中国は世界の敵

■二極化される世界
 トランプ前大統領が中国と対立し、反中国の軍事連合の土台を作った。アメリカ大統領選挙で敗北したが、撒いた種は芽を出した。それまでは中国の顔色を伺っていたが、2020年から徐々に反中国の動きが出始める。

 2021年からバイデン大統領に変わったが、反中国の動きは継続。フランス・イギリス・オーストラリア・オランダの軍隊が日本周辺に集まるようになり、露骨に中国を敵視するようになった。

 中国も反発するが、中国が譲歩しないので関係改善には至らない。それどころか、中国は貿易でオーストラリアと対立。味方を増やすよりも敵を増やす道を選んでいる。世界は中国によるウイグル人への強制労働を批判し、貿易で関係する外国企業への取引停止を求めるようになる。

 6月になるとフランス検察がウイグル人への強制労働に関し、外国企業への捜査を開始。さらに7月になるとアメリカは、上院でウイグル強制労働防止法案を可決。毎月何らかの形で中国を敵視する動きを続けている。

米上院、ウイグル強制労働防止法案を可決-新疆から輸入原則禁止
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■軍事的な二極化
 イギリス空母打撃群は、イギリス・アメリカ・オランダの艦艇で編成された連合軍。基本的には自国だけの艦艇で艦隊を編成し、外国の艦艇・艦隊と連携する。だがイギリス空母打撃群は異質。編成段階で三カ国連合軍だから、訓練の域を超えた編成になっている。

 編成目的が中国との戦争ならば、イギリス空母打撃群を攻撃すると、三カ国を同時に的にすることになる。これは集団的自衛権の一つであり、集団になることで仮想敵国からの攻撃を難しくする。仮に攻撃するなら、余程の覚悟が有る証。

 もう一つは、編成段階で中国を攻撃することが目的。中国からの開戦と、連合軍からの開戦のどちらでも対応できる様にしたとしか思えない。つまり、外交で中国を怒らせ、中国から開戦させる。これはウイグル人への強制労働などの人権問題と、貿易で中国を怒らせる。どちらも内政干渉であり、同時に中国への資金遮断が目的。

 内政干渉は国際政治の有力な方法だから、表の顔は言葉による指導力。外国の政治に干渉し、自国の都合が良い方向に誘導する。裏の顔は、相手国を意図的に怒らせる時に使われる。裏の顔は相手国から戦争を始めさせる策として使われるから、戦前の日本がABCD包囲網やハル・ノートで怒って開戦。

 国際社会は軍隊を用いて開戦した国を悪の国とする。何故なら開戦は今の平和を否定する行為だから、悪の国にされてしまう。これが国際社会の裏の顔。戦前の日本は、このことを知らないから開戦してしまった。

 多くの国は自国から開戦しない。だが国際社会には裏技が有る。先に開戦しても正義を得る裏技が有る。それは強国による平和維持を目的とした戦争。国際社会の平和とは、強国に都合が良いルール。だから今の平和を乱す中国と、悪の国として裁く戦争が裏技になる。

 どうやら欧米は、強国の立場を用いた中国への先制攻撃を想定していると思われる。だが、これでは策として見破られるし立場上都合が悪い。そこで古典的な策で中国を怒らせる。中国が怒って開戦すれば、中国を悪の国として裁くことが可能。仮に中国が耐えたとしても、ウイグル人への強制労働や香港人への人権弾圧をネタに先制攻撃可能。

 香港はイギリスの一部だったが中国に返還された。この時に、イギリスは中国と民主主義を50年間は維持する一国二制度を約束させた。だが中国は一国二制度を破棄。さらに香港人への人権弾圧を開始。これはイギリスの顔に泥を塗る行為。ならばイギリスは、中国への先制攻撃を行っても正義になる。そのためのイギリス空母打撃群であり、イギリス・アメリカ・オランダの連合軍と言える。

■これまでとは異なるアメリカの動き
 アメリカの戦争は、南北戦争から第二次世界大戦まで全面戦争が行われている。全面戦争とは国内戦争で使われる戦争で、敵対政権の否定・抹殺が目的。南北戦争以後のアメリカは、国内戦争向けの全面戦争を外国との戦争でも適用した。

 これでアメリカの戦争は派手であり、敵国を滅亡させるまで戦争する。これが原因で、ドイツと日本は名誉のために苛烈に戦争した。アメリカは第二次世界大戦が終わると、ドイツと日本の継戦目的から反省し制限戦争へ方針を変えた。

戦争目的
全面戦争(All-out war) :交戦国の政権を否定する
限定戦争(Limited war) :戦争目的が限定されている戦闘と交渉
制限戦争(controlled war):政治が軍事に介入する

手段・方法(戦い方)
総力戦(Total war):政治・経済・軍事の全てを用いる

戦争の傾向
全面戦争:総力戦になりやすい
限定戦争:総力戦が困難
制限戦争:軍事的不合理を克服して勝利を求めるほど総力戦に近くなる

戦争の結果
全面戦争:勝利者が有る戦争(敵国の滅亡)
限定戦争:勝利者が有る戦争(政治の延長としての戦争)
制限戦争:勝利者無き戦争

 アメリカは朝鮮戦争から制限戦争へ方針変更。制限戦争は、「敵政治意志の譲歩であって敵軍の撃破ではない」事になっている。だから制限戦争論は軍事的合理性からかけ離れている。何故なら、軍事作戦が外交から干渉と拘束を受けると勝利できない。実際に制限戦争を行なった朝鮮戦争は終戦が無い戦争。ベトナム戦争は、戦争の長期化と敗北で終わっている。

 だが今回のアメリカの動きは、これまでの政治・軍事とは異質。アメリカ主導の軍事行動ではなく、イギリス軍を支援する動きを見せている。実際にイギリス空母打撃群にアメリカ海軍の駆逐艦を組み込み、表向きはイギリス海軍だが、何時でもアメリカ海軍が参加できる状態にしている。

 しかもアメリカの外交は、戦争目的を限定している。これは戦闘と交渉が目的だから、政治の延長としての戦争になる。簡単に言えば、人民解放軍の撃破が目的。外交は軍事を背景に行うのが基本だから、敵軍を撃破することで戦争が終わる。

■避けられない戦争
 欧米は明らかに、中国は平和を乱す国と認識。イギリスとフランスは、軍隊を日本まで派遣し、長期的に駐留する動きを見せている。中国の覇権拡大が自国の国益を脅かすので、中国を敵視したのだ。中国が共存共栄ではなく独占で支配することが目的だと認識したので、戦争で問題解決を選んだことは間違いない。

 端的に言えば、中国はやりすぎた。グローバル・スタンダードの流れに乗り、中国経済は急成長。これで中国の軍事拡大路線が世界まで拡大し、気付けば欧米を怒らせるまで至った。増長と慢心が中国の失敗の原因。

 だが中国は過ちに気付くどころか、逆に中華思想を世界に押し付けている。これは中国を頂点とした世界の支配だから、欧米は団結して戦う道を選ばせる。そう、中国が欧米を団結して戦う様に仕向けたのだ。これでは戦争は回避不能だ。

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