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選手とトレーナーへ繰り返し言っていたこと|アスリハ現場での教育

こんにちは。

わらし、こと藁科侑希(わらしなゆうき)です。

最近Twitterで毎日トレーニング動画を投稿しています。

よければご覧ください!


今日はトレーナーと教育者の視点から。

私が選手と相対するときに心がけていることや投げかけている言葉のご紹介と、トレーナー教育をしていた時のポリシーについてです。

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上のスライドはことあるごとに出していた、私が2015年4月に筑波大学体育系のスポーツ医学の教員として着任するときに作ったものです。

↑名前がなぜか違って表示されますが、藁科が前任大学で特集していただいた時の記事です。


「トレーナークリニック」というアスレティックトレーナーを目指す大学院生の教育現場 兼 大学生のリハビリテーション現場も担当させていただきましたので、かなり多くのことを経験させていただき、考えさせていただきました。


一番大事にしていたのは、選手には「言葉を発してもらう」こと。

トレーナーには、とにかく「動く」「見せる」「すぐやる」こと。

これらをいつも言っていたように思います。


そして、選手から一番反響があったのは、最後のもの。

「大丈夫」
「わかった」

を簡単に言わないようにしましょう。ということ。


少し昔の授業のフィードバックを見返して、以下に記載します。


【質問事項】112名分の感想用紙より,藁科の個人的な回答集.2018.

<リハビリテーションを行う選手・トレーナーへのメッセージ関連>

・トレーナーと選手間,トレーナーとコーチ間でのコミュニケーションでも,トレーナー自身のその競技に関する専門知識が必要になるのではないか?

 →その通り.トレーナーだからといって,コーチングの勉強をしない,競技の勉強をしない,実際に「見ない」のは選手とのコミュニケーションの前提を満たしていないと個人的には思っている.


・「わかった」「大丈夫」と選手は強がってしまい言ってしまう人は多く,早く復帰したい気持ちからそういう言葉を発してしまう(焦る気持ち)ことがあることをわかってほしい.

 →焦る気持ちが痛いほどわかるからこそ,簡単なやりとりで済ませてほしくなく,再発をさせたくもないし,中途半端なパフォーマンスで進ませたくない.

厳格に復帰までの手順はすり合わせて欲しいし,ある程度競技に対して利己的に追求して欲しいという思いがあり,それをトレーナーとして尊敬の念を持って接したい.

どこまでは言える関係性・信頼関係なのかでも変化はすると思う.

選手たちが競技を振り返って,節目で役立った存在がトレーナーであって欲しいと思っている.


・複数のトレーナーに見てもらうのはいいのか?1人の方がいいのか?

 →一言で言えば,その人との関係性・信頼性と,自分に「合う」かどうか.アスリートとして取捨選択できる主体性があれば,複数のトレーナーからいいとこ取りをして自分の力にして欲しい.1人に頼るのは一貫性は出るが,依存性もどんどん増してしまうため,「守破離」を意識できる関係性にして欲しいと願っている.

・利己的を超えてトレーナーへのリスペクトや感謝の気持ちが欠如している選手もいると思うし,選手とトレーナーは対等な関係であるべきで,お互いのリスペクト精神を忘れてはならないと思うが,トレーナー界ではどうか?

 →個人的な意見になるが,トレーナーはトップにいけばいくほど,必要なときに求められることに適切に応対し言葉がけができる「アドバイザー」であることが求められると思う.その前提には,深層心理で信頼や尊敬の念があると思っている.競技を突き詰めていけばいくほど,関わる人は多くなるため,人と適切に関わり合うことができ,人ごとに関係性を作るスキルや尊敬の念を表現できる選手が上にいけるのだと感じている.

・トレーナーとコーチの怪我に対する再発リスクへの価値観の違いについて;トレーナーが動作確認をしてOKを出しても,コーチが経験に基づいて(再受傷する選手をたくさん見てきた)プレーをセーブしてくる場合に選手はすごく困ります.特にチーム競技だと試合出場に関わるし,他の選手とも合わせづらい.このような場合にトレーナーはどのようなアプローチを選手,コーチ,それぞれにするか(ACL損傷の場合).

 →結論から言えば,トレーナーが出すOKとコーチが出すOKをすり合わせる(もしくは同じにする)コミュニケーションがチームの中で必要.この意味で,コーチがトレーナーの知見をえておくことが今後のコーチング界では必要と言われている.具体的には,トレーナーがコーチらの考えを「聞く」ことに終始できるか否かで,その中でトレーナーの色はどこでどう出せるのかをすり合わせる.トレーナーはあくまでもサポーターであり,パフォーマンス向上をメインに指導するのはコーチ.コーチの信頼を得ると同時にどこまで任せてもらえるかでもトレーナーの力量に依存すると考えている.自分がもしトレーナーを担うのであれば,そのような困惑した状況がある場合,コーチから徹底的になぜOKを出さないのか,いつのタイミングを考えているのか等ひたすら伺うスタンスに出ると思う.このような場合はどれだけの量を話せるかが鍵となることが多い.途中でお互いがそっぽを向かない忍耐力と器を持つことで進めることがある.

<トレーナーやコーチの役割関連>

・選手は,負傷している時はかなり不安.このメンタル部分のアドバイスはコーチの役割?

 →それはコーチの場合もあるし,トレーナーの場合もあり,それが友人や家族,同チームのメンバーであることもある.選手によるが,トレーナーが補助する場面は多々ある.ケア中に不意にもらす本音をトレーナーがどう踏まえて行動するかもカギになる(緩衝材・つなぎ役としての役目).

・一度大怪我をして気持ちが切れる(モチベーションを見失う)ことに対する,カウンセリングの部分は実際にどう対応しているか?

 →個々の性格にもよるが,基本的にはまず「傾聴」をする.これはコーチングでも,教育現場でもまず行うことができるスキルが必要とされている.怪我をした選手は,この先の人生が終わったかのように絶望するところまで落ちる人もいるが,その気持ちにまず向き合えるかどうかを話を聞きながら必ず寄り添うスタンスを取り,気持ちのカオスさの中の一部分でも言葉にできるように内省を深めてもらう.その中で,少しでも発展可能性や次に繋がる要素が見出せたら,具体的に今この瞬間からできることに取り組めるようにsmall stepの目標を提示・共有する.とにかく,言葉を発することのできる環境にいてもらえるようにマネジメントすることを心がけている.


今日はここまで。

見返すと、ありがたいことに授業を受けていた学生の熱の入れようがすごかったなと感じました。

それでは。

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●藁科 侑希(わらしな ゆうき)
 大学教員として、教育・研究現場で活動中。また、スポーツ現場でもトレーナーやコーチとして活動。選手や学びたい人にとって、最良のアドバイザーであることをモットーに、肩書きにとらわれない現場目線のサポートを模索中。

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【保有資格】
博士(スポーツ医学 筑波大学)
日本スポーツ協会公認バドミントンコーチ3
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツコーチ
日本障がい者スポーツ協会公認中級障がい者スポーツ指導員
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツトレーナー
NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト
NSCA認定パーソナルトレーナー
高等学校教諭専修免許(保健体育科 茨城県)
中学校教諭専修免許(保健体育科 茨城県)
赤十字救急法救急員

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