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カレーとナンとコロナ禍と

急にどうしてもカレーが食べたくなった。

それも、インドとかネパール料理屋さんのあのカレーだ。

こんなことはそうはない。

(疲れているのか?)と思いながら電車の中で、閉店時間に間に合うだろうか、途中下車の駅にカレー屋はないだろうか。と、スマホを覗き込む。

結局、自宅の最寄り駅で間に合うのでは、と急いで駅を出て「確かあのへんに・・・」あったインド料理かネパール料理屋へと急いだ。

「おひとりさまですか?」彫りの深い顔の店員さんが、マスクの下から笑顔で迎えてくれた。

「まだ、大丈夫?」店内の様子に思わずそう尋ねると「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と笑顔の返事。

店内は私の他に一組のお客さんしかおらず、なんだか、貸し切り気分である。

私が注文を終えると、「持ち帰りまだできる?」とお客が入ってきた。

長引く時短営業に、「まだ店は開いてるだろうか?」と夕食難民になっている人も少なくない

コンビニは開いてるだろう、家で作ればいいだろう、というのが、いとも気軽に飲食店の時短要請をしている知事たちの意見だろうか。

人は疲れた時、温かい物が食べたくなる。

それは、多分、色んな意味で温かいのだ。

コンビニも飲食店同様の営業時間になってしまったら、それは非常に困るが、笑顔で手料理をお皿に持って提供してくれる店とは全然働きが違うのである。

「ごはんもナンもおかわり自由ね」

お皿からドンとはみ出たナンとカレーをテーブルに置きながら、店員さんが笑った。

「えー、そうなの!」

このナンが全部食べられるかだよ、と心の中で思いながらちぎったナンを口に入れる。

焼き立てでまだ熱いくらいのナンは、フカフカしてカレーによく合う。

(こりゃ美味しい~~)

孤独のグルメみたいだな、と、そんなことを思いながら、大きなナンもご飯をどんどん口に入れる。

(ふー、お腹いっぱい)

帰ろうと立ちあがったところに、「サービスね」と、紙コップにポテトを入れて持ってきてくれた。

「持って帰っていい?」

もちろん、と、店員さんは首をうんうん、と縦に振った。

お会計を済ませ、袋に入れたポテトを持って私が店を出ると、店のドアにぶら下がっていた看板は「close」に裏返しにされた。

都内は夜は8時になったら明かりを消すよう要請が出たらしい。

娘はこの春、専門学校生になった。

授業がどうなるのかわからなかったので、片道2時間以上かけて都内に通っていた。

どうやら対面でこのまま行くらしいとはっきりしたので、一人暮らしをすべく物件探しを始めた。

4月の物件探しってどうなんだろう、と思っていたが、思いがけず、ポツポツと良い物件が出ている。

「空港関係者の方が結構引っ越されてしまったので、金額も少し下がって、空きがあるんですよ」と、不動産屋さん。

長引くコロナ禍の影響を思う。

「GW、ほんとは沖縄に行きたかったんだけど(家族旅行)コロナで行けない」中学生の女の子がこぼしていた。

体験することでしか得られないことを、経験することが難しくなっている。

それでも、ふかふかの熱々のナンを食べる機会を自分に与えることはできる。

どのような方向にも、あまりにも行き過ぎると必ずその反動が来る。

このまま社会が萎縮し続け、何かにつけ他人を責めるようなこの空気感がどこかで突き抜ける日がくるだろう。

青い海に行きたい、と思ったらすぐに行ける日が、来ることを祈りつつ。

良い週末を





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