【ぶんぶくちゃいな】崩れ去る価値観、なにが香港を支えていくのか

6月に香港を訪れ、その際に気づいた香港の変化、それもあまり好ましくない変化について「香港の『劣化』とそこに生きる人たち」でまとめた。

考えてみると、2019年のデモから今年でまるまる5年。この夏は「香港国家安全維持法」(以下、国家安全法)の施行からさらに4年が過ぎた。この2つの出来事をきっかけにまず選挙や議会制度、そして社会団体やメディアなど、目に見える社会事象の変化が起きた。さらにその後、そんな変化を目の当たりにして醸造された人心、あるいは意識面での変化が今年になって噴き出している。

そしてそれはすでに香港の中だけでなく、移民ブームの浸透や広がり、またコロナ後の不況も重なって企業や組織、業界活動などを通じて、じわりじわりと香港の外へとその影響が広がり始めた。それが2024年現在の香港を巡る環境となっており、今後言葉だけではなく、明らかな香港の世界的地位を定めることになる気がしている。

実際、この7月にはそんな予想を裏付けるような事件が立て続けにおきた。一つは、7月1日に香港記者協会(HKJA)の主席に就任したばかりの鄭嘉如(セリナ・チェン)記者が、勤め先だった「ウォールストリート・ジャーナル」(WSJ)に同月16日に解雇された事件。

もう一つは、香港で最も古い、人気調味料メーカーである「廖マ記(「マ」は「子」を左右に2つ並べた漢字)腐乳王」の突然の閉店騒ぎだ。

香港を舞台に起きたという以外にはなんの関連性もないように見える、これらの2つの事件の流れをほぼ平行して追っているうちに、これらの事件がそれぞれいろいろな意味での「『香港』終焉の始まり」を意味しているかもしれないと気付いた。それぞれの事件の内容をご紹介しながら、なぜ筆者が「『香港』の終焉の始まり」と呼ぶのかを説明したい。


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