香港終了と米中戦争への道

■国家安全法制
 中国が香港に国家安全法制を導入する話が明らかになると、トランプ大統領は怒りを公にした。武漢ウイルス(COVID-19)の調査で米中関係は悪化していたが、国家安全法制の話は火に油を注ぐことになった。アメリカは素早く反応し、中国からの留学生受け入れ制限の議論などで牽制した。

 アメリカの国務長官から、「香港の高度な自治が維持されていない」発言が出るなど、中国共産党を牽制。さらにアメリカ・イギリスは、「中国は香港返還めぐる約束と義務を守れ」と共同宣言した。

 香港人は5月27日に、国家安全法制を反対するデモを行った。300人以上が逮捕される事態になり、これは中国共産党の意志を示していた。実際に中国共産党は全国人民代表大会で、5月28日に香港に国家安全法制を導入する提案を採択。これで米中関係の悪化が決定した。

中国全人代、香港への国家安全法制の導入を決定
https://www.cnn.co.jp/world/35154509.html?ref=rss

■国家主権と一国二制度
 中国共産党が香港に国家安全法制を導入する意味は何か?香港人が拒否するだけではなく、欧米からも批判が出ている。中国共産党が香港に国家安全法制を導入する意味を結論から言えば、正式な一国二制度の破棄。

国家主権(国内三権・外交二権)
国内三権:行政・立法・司法
外交二権:外交・軍事

 基本的に国家体制は一国に一つ。国家主権とは国内三権と外交二権が存在し、外交二権は外国に委任することが出来る。外国に外交二権を委任した場合は連邦制になる。これは国内三権を持つ国が集まり、中心となる国に外交二権を委任。中心となる国が代表として連邦軍を運用し外交を行う。だから外交二権が無くても国内三権を持つ限り、独立国家として存在する。

 中国共産党と香港では国家体制が異なる。中国共産党の独裁体制と、イギリス連邦の一員だった香港政府では国家体制が別物。だがイギリスが香港を中国共産党に戻したことで、一国二制度が始まった。

■国家安全法制の意味
 香港政府は行政・立法・司法を持つから、香港は中華人民共和国連邦の一員に該当する。中華人民共和国の立法は国内限定で外国には適用できない。何故なら法律は国内限定であり、国外には適用しないのが基本。仮に国内法を外国に適用することは、外国の国家主権を否定する行為。

併合(annexation):国内法を適用する。

植民地(Colony)
1:移民地
 原則的に移民自治(現地政権・原住民無視)。

2:資源収奪・製品市場
 限定主権の原住民政権存続(保護国化)。

3:戦略的基地の獲得
 総督府による直接統治。

 併合と植民地の区分で言えば、香港は中華人民共和国に併合することを意味する。中華人民共和国の立法で国家安全法制が成立し、香港の立法を否定すれば併合。これで正式に一国二制度は消滅したことを意味する。さらに香港政府が中華人民共和国の立法を正式に受け入れると、香港は中華人民共和国の地方自治体に降格。

国内三権 (旧香港政府) :行政・立法・司法
地方自治体(香港自治体):行政・司法

 香港政府は中華人民共和国が立法した国家安全法制を受け入れると公言していたから、香港政府は率先して一国二制度を破棄。粛々と香港政府から香港自治体への道を突き進んでいる。これは一国二制度の否定だけではなく、香港人の消滅を意味する。

■アメリカの最後通牒
 アメリカは5月27日から既に中国共産党に最後通牒を送っていた。それでも中国共産党は国家安全法制を導入するから、米中関係が軍事衝突に発展する可能性が高い。

政治:香港の自治が失われた
経済:特別な地位の剥奪

 アメリカは政治と経済で対中政策を連発。香港の自治と特別な地位も剥奪発言は、中国共産党への間接的な宣戦布告に該当する。

妥協案 :相手国に餌を与えて自国が譲歩する(受動的・等価交換)
最後通牒:相手国が譲歩するならば自国が餌を与える(能動的・押し売り)

 アメリカは中国共産党に対し、「中国共産党が譲歩すれば香港の特別な地位を継続する。しかし自治が失われたら特別の地位を剥奪する」とした。これはアメリカの妥協案ではない。中国共産党への最後通牒に該当する。

 中国共産党が譲歩すれば経済的利益を与えるが、譲歩しないなら敵対行為と見なし経済制裁・軍事行動まで幅広く対応する。この典型例は、戦前のアメリカが日本に対して行った経済制裁であり、最後通牒のハル・ノート。

 ハル・ノートは、「餌を与えての譲歩の要求は妥協案であるが、譲歩すれば餌を与えるという条件は最後通牒」の典型例。戦前は日本に行われたが、今は中国共産党に最後通牒を突き付けた。

■歴史は繰り返すのか?
 アメリカは中国共産党と交渉は考えていない様に見える。香港の特別な地位剥奪に続き、ウイグル人権法案可決。アメリカは中国共産党を刺激することを連発しているから、意図的に怒らせている。理由は簡単だ。香港が中国共産党に組み込まれると、人民解放軍に有力な基地を与える。これは人民解放軍の活動が南シナ海で強化される。だからアメリカは譲歩すること無く中国共産党を怒らせている。
 
 国際社会では、軍隊を用いて先に開戦した国を悪の国にする暗黙の了解が有る。理由は今平和を否定するから悪なのだ。中国共産党から開戦すれば、アメリカは正義を大義名分に開戦可能。しかも人権・民主主義を守る看板を掲げることができるので、中国共産党からの開戦を意図的に生み出している。戦前は日本だった。今度も繰り返すだろうか?仮に繰り返せば、中国共産党は勝ち目の無い戦争を開始する。

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