【ぶんぶくちゃいな】「大砲」拘束の衝撃:火を噴いたポスト新型コロナ「内」戦

2月は「ウイルス対抗全面戦争」にのぼせ、一息ついたら3月になって海外に向けてつばを飛ばしてムードだけでも「戦後賠償」を求めようとした中国政府が、4月に入って国内の「戦犯」処理に入った――7日夜からばらばらとSNSのタイムラインを駆け巡った、元国有不動産企業の董事長、任志強氏の拘束、取り調べ情報を見たとき、真っ先にそう思った。

わかりやすいといえば、非常にわかりやすい。中国の「戦時体制」ムードについてはすでに何回かに渡って解説してきたので、過去記事を読んでいただくとして、つまり武漢も封鎖解除となり、緊張の糸がちょっとだけほぐれたので、やっとこれまで懸案になっていた物事に手をつけ始めたというか。

くだんの任志強氏は、すでに3月中旬から「連絡がとれない」と友人たちが騒ぎ始めていた。中国の日常に慣れていない人にはそれがどういう意味を持つのかピンとこないかもしれないが、かつてSNS「微博 Weibo」(以下、ウェイボ)で3800万人のフォロワーを持ち、超著名企業家である任氏と連絡がつかないことを、彼の周囲が敢えて公共の場で騒ぎ立てたのは、それ自体が明らかな社会に向けたメッセージだった。

これは「日頃から親しい我われですら任氏本人の行方がつかめない」、イコール「我われ親しい人間とは違う世界の人間が彼の居所を知っているはずだ」、つまり任氏が当局に拘束された可能性が高い、と公的に宣言したのである。もちろん、まだ当局がその対応を公開していないときに断言するのは危険がある。だが、こっそりと人びとの目を盗むように起こったこの事件を世の中に明らかにし、人びとの注意を喚起した。そして、現実にこの喚起はさざなみのように人びとの間に広がった。

任氏の友人たちの呼びかけには詳しく述べられていなかったが、その後、任氏とともにその息子と秘書も姿を消していることが明らかになった。これは明らかに異常事態だった。

●不動産開発業者トップ「三羽ガラス」たち

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