうことなのか。家族、親戚、友人、指導者、これまでお世話になった方々、応援してくれている人たちなど、自分のために時間を割いてくれたり、支えてくれたり、愛情をもって指導してくれたり、全て自分のために行動してくれた人たちのために、自分がプロサッカー選手になって恩返ししたいという気持ちから芽生えた決意だった。つまり、誰かのためにプロになる=これまでの恩返しということになる。
自分が満員のスタジアムでピッチに立ち、プレーする姿を見せることができたらそれは最高の恩返しになるだろう。その最高の景色を見るために、見せるためにこれまで過ごしてきた。

夢を掴むためにあと1年。

プロサッカー選手になりたいと夢みた4歳の頃から続けてきたサッカーがあと1年で終わってしまうかもしれないと考えると焦りや不安は増すばかりだが、その焦りや不安がプロサッカー選手という職業について考える機会を与えてくれているのも事実だ。

同部屋の陽琉(3年・奥田陽琉)とサウナに行ったときに、「プロサッカー選手って夢があるようでないよな」という話をしたのを覚えている。現実を見るとまさにその通りで、側から見れば、プロサッカー選手は自分の好きなサッカーでお金を稼いで、優雅な暮らしをしてなど華のような職業だと思われがちだが、実際は、活躍できなければ数年で契約満了になったり、20代で現役を引退する選手も多い。大卒選手は長くて10数年しか最前線でプレーすることはできず、現役生活よりも引退後の人生の方が圧倒的に長い。そもそも、プロサッカー選手になること自体が難しい。これらのことを考えると、プロサッカー選手は夢があるようでない職業だと言えるかもしれない。実際にスポーツ選手になりたい子供たちの割合も年々減ってきていることから、より効率化を求める現代社会ではプロサッカー選手(スポーツ選手)を目指しづらい風潮になっていると考えられる。また、同期が就職活動をしている姿を見ていると、大手企業に入った方がこの先の人生を考えると安定で幸せな暮らしができるのではないか。プロサッカー選手になるより、早稲田大学ア式蹴球部の名前を使って就職活動をした方が楽なのではないか。など、色々な思考が頭をよぎる。

しかし、やっぱり、家族や友人などが喜んでいる姿を想像すると誰かのためにプロになりたいと強く思う。考えれば考えるほど最終的にこの思考にたどり着く。

プロサッカー選手という夢は、誰かのためにプロになりたいと決意した時点で、自分だけの夢ではないことを、多くの人の支えによって気づかせてもらった。

よく選手のヒーローインタビューで、「ここまで来れたのはみなさんのおかげです」や「感謝しかないです」など、自分のこれまでの努力よりも周りへの感謝を伝えていることが多い。
以前の私であれば、綺麗事を言っていると感じていたものが、プロサッカー選手という職業とは何かと考えていくうちに、選手たちの内に秘めた想いが言葉として表れているのだと感じるようになった。
夢を叶える人、チャンスを掴む人、成功する人ほどこそ、周りの支援を心から大切にする人だと思う。
そんな人間に自分もなりたい。


最後に、誰かのためにプロになる=これまでの恩返しと考え、さらにプロサッカー選手という職業を紐解いて綴ってきたが、これまでの恩返しという自分の中の限定的な影響の輪だけでは本当のプロサッカー選手の価値は生み出せないと思う。多くのサッカーファン、全くサッカーを見たこともない人たち、そしてプロサッカー選手を夢見る子供達、全ての人に感動を届け、夢を見せることがプロサッカー選手の本当の価値を生み出すことにつながると思う。だからこそ、プロサッカー選手になって多くの人に影響を与えたい。

2年半越しの決意となるが、

改めて、誰かのためにプロになる。

◇森璃太◇
学年:3年
学部:スポーツ科学部
前所属チーム:川崎フロンターレU-18

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