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芸術の価値はどこにあって、どうしたら「芸術ってわからない」が無くせるのかについての考え

皆さんは美術館とか博物館って行きますか?
僕はたまに行きます。
むかし祖父に連れて行ってもらったゴッホ展以来、美術が好きになりました。高尚な感じではなく、これ良いなとか、綺麗だなみたいな側面が強いです。

最近読んだ『イメージを読む』(若桑みどり著)は、美術史をほとんど勉強したことがない大学生に行った講義の内容をまとめたものになっています。そのため、作品に何が描かれているのか、どういった意味があるのかといったことがとても丁寧でわかりやすく書かれています。
出てくる作品はレオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザ、ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂の天井画など、日本でも人気の高い有名な画家たちの作品です。この画家たちの名前を冠した展覧会は人が大勢来るでしょうね。
もし美術について勉強したいと思う方がいたら入門書としておすすめの一冊です。

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さて、話は変わりますが
こういった美術作品の価値ってどこから来るのかということを最近考えました。
というのも、以前友人と美術館に行く機会があったのですが、そこで友人が発した
「芸術ってわからないんだよね」
という言葉を思い出したからです。

まず思ったのは一体何がわからないのかです。

多くの人がありがたがって見ていることなのか。
そうした作品を良い(面白い、綺麗、美しいなど)と感じることなのか。
当たり前のように高額で取引されることなのか。
描かれている内容についてか。
作品に込められた意味か。

などといろいろ浮かびましたが、別に僕自身上手い返しができるわけではなく。
そこで見たものに対して、わかっているかはわからないけど面白いとは思うという感じでした。
実際、現代アートなどは奇想天外すぎてわからないとも言えるし若干の苦手意識すらあります。
ただ、こういった発言が出るということは友人はあまり楽しめてなかったのかも知れません。

後になって、少し考えたところ
まず芸術に価値を見出している人は、自分から作品に意味を見出せる人、またはその作品にまつわる知識を持っている人の大きく2つのタイプがあるかなと思いました。

1つ目のタイプはほとんど感性の部分ですが、この作品はこういうことを表現しているのではないかとかが感じられる、解釈できる人。それかもっと単純に綺麗とか可愛い、カッコいいでも良いと思います。いずれにしろ、知識が無くとも見ただけで興味が持てるかどうかです。

2つ目は、作品に何が描かれているかがわかること、その作者はどんな人物か、社会的な評価はどうかなどを知っている人です。
まず作品に描かれていること、例えば宗教画などは何が描かれているかがわかることで顕著に面白さが変わると思います。逆に知らない場合、見ただけではわからないし、短い説明文では不十分。音声ガイドで示された物や人物が追えないといったことが起こってしまえば楽しくなりようがないかと思います。

また作者について知っているというのも重要で、例えばゴッホについて。ゴッホは人生を見てみると狂気の画家といったイメージを持たれるのがよくわかります。耳を切ったり、最後は自殺していたり。だからこそ彼の絵には独特の勢いが感じられるという意見はわかりますし、実際平和で安穏とした生活をしている芸術家だったら描けないかもしれないです。

少しズレますが、子供の絵って世間一般でいう上手いという視点で見ると下手だと思います。一周回ってアートだと言えるかもしれませんし、作者の魂がこもっていればそれはアートだという考えもあるかも。でも、親からしたら自分の子供が描いたというだけで価値があると思ったり、記念日に贈られた似顔絵とかになったらどんな絵画より価値があるっていう人もいるんじゃないでしょうか。ここに上手いか下手かとか、作品から溢れ出る凄みが…といったことって関係ないと思います。

どちらにせよ作者が誰で、どんな人物かを知っていることで作品を理解しやすくなったり特別な意味が生まれるということです。

そして社会的評価、これはそのままというか、Amazonとか食べログのレビューを見るような感じですかね。みんなが評価していることを知っているだけで、それに興味を持ったり、好きになる確率って上がるような気がします。あとメディアがどれだけ取り上げるか、有名な人、権威のある人が薦めているかどうかなど。

もちろん何かしら知識があるからといって、必ず価値を見出す所まで行くとは限りません。

ただ、有名な画家やその作品も、作品そのものの力以外の何かしらの点で多くの人に知られているから人気があったり、見てみたいという動機が生まれると考えられます。今なぜフェルメール展に人がたくさん入るのか。いろいろな理由は考えられますが、フェルメールが人気だからというのも欠かせない要素なのではないでしょうか。

ようは作品そのものの素晴らしさみたいなものと、手に入れた知識からくる価値付けはどちらが先行するのかという問題です。

そして
1つ目のタイプの場合は、まあそのままで問題ないと思います。

2つ目の場合に「芸術はわからない」という話が出てくる気がします。ただこれに関しては、言葉通り単純に知らないからわからないと言えるのではないか。1回見てすぐに好きになり、それなりの価値を感じられる作品というのは人それぞれ違いますし、なかなか出会えるものでもありません。ただ、おそらく人気や価値というのは、作品そのものの良さだけでなくそれを取り巻く情報や状況が寄り集まって形成されているので、何か自分の興味と結びつく知識を得られれば、印象が大きく変わることはあり得ます。

そしてこれは個々人の感性とは違い、様々なアプローチで作品にまつわることを知ってもらえれば解決できることだと思います。

なので上手くすれば有名な画家や作品はもちろん、無名な画家や地味で目を惹きにくい作品でさえ、価値を見出される可能性というのを秘めていると思います。

これを踏まえて展覧会を例とすると宣伝が重要というのは当たり前ですが、ただ従来の感じでやっていくだけでいいのかとも思います。例えば数年前に流行した若冲展はメディアでも取り上げられて大規模な宣伝がされていました。ただおそらく見に行った人の多くは話題性と鮮やかな色彩、独特な絵に興味を持っていたと思います。要は大々的に広めれば、ビジュアル面だけでも人が興味を持つポテンシャルがありました。でも世の中そんな作品ばかりではないですし、作者の名前を隠したらあまり人が呼べない作品というのも正直あると思います。

なので、作者や絵の見方といった点を伝えていく方が多くの作品にとって有効ではないか思いました。また仮に人が呼べたとして、有名芸術家の展覧会ですら入場してから説明の導入に入っていくというのには疑問があります。説明文を読んでいる方が長くなったり、文章から作品への変換を毎回するのは疲れそうだなと。入場の前にもう少し予備知識が得られると良いのですが、いきなり専門的であったり、本を一冊渡されるようでは重たいので、誰もがシンプルに良さを言語化できるくらいだと良いのかなと思いつつ、どうしたらできるかはわかりません。

というわけで
個人的には「芸術がわからない」に対しては、関連する事柄について何かしら知ることができれば変わっていくのかなと思いました。まず1つ知ること。そこからようやく最初の方で箇条書きした疑問に繋がっていく気がします。ただ日本は芸術についてほとんど学校で習わないですし、意識して触れる機会も少ないと思うのでわからなくて当然かなとも思います。さらに芸術は高尚なものであるとか、国や人類の遺産だというイメージが先行して引け目や疑問を感じるのかもしれません。

ですがそういったことよりも何が面白いのかといったことが先に伝わる方がいい気がします。これは漫画やアニメなんかでもそうでしょうが、どれだけ工夫や考え抜かれた意味があっても、何かしら興味をもたれたり価値があると思われなければ、見た人がそれらを読み取るという行動に繋がらないと思うからです。

そういう意味では如何に興味を持ってもらうかという点で、最近2つのアプローチを見ました。
1つ目は「美術館女子」です。美術館連絡協議会と読売新聞オンラインの企画ですが、ジェンダー問題や「映え」に特化した内容が批判を受けたので公開終了しました。

余談ですが、最近批判を受けたら即取り下げというのはたびたび見かけますけど、一度くらい改善案を出してみるとかすれば良いのにと思います。解決策が生まれないですし、それがまかり通るからこそ似たようなミスが生まれ続けるような気もします。

話を戻して、この企画、問題は多々ありましたが美術館という空間を魅力的に見せて興味を持たせようという考えは良いと思いました。美術館は中も外もおしゃれですし、そこに興味を持ってもらって、そこから所蔵する作品へ誘導するというのは1つの手として有りだと思います。

2つ目が大塚国際美術館で開催されている『アルテ』コラボです。
『アルテ』は16世紀初期のフィレンツェで貴族の娘アルテが画家を目指すという漫画です。主人公アルテの奮闘や成長を描く熱量ある物語と緻密な描写が素敵です。おすすめです。

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こういったコラボは今までの来場者とは違う層の人たちへもリーチできるので上手くやればかなり効果的かと思います。
アルテで描かれるのと同じ時期の作品だとか、アルテは肖像画を描いていたけど実際の16世紀の作品はどんな感じだろうとか、こういうのが良い取っ掛かりになると思います。
ただ漫画アニメ系のコラボは炎上した案件が直近でもいくつかありますし、やるにしても慎重に進める必要がありそうですね。


さいごに

結局、ちょっとでも面白いと思ってもらい、できれば自分から動いてもらえるようになることが大事という非常に一般的な話にまとまった気がしますが。気軽に自分で面白そうな画家や作品が探っていけるような何かがあるといいなと思いました。


そういえば、最近アート思考という考えがビジネスパーソンを始め、今後の社会で重要になってくるという話を耳にしました。それでいうともしかしたら流行からは離れた考えかもしれないです。ただやりようによっては両立も可能な気がしています。





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