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#3【連載:助演俳優賞】中川 晟


【連載:助演俳優賞】

「想いの照らす、その先を。」
 早稲田祭2022の成功を支えた早稲田祭2022運営スタッフのメンバーにインタビューを行う企画。華々しい舞台の裏では何があったのか。そのストーリーを発信することで、彼・彼女らの「想い」の照らすその先を映し出す。


中川 晟

 早稲田祭2022運営スタッフ第2副代表。アーティストライブに捧げた3年間。あの日、誰もが心を躍らせた早稲田アリーナ。舞台裏の「想い」にスポットライトを当てる。

人生で一番の景色

――早稲田祭、おつかれさまでした。
中:ありがとうございます。
――早稲田祭が終わって1ヶ月が経ちましたね。率直なお気持ちはいかがでしょう。
中:とにかく「早いな」というか。運スタって早稲田祭の本番が終わったら終わりってわけじゃなくて、祭りの後片付けみたいなことを色々とやってはいるんだけれど、それでも凄く仕事は減ったんだよね。そう考えると「暇だな」って感じでもあります。最近は早稲田にも来なくなったしね。
――早稲田祭の当日を振り返ってみてどうですか。
中:夢みたいですね。遠い記憶というか。例えば、ふらっと大学に来た時に「ここにあんなに沢山の人が居たんだ」って思ったり。大隈講堂とかも、「本当にここにステージがあったんだ」って。それこそ早稲田アリーナとか、今ここでインタビューしてもらってるけど(笑)当日はここに4000人も集まってCreepy NutsさんとかSUPER BEAVERさんがライブをやってたんだなって。
――当日で一番心に残ったことは何ですか。
中:アーティストライブですね。自分はずっとアーティストライブをやりたかったんですけど、2020年も2021年もできなかった。それこそ2021年はアーティストライブの責任者になって半年くらい大学側と交渉してたんだけど、できなかったんだよね。でも、2022年は自分が副代表になったことで本格的に大学側と交渉できるようになって。「今年こそは」と思って色々と頑張り続けた結果、アーティストライブができた。その景色が本当に心に残ってます。このアリーナに大勢のお客さんが集まっていて、アーティストがテージにに立っていた。自分の人生の中でも一番記憶に残る景色でしたね。
――その景色を見て感じたことはありますか。
中:嬉しかった。凄く具体的な話になっちゃうんだけど、広告研究会さんが呼んでくれたgo!go!vanillasさんがライブのMCで熱い話をしてくださって。「このライブは、色んな学生が3年間やろうとし続けてやっと実現した対面開催のライブなんだよ。そんな熱い想いがあってできる特別なライブなんだよ。」みたいな感じで。自分はその時舞台袖に居たんだけど、そのMCを聞いた瞬間に泣いた。当然、ライブを企画してる広研さんとの間で出てきた話だと思うんだけど、自分と重なる部分もあったから凄く感動して。そのあとvanillasさんが舞台袖に帰って来た時に話しかけちゃって(笑)「自分も3年間ずっとやりたくて」みたいな話をしたら「よかったね」っていうことを言ってくださってね。それがめちゃめちゃ嬉しかった。vanillasの皆さんが学生の気持ちを汲み取ってライブをしてくれたっていうのが本当に嬉しかったですね。
――Creepy Nutsさんとかはどうでしたか。
中:あー(笑)全然話が変わっちゃうんだけど、R-指定さんが喫煙者なんだよね。それで学館の喫煙所に案内したんだけど、そこでR-指定さんがタバコを吸ってるのを見て、「こりゃすげえな」と(笑)普通にサークル活動をしてる学生もいる中でR-指定さんがタバコ吸ってる光景はめちゃくちゃ面白かったですね(笑)新宿区の条例の関係でどうしても仮設の喫煙所を作るっていうのができなくてそうなったんだけど。
――でも、その光景に至るまでにも条例を調べたりとかっていう色々な過程があるわけですか。大変ですね。
中:そうですね。大変でした(笑)

一つの企画が潰れる毎に誰かの想いが潰れる

――早稲田祭に向けて頑張っていく中で一番大変だったことはありますか。
中:大学側との交渉かな。第1副代表と一緒にやってたんだけど、「開催形態はどうするのか」「人数制限はどうするのか」「隈ステは建てるのか」「アーティストライブはやるのか」みたいな話をずーっとしていて。自分が副代表になったのは2021年の12月だったんだけど、運スタの皆がそれぞれやりたいことを掲げてる中でどのくらい実現できるのかなんてその時点では全く分からなかった。でも、それを実際に形にしていくのは副代表の腕の見せ所みたいな部分もあるからそこは本当に苦労したね。一つの企画が潰れるごとに、誰かの想いが潰れていくわけだから。その責任が凄く重くのしかかってくる中で、大学側と週に1~2回のペースで交渉を続けてた。たぶん100回以上交渉してるし、メールも1000通以上してる。うーん。大変だったなあ。
――1年間ずっとですか。
中:そうだね。今でも大学側とお話するし。早稲田祭直前の1ヶ月なんかは凄く電話がかかってきて、電話を取ったら大学の学生生活課に行って打ち合わせをしたりとか。朝起きたらすぐにメールチェックみたいな(笑)大学の部署とかって夕方で閉まっちゃうから、それ以降に出したいメールは翌朝の8時に予約送信して。多い日だと予約送信だけで10通以上あったりね。
――大忙しですね。でも、その努力が実を結んで沢山の企画が実現できたんですよね。
中:自分が副代表になった当初は「全部やりたい」って言いながらも飲食屋台とか隈ステとかは実際には厳しいと思ってたんだよね。事実、過去2年間できなかったのを見てたから。それを考えると「だいぶできたな」って思うし、終わってみて「良かったな」って感じですね。

"「自分は無力だな」と思ったし、辛かった。"

――運スタの3年間の中で、一番楽しかった時はありますか。
中:うーん。たぶん、自分たちの代は「最後の1年間が一番楽しかった」って答えると思うんだよね。やりたいことがやれるし、運スタの皆で集まる機会も増えたし。ただ、今になって、「早稲田祭に向けて忙しなく生活してた日々が全部楽しかったな」って凄く思うんだよね。終わってみると、もう何もないから。毎日毎日パソコン触って、色んな会議して、色んなことを考えて、色んなことをやってっていうその時間全部が楽しかったと思う。一人の人間としてそういう生活の方が自分に合ってたんだろうなっていうのもあるかな。
――逆に、一番辛かった時とかあります?
中:そうねえ。2020年のコロナ禍でオンライン開催の早稲田祭っていうのが自分にとって初めての早稲田祭で、1年生なりに悔しさがあったんだけど2年生や3年生ほどのものじゃなくて。ただ、先輩方の想いを涙や言葉で伝えてもらって、受け取って。「頑張ろう」って思って迎えた2021年は、アーティストライブをするために大学側とずっと交渉してたんだけど結局できなくて。あの、「アーティストライブはやりません」っていう決断は大学側じゃなくて自分たちでしてるんだよね。それを参加団体との会議で伝えるんだけど、「どうしてもできないんですか」って泣いちゃう人も居たりしてさ。そういうのを見ると「自分は無力だな」と思ったし、辛かった。結局、早稲田祭2021のアリーナはパフォサーの企画になったんだよね。もちろん、企画としては上手くできたから良かったんだけど、当日にその景色を見たときの虚無感というか、自分の見るべき景色じゃない景色がそこに広がってるんだっていうのを感じた時は虚しかったなあ。
――そこからどうやって立ち直ったんですか。
中:その次の年のことしか考えてなかったなあ。もう1年あるから、そのために今年の経験をどう生かせるかってことしか考えてなかった。落ち込んでる暇なんか無かったね。

「やりたい」という想いにこだわった

――中川さんの代ってコロナが直撃した代だと思うんですけど、コロナ禍だからこそ芽生えた想いはありますか。
中:2020年に運スタに入ったんだけど、コロナ前の早稲田祭を知っている先輩方からずーっと話を聞かされるのね。それで、自分たちがその景色を見たいと思う一方で責任も感じて。先輩方が当たり前のようにやってきたことをコロナ禍で潰しちゃいけないし、戻さなきゃいけないっていう重圧は凄くあって。特に当時の3年生はコロナ前の早稲田祭をよく知ってて、その人たちと直接関われる代って自分たちの代までだから。その人たちの想いとかを直接見て聞いてるっていう意味では、自分たちの代である程度は元に戻さないと早稲田祭がマジで潰れていくなっていう自覚はたぶん持ってたんじゃないかな。
――そんな重圧もある中で過ごした3年間を振り返ってみて、ブレなかった軸はありますか。
中:何だろうなあ(笑)でも、少なくともやりたいことはブレてなかったと思います。アーティストライブをやりたいっていう想いにこだわり続けた結果が早稲田祭2022だと思うし。早稲田祭と言えど大学の文化祭だから、コロナの制限だったり色んな許可が必要だったりでできないこともいっぱいあった中で、やりたいことを「無理って」言われるまでやろうとしたのは、最終的には意味があったのかなと思うし、ブレてなかったと思います。あと、人に辛いところは見せなかったはず。たぶん、たぶんね(笑)1年生の頃はそもそも辛いことがあんまり無くて楽しくやってたから良いんだけど、2年生、3年生になるとねえ。単純に自分の仕事量が増えるだけじゃなくて、色んな辛いことが起こるようになるから「大変だな」って思うことも結構あったけど、それを周りに見せると全体のモチベーションを下げるってことに繋がっちゃうからさ。運スタの代表陣って620人の組織の中でたった4人だから、「疲れてるんですか」とか「大丈夫ですか」とかって思われないように気をつけてた。こっちはそれを救う側だから。辛いところは見せないようにしようっていう想いはずっとあったかな。

「早稲田祭が完成したら運スタはいらない」

――そうやって中川さんが繋いできた早稲田祭ですけど、今後はどういった形で繋がっていってほしいですか。
中:やっぱり、全体的には早稲田祭2022はコロナ前と比べた時に100%の祭りだとは言えなくて。ふと「行きたい」と思った人が来れる早稲田祭では無かったじゃん。チケット制だったから、そこの制限をまず無くさなきゃいけないよなと。ふらっと来た人が早稲田祭で早稲田の魅力に触れて、例えば「受験してみよう」とかってなるきっかけを作れるような祭りになればいいなって。ただ、コロナ禍の期間を踏まえると、過去の伝統に縛られる必要も無いなっていうのもあって。「先輩たちがやってきたからこういう風にやろう」っていうのは、時にはもったいなくて。そういった殻みたいなものを破るきっかけがこのコロナ禍での早稲田祭だったんだなとも思うんだよね。新しくできたこともいっぱいあるから。だから、5年後、10年後に自分が早稲田祭に来た時に「懐かしいな」だけじゃなくて「こんなのもあるんだ」とか「新しいな」って思える早稲田祭になっていて欲しいな。運スタの人たちによく言うんだけど「早稲田祭が完成したら運スタは必要ない」って思ってて。「まだまだやれることがあるよね」とか「もっとこういうことやりたいよね」って言い続けることができる環境が大事だと思うんだよね。どれだけ沢山の人が来て、どれだけ大きい企画ができて、どれだけ凄いゲストが来るようになっても、そういった想いが根底にはあるお祭りであってほしいなと思います。
――そのためには「参加団体との関わり」っていうのも重要になってきますか。
中:そうねえ。逆に「他のサークルが運スタのことをどう捉えてますか」って聞きたくて。その、「運スタさんのおかげです」みたいな声を色んな人から掛けてもらえて凄く嬉しい一方、自分たち運スタに対しての不満が無い方がおかしいとも思っていて。実際、この1年間で色んな人とぶつかったし。でも、そういうのが無いとダメだと思うんだよね。他のサークルの想いっていうのを受け止めつつもバチバチやってくような運スタであって欲しいとも思うかな。早稲田祭の参加団体が意見を言えたり、運スタと面と向かって話ができたほうが良いだろうからね。
――やっぱり、運スタさんの「お上」感は多少あると思います(笑)
中:そうだよね(笑)もちろん、一緒にご飯行ったりとか、一緒に企画やったりとかで仲良くなれる人も居るんだけど、そういう人たちの意見だけを聞くってのも違うからさ。運スタの役職に付いてる人たちと直接繋がってる人たち、パフォサーとか企画サークルの代表陣とかは色々言いやすいとは思うんだけど、それだけじゃダメで。そこをどうにかしないといけないよねっていうのは割と昔からの課題だと思っていて。もうちょっと上手くできたらいいよねっていうのはあると思います。

「早稲田祭、良かったね」と思ってもらえれば

――こちら、助演俳優賞という企画でして。誠に僭越ながら、早稲田祭を支えてくれた方に賞をあげようっていう企画なんですね。そこで、中川さんには賞を受賞したっていう体でスピーチをお願いしたいんですが、大丈夫ですか。
中:恐縮です(笑)
――では、お願いします。
中:はい(笑)
――助演俳優賞は、中川晟さんです!
中:ありがとうございます(笑)この賞をいただけて光栄です。まあ、我々早稲田祭運営スタッフっていうのは早稲田祭を多くの学生だったり参加団体の人に楽しんでもらって、その先にいる来場者の人にも楽しんでもらうっていうのが目標で活動してるんですね。その中で、運スタは影というか一番目立たない存在で居ることが僕はベストだと思っていて。それこそ、写真とか。ステージとかで一生懸命頑張ってキラキラしてる人を撮った写真の中にチラっと運スタの法被が映ってるみたいなのが凄く素敵だなと思っていて。うーん、難しいなあ。とにかく、我々早稲田祭運営スタッフっていうのは、早稲田祭の2日間の為に色々頑張る人たちが居て、350くらいの団体があって、1万人くらいの学生が居て、それを取り巻く地域の人とかOBOGの人が居て、そして来場者の人も居て、その人たちが全員いい気分で終われるように活動を続けているんです。だから、その人たちがたとえ「運スタ嫌い」ってなったとしても、最終的には「早稲田祭、良かったね」と思ってもらえたら、「自分たちの中で良かったと思えるものができたね」と思ってもらえたら、早稲田祭を運営する側としてはそれが一番ベストだと思うんです。早稲田祭をきっかけに、何かこう、新しい夢とかやりたいこととかを見つけてもらえたら素敵だなっていう想いもあって活動してるので、そういったものを感じてもらえたのならば、とても良かったです。これからも早稲田祭をよろしくお願いします。ありがとうございました。


【連載:助演俳優賞】中川 晟

企画
早稲田大学英字新聞会 ザ・ワセダ・ガーディアン
矢作 嘉之

製作
早稲田大学英字新聞会 ザ・ワセダ・ガーディアン
矢作 嘉之

Special thanks
早稲田祭2022運営スタッフ
中川 晟

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