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教える側が教えすぎると「自ら学ばなくなる」

今日は『思考の整理学』の冒頭部分から。

・グライダーと飛行機
・不幸の逆説

このキーワードだけでも、教育する側の心がけの緒をしめなさい、と言われているように思います。

定期的にこの外山先生の著書に立ち返ります。
そして、読む時期ごとに新たな学びを得ることができます。
大学生の時に読んで、衝撃を受けて、その後何度も読み返しているくらいです。もしまだ読んでいらっしゃらない方がいれば、ぜひ。

●学校がすべてではない

冒頭の「グライダー」から、以下に一部の文を抜き出します。(以下、引用|色つき部分は外山先生の著書から)

 いまの社会は、強い学校信仰ともいうべきものをもっている。
       〜(中略)〜
 ところで、学校の生徒は、先生と教科書にひっぱられて勉強する。自主学習ということばこそあるけれども、独力で知識を得るのではない。いわばグライダーのようなものだ。自力では飛び上がることはできない。
 グライダーと飛行機は遠くからみると、似ている。空を飛ぶのも同じで、グライダーが音もなく優雅に滑空しているさまは、飛行機よりもむしろ美しいくらいだ。ただ、悲しいかな、自力で飛ぶことができない。
 学校はグライダー人間の訓練所である。飛行機人間はつくらない。

グライダーとして一流、つまり学校教育の中でいかに優秀な成績を収めようとも、それは学校というレールの中で優等生なだけで、社会で自立して駆け上る能力があるかというとそうではない、ということですね。

もっと言えば、自分で飛びあがろうとするような動きや、自らエンジンを作り、積んで、違う方向に向かうことはあってはならないこととされます。
グライダーの練習に、飛行機がまじるのは迷惑、となってしまうんですね。

グライダー教育の学校では、ひっぱられるままに、与えられるままに、どこまでもどこへでもついていく「従順さ」がひたすら尊ばれ、それを軸に評価されます。

 学校はグライダー人間をつくるには適しているが、飛行機人間を育てる努力はほんの少ししかしていない。

このフレーズにかなりの衝撃を受けたのを覚えています。
確かにその通りだ、と大学生の自分が「このままではいけない」と奮起したのを思い返すことができます。

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●スポーツ指導での「ティーチング」と「コーチング」

スポーツの指導でも、導入部分では先の学校教育(グライダー養成)の概念と同じようなことが求められるのだと思います。いわゆる「ティーチング」の部分ですね。

最初は基本的知識を得るためにも、グライダー養成的な教育が必要なのだと思います。
しかし、能力が上がるほど、自分で見えるものが多くなればなるほど、そのグライダー的「詰め込み」が窮屈に感じるようになってくるはずです。

「自分で飛びたい」と選手が思っていたとしても、指導者側が引っ張ることに固執して離さない。
そんな不幸な例も数多く見てきました。

逆に、トップレベルの選手らを見るとよくわかります。

「自分で考える」
「コートの上では自分ひとり」
「最後に頼れるのは己だけ」

世界で戦う上で必要な能力は、自ら"翔べる"ことです。

指導をする上で、「ティーチング」と「コーチング」どちらかだけでいい、ということはないと思います。
指導を受けた選手が、グライダー兼飛行機人間となるようなアプローチをどのようにできるのか。

これが、スポーツ現場での指導の根本的な課題であり、最も注力しなければいけない部分なのだと思っています。

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●教える側が積極的・親切でありすぎると本当の教育には失敗することがある

教える-教わる関係になってから、「簡単には教えない」という、逆説的なアプローチが、学びを促進することがあります。

この考え方は、馴染みがない人にとっては、ただの謎な理論かもしれませんね。

少し思考の整理学から引用します。

 小学校へ入るこどもは、まだ、勉強がよくわかっていない。ものを知りたい気持はあるけれども、どうしたら知識が得られるのか、見当もつかない。
 とにかく、先生にいわれるように勉強しなさい、となる。引っ張るものがあるから、動き出す。自分で動くのではない。受身だ。
       〜(中略)〜
 ひっぱられる方は、なぜ、ひっぱられているのかよくわからないままひっぱられる。
 この初めの習慣は学校にいる間中ずっとついてまわる。強化されこそすれ、弱まることはない。そればかりか、社会へ出てからも、勉強とは、教える人がいて、読む本があるもの、と思い込んでいる。
 学校の最優等生が、かならずしも社会で成功するとは限らないのも、グライダー能力に優れていても、本当の飛翔ができるのではない証拠になる。学校はどうしても教師の言うことをよくきくグライダーに好意を持つ。勝手な方を向いたり、ひっぱられても動こうとしないのは欠陥あり、と決めつける。

では、本当の教育とは何か。熱心な学習者を受け持つことになった、優秀な選手を抱えることになった教師や指導者は何をするのがいいのか。

本書から読み解くと、その答えは「すぐ教えるようなことはしない。むしろ、教えることを拒む」となると思います。

じらせておいてから、やっと教える。
しかし、全てをすぐに教え込むのではない。

これは紐解けば、「教わる側の好奇心や探究心を奪う教育になっていないか、自問自答せよ」という我々教育者・指導者へのメッセージなのだと思っています。

よく、知識と知恵の違いでも話題にはなりますが、知っていることと「できる」ことも異なります。
自然にできていることでも、それを『応用』できるかどうかでも、その知恵としての有用性が変化したりもします。

これらが今叫ばれている「創造性の教育」なのかもしれないですが、これまでグライダー式の教育で刷り込まれてきた価値観を、教員・指導側が色濃くもってしまっているのは事実です。

自らが課題を見つけ出し、具体的に超えられるように目標をつくり、それを試行錯誤しながら解決する。そして、新たな気づきをもって次の課題を見つける。

このサイクルをいかに教わる側が持ちうるかといえば、「知りたい」という人間の知的欲求をどのように刺激できるかにかかっているのだと思います。

自分自身も、その方法論についてはまだ全く詳しくない初心者なので、学んでいこうと思っています。
その際に、最も大事なことは、お互いに「楽しいかどうか」、そして『もっと好きになること』なのだとも感じます。

親切が過ぎて、アダとならないよう。
教え過ぎて、口をあけた雛鳥のようにさせないよう。

これからも教育の道で自分も楽しみ続けながら、一緒に走っていきたいと思っています。

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今日はここまで。304日目おわり。
それではまた明日。

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【保有資格】
 博士(スポーツ医学 筑波大学)
 日本スポーツ協会公認バドミントンコーチ3
 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
 日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツコーチ
 日本障がい者スポーツ協会公認中級障がい者スポーツ指導員
 日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツトレーナー
 NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト
 NSCA認定パーソナルトレーナー
 高等学校教諭専修免許(保健体育科 茨城県)
 中学校教諭専修免許(保健体育科 茨城県)
 赤十字救急法救急員

【現在の大学担当授業】於:東京経済大学・千葉大学・東洋大学
 <体育実技>
  ●バドミントン ●卓球 ●バレーボール ●トレーニング理論実習
 <ワークショップ科目>
  ●テーピング・マッサージ実習 ●スポーツ医学理論実践
 <講義科目>
  ●健康の科学a ●健康の科学b ●スポーツとの出逢い


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