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【経営学23】利害関係人とアカウンタビリティ(ビジネスロー分野)

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はじめに

私は若手の皆さんに対して、いつも「1~2年程度でいいので営業職の経験を積むこと」をオススメしています。
なぜなら、営業経験があった方が絶対に人生で得をするからです👍

営業マンになったことがある人は、営業マンの心理がある程度わかります。
そして、営業マンとしてトップクラスになったことがある人は、さらに多くの人間の心理がわかります。
営業という行為と心理学という学問は密接な関係を持っておりまして、様々な点でつながっています😑

交渉時の人間の心理がわかると有益なことが多々あります。
皆さんが家を買う時、家電を買う時、車を買う時……あらゆる場面で「交渉」が発生します。
その際の心理メカニズムがわかっていると、自己に有利な交渉とそうでない交渉がわかるようになり、どこで、誰から購入すべきかもわかるようになってくるのです。
そういう意味でも、若い頃に数年間営業職を経験しておいた方が良いとアドバイスしています。

もっといえば、「交渉」という領域は、実は法学・経済学・心理学などの学問が学際的に交わる領域なんです😍
ハーバード大学のロースクールなどでは法交渉学という分野の講義がありますし、一橋大学大学院や慶應義塾大学でも最近は交渉学の講義があるらしいです。
経済学では主にインセンティブ構造やゲーム理論の分野で交渉の研究がなされています。
心理学なんてまさしく交渉の場面でよく使います。

今日はそんな「交渉」の場面の論点についてビジネスローの分野から解説していきます。
キーワードは「利害関係人」「アカウンタビリティ」です。


1.利害関係人とは

まず、利害関係人という言葉の定義からいきましょう。
日本国語大辞典によると、利害関係人とは、一定の事実または他人のある行為などによって自分の権利または利益に影響を受ける人を意味するそうです。

私もこの定義に賛成です😁

交渉という場面で言う利害関係人とは、交渉の相手方のことです。
ただ、ここでいう相手方には双方向性があるという点に注意が必要です。
自分が買手だったとしたら、売手は利害関係人に該当しますが、逆に、売手にとっては買手である自分が利害関係人なのです😁
そのため、交渉という場面においては、お互いがお互いに利害関係人同士ということになります。

したがって、お互いが、相手の行為などによって自分の権利・利益に影響を受けます😑

このときに問題となるのがアカウンタビリティです。


2.アカウンタビリティとは

アカウンタビリティ(Accountability)とは、説明責任のことを意味します。

この説明責任こそが交渉における最重要論点だと私は考えています🤔
少し難しいお話ですが、経済学分野から説明していきます。

そもそも、交渉という場においては、どちらかがより多くの情報を有しているケースが多いです。
自動車の売手と買手の交渉であれば、売手の方が自動車に詳しいでしょうし、売り物に関する全情報を保有しているため、明らかに売手有利な状態です。

このように、交渉の当事者間に情報量の格差がある状態を「情報の非対称性」といいます。

↑の記事でも去年説明させていただきました😁

この情報の非対称性をそのままにしている限り、交渉はなかなかスムーズに進みません。
買手が自己の有利・不利に無頓着で、すぐに他人を信頼してしまうような人でもない限り、交渉は決裂しやすくなります。

だからこそ、情報を多く持っている人間にアカウンタビリティ(説明責任)をもたせ、情報の非対称性を解消する必要があるのです🤔

しかーし。

営業マンがそう簡単に自分にとって不利になるような情報を開示すると思いますか?😑
するわけがないですよね。

それが営業マンの心理です。
自分にとって不利な情報は極力伏せて、ぼやかして、誤魔化して、なんとかして契約までこぎつけたいと考えるのが営業マンの性です。
これを乗り越えて、誠実な交渉をしようと思えるようなレベルに到達できる営業マンは、全体でみると2%程度しかいないと思います。

「誠実であること」というのは、営業マンにとって極めて難しい状態なのです。
なぜなら、業績が給与に直結しているからです。
契約を取るために不利な情報を伏せるというインセンティブが極めて強く働くのです😭

これをどのように解決するべきか🤔
アカウンタビリティ(説明責任)をどのようにして課せばいいのか。

この点について、法律学の分野で非常に興味深い判例が出ました。
それが平成23年4月22日の最高裁判例です。


3.最判平成23・4・22

この事案では、債務超過状態で潰れかけていた会社が、その事実を伏せたまま他人に出資をもちかけ、出資をさせ、後に経営破綻した事例です🤔
この事例では、説明義務の存在とそれに違反した場合の責任の性質が論点となりました。
原告は、被告に対して契約責任を追求しようとしたのですが、最判はこれを認めませんでした🤔

かなり難しい論点なので、大事なところだけを抽出しますと、以下の3点が極めて重要です。

・契約当事者には信義則上の説明義務がある
・説明義務に違反した場合であっても契約責任は負わない
・不法行為による損害賠償責任を負うことはある

交渉を行ってる当事者間では、一応信義則上の説明義務があるよと認めた最高裁判例です😍
信義則というのは、民法1条2項の信義則です。

権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

民法第1条2項

最高裁が一応の義務を認めてくれたとはいえ、あくまでも信義則上の義務です。
義務の強さでいうと弱いです😑
明確な法的義務ではないので。
そもそも民法は「情報収集はそれぞれの当事者の義務だから、自分で調べないとダメだよ」という原則を貫いています。
つまり、原則として、自己責任です🙄

説明義務違反を追及して、不法行為に基づく損害賠償請求は可能でしょうが、認められる可能性は低いでしょう。
仮に認められたとしても、強制執行をかけて財産を取り返せるかといわれると……かなり怪しいです。
そもそも騙すようなことをする人たちはお金がないから騙すことが多いですからね😑

上記のことから、成人した大人なら、自分で学んで、自分で調べて、自分で判断しなさいねという民法の姿勢がよくわかります。
多くの国でも同様の見解だと思いますが、原則として、よく調べもせずに騙された方も悪いという考え方なんです🤔

だからこそ、信義則上のアカウンタビリティや説明義務に頼るだけでなく、自分自身も学ばないといけないのです。


4.法的アカウンタビリティ

上記のとおり、原則として民法は信義則上のアカウンタビリティしか認めていません

しかし、すべての取引でその原則と貫いてしまうと、明らかに不都合が出ます😑
そこで、一部の取引においては、別途法律を制定し、法的アカウンタビリティを負わせております!

今回は2つの例をご紹介しましょう。


(1)不動産取引

法的なアカウンタビリティとして最も有名だと思う事例は、不動産取引における宅建業者(不動産屋さん)に課された法的な説明義務です。
この義務は宅地建物取引業法35条1項に定められています。

宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。

宅地建物取引業法35条1項

不動産屋さんが、一般人に不動産を売る・貸すときは、必ず法的な説明義務を果たさないといけないのです🤔
ただし、その説明義務は「重要事項」に限られています。
重要でない事項については自分で調べないと行けないという点は変わらずです。


(2)上場企業

上場企業においては、様々な法律でアカウンタビリティが課されています🤔
条文を引用すると読むのが辛くなると思うので避けますが、例えば会社法では株主に対して計算書類を見せて、説明をして、承認を得る義務が課されています。
その他、金融商品取引法上の説明義務もあります🤔
上場企業が四半期ごとに財務諸表等を公開して自社の財務状況を説明しているのも法的な義務です😁
その他、金融庁と東証が発表したコーポレートガバナンス・コードという基本指針もありまして、こちらは法的義務ではないのですが、事実上の強制力を持っています。

上場企業はその影響力の大きさもあって、公器として扱われています。
ノブリス・オブリージュ(身分の高い者にはそれ相応の責任が伴う)の考え方に近いと思いますが、企業にも社会的責任が問われてる時代となってきています🤔

今後、上場企業に限らず、企業であれば様々な場面でアカウンタビリティを課される時代となっていくだろうと思います。

5.まとめ

前述のとおり、「交渉」という場面においては、当事者双方がそれぞれの利害関係人となります😁
そして、当事者間では、通常情報の非対称性が存在するため、慎重に交渉を進める必要があります。

この情報の非対称性を解消するためには、情報をより多く持っている方に対してアカウンタビリティ(説明責任)を課すのが効果的です。
しかし、民法の原則では、信義則上のアカウンタビリティしかなく、原則として自己責任となっています。

ただし、一部の法律では法的義務としてアカウンタビリティが課されています😎

いずれにしても、交渉の場面では、自分で既に持っている情報と新たに調べた情報で判断をするしかありません。
信義則上または法律上の説明義務があったとしても、それをしっかりと相手が果たしてくれるかはわかりません。
したがって、日頃から学び続ける姿勢が重要となります。
自分の詳しい領域を少しずつ増やしていけば、交渉でも優位に立つことができます🎵


おわりに

今日は「交渉」というテーマで利害関係人とアカウンタビリティについて簡単に解説させていただきました😁

結局の所、よほど信頼できる相手方でもない限り、用心して交渉に当たる必要があります。
その際に頼りになるのは、自分の脳内にある情報だけです😎
日々、学びましょう!

そして、周りの人の知恵を上手にお借りしましょう🎵

ではまた書きます。


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著者:瀧田 桜司(たきた はるかず)
役職:株式会社WARC 法務兼メディア編集長
専門:法学、経営学、心理学
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