【ぶんぶくちゃいな】中国サッカー「汚職取締り」大キャンペーンにちらつく、「サッカー好き」国家指導者の影
昔からオリンピックなどの季節になると、卓球やバレーボールなどが中国の「国技」だとよく言われてきた。
現地に暮らしてみるとわかるのが、いわゆる「ピンポン外交」はさすがにもう過去の遺物となったものの、たしかにまだまだ強豪選手がたくさんいる卓球はイザ国際試合となると大きな注目を浴びる。ただ、今どき卓球に興じる若者の姿を目にすることは20年ほど前に比べてずっと少なくなった。
バレーボールも同様である。女子バレーはまだ年配の人たちには人気のスポーツのひとつだが、ただし、それはご本人がやるのではなくもっぱら観戦のほうだ。まだまだ体力が有り余っている若者がバレーボールを楽しんでいる様子もまた、ほとんど見ることはなくなった。
一方で、見かける機会が多いのはバスケットボールとサッカーだ。バスケは中国で米国のテレビ番組が普及するのとほぼ同時に人気が広がった「アメリカンチックな」スポーツである。中国が米NBAに送り込んだ姚明(ヤオ・ミン)元選手の活躍でますます広まり、今では米国チームで活躍した選手を中国のチームが引き抜くことができるほどの勢いをつけており、それがまた若者たちの夢を誘っている。経済不振の影響で、最近ではバスケ関連の話題もあまり活発には出てこないが、中国バスケットボール協会の会長に就任した姚氏のもと、若者世代に楽しまれるスポーツとしてすっかり定着した。
だが、中国人社会が一丸となり、最も熱くなれる競技はよくも悪くも間違いなくサッカーだろう。
「良くも」というのは、プロリーグの試合のある日はあちこちのレストランやバーで試合が中継され、わいやわいやとそれを見ながらにぎやかに過ごす人たちの多さだ。そして「悪くも」というのは、ファンたちの熱い期待と応援にもかかわらず、国際試合を勝ち進めないことである。
筆者はもう何年も何年も、友人のサッカーファンたちが「中国サッカーはダメだ……」とため息をつく姿を見てきたが、それでもアジアカップやワールドカップ、そしてオリンピックを前にすると、また彼らの口から「サッカーが」と飛び出してくる。だが、2022年のカタール・ワールドカップ出場権をかけた地区予選では62年ぶりにベトナムに負け、中国ナショナルチームは「国辱」とまで言われて激しい罵りを受けた。
だが、同年11月にはかつての中国サッカー界の花形スター選手であり、ナショナルチームの李鉄・元監督が八百長試合や「サッカー界の汚職」に絡んで拘束されたという報道が流れると、そのファンたちの中からは失望というよりも悲鳴のような声が漏れた。
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