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オンラインコミュニティでLinebotを作ったよ!(SHIP:夏休み自由研究)

私の入っているオンラインコミュニティSHIPでは、夏休み自由研究として数チームに分かれて、「1か月ちょっとでなんか成果を出せや!」というイベントがあります。
実際、そんな強圧的じゃないんですけどね。去年なんかは

病院見学して飲み会をして終わり

というユルユルさです。
昨年がこんなのだったので、今年も継続して「IT研究チーム」に加入した私でございます。

ただ、何故だか今夏はかなり気合が入ったメンバーが多くて

感染管理用Linebotを作成して、実際の企業に導入&学会発表まで行う

というハイパーな成果になりました。
その活動の末席に置かせていただきましたので、そこから見えたこと、気づいたことをまとめておきたいと思います。

1.チームとしてやったこと

あまびこ

・感染管理を目的としたLine Bot作成(Line健康管理ツール「あまびこ」)
 Line Bot Designerでアウトラインを作成し、Phythonでプログラミング
 FireBaseでサーバ管理、Githubで開発管理する
・4組織でトライアルとして実装、うち2組織で継続運用決定
 まだ参加してくれる組織増えそう。
・学会発表

いや、これ1か月でやる内容じゃないよね。。。

2.自分がやったこと

・プロダクト企画(基本機能、設問、命名など)
・要件整理および要件定義
・プロダクトのワークフローの作成
・マニュアル草案作成
・運用支援
・プログラミングへのトライ
 Github、LBDとか触ってみた。必要なプラグインとか入れてみた。
・費用削減シミュレーション

それっぽく書きましたが、周りの皆さんが凄すぎて。。。
ついていって、少し穴がありそうだったらそこを埋める、みたいな役割でした。

3.振り返り(よかったこと)

テーマ設定の新しさがあった

SHIPは「医療スペシャリスト(有資格者)が多数派のコミュニティ」であるため「患者がいて、治療やケアを行う一連の流れ」の中に課題を見つけられて、それをテーマとして挙げられやすいなぁと思っています。

「何らか心身のトラブルが起きた状況や人に対して、医療を届けるか」

という共通的な問題意識のようなものがあって(誰かが強いているわけでも、ひっぱっているわけでも、ましてやコミュニティの中でのルールでもないが、最大公約数がここになっているという感じ)、この壮大な問題を色んな切り口にして解決していこうとするテーマが多い気がします。厳密な統計はとってないけど、そういう印象です。
医療者とすれば日々診療を行い、患者やその家族らを通して向き合っている課題でもあると思うので、身近な問題だからというのもあると思います。

他方では、Covid19の影響もあって、

「健康な人や一般社会が『医療』をどう扱っていくか」
「医療は健康な人や社会が健やかに過ごせるように、どう支援できるか」

という視点が、社会全般に生まれ、急速に発展していると感じています。

昔からジムに行ったり健康食品食ったりして、「健康を維持、あるいは強化する人」っていうのはいました。ただ、Covid19により、社会的なパンデミック(感染的にも、情報的にも、情緒的にも)が発生したことにより、元々健康意識が高い系の方々に限らず、まさしく老若男女が「自身の健康を少なくとも維持したい」と強く思うようになりました。その結果として、手指衛生やマスク着用の徹底という行動変容にもつながりました。

今回の感染管理Linebotは後者側、つまり「健康な人や社会がマイナスにならないようにするために、医療をどう活かせるか」という発想から生まれたテーマです。
このテーマ設定にしたことによって、対象が「患者やその家族」ではなく、「健康な人(従業員や学生)」となりました。

また、製品開発の議論でも大きな違いがありました。
今までの視点では「医療サービスの改善」というものがベースでしたので、

医療にITを取り入れる(IT⇒医療)

という発想で議論が進められていました。
この場合の多くは、医師や看護師、もしくは患者の悩みや不満を話します。あるいは、「こういう風にやったら出来ると思うんだよね」という提案をします。それに対して、SEなどの他職種が「こんな感じでITを活用できるとおもうよ!」と、ノウハウを注入する感じです。

今回は「社会全般の健康を守るための医療知識の活用」という異なる視点での取り組みだったので、議論のやり方から違っていました。
まず、企業やユーザー側で起きている業務の悩みを聞きました。
「こんな感じで感染管理をやっています。より効率的にやるにはIT化したいのです。加えて、医療的に有効な方法はないでしょうか」
という感じです。
そこに対してSEが仮説提案し、医学的な知識を医療者が授けていきました。
つまり、上記と矢印の方向が逆転して

ITに医療のノウハウを注入する(医療⇒IT)

形での議論となりました。

ですので、ターゲットと医療の関与方法(プロセス)が異なっていて、当コミュニティでは比較的新しく、面白いテーマ設定をしたなぁ、と振り返ってみて思います。

メンバーの「できること」がちょうどよくばらついていた

ITチームの主要メンバーは7名でした。他にも協力していただいた方はたくさんいるのですが、略儀的に省略させて頂きます。

【ITチーム主要メンバー】
・医療者:2名(tokkunさん、たかひろさん)
・SE:1名(Kinoppixさん(ツヨツヨ))
・デザイナー:1名(しるこさん)
・ユーザー(事業運営者):1名(NoGucciさん)
・PMO:2名(ごえさん(PM)、自分(アシスタント))

SHIPは医療コミュニティなので、医師や看護師など医療国家資格ホルダーが多数なのですが、ITチームではレアキャラとなっていました。このあたりも異質だったんですね。やっている間は全然気にしなかったけど。
ただ、この多様なメンバーだからこそ、企画から導入検証までの全工程をチーム内で完結出来ちゃったという感じです。ダイバーシティのよさを感じますね。

ざっくりとした工程と、主として関与したメンバーは以下の通りです。

【企画】
・現場の課題と医療的な知識を結びつけ(医療者・ユーザー)
・結び付けたものからプロダクト企画立案(全員)
【設計・開発】
・企画の要件定義を落とし込み(SE・医療者・PMO)
・ユーザーと医療の距離感を調整(デザイナー・医療者)
・開発と改修(SE)
・要件との整合性や全体管理(PMO)
【導入・検証】
・プロトタイプ導入(ユーザー・SE・PMO)
・製品へのフィードバック(ユーザー)

基本的には全員がすべての工程を注視して、適宜やいのやいの声出ししていく感じだったのですが、あえて書くなら上記のような感じです。
企画にユーザーが入ってくれているから、「理論上は正しいけど使えないよ」みたいなものにはならない企画になっているし、
医療者がずっと入ってくれているから、「いや、これじゃ感染防げないよ」ということにもなりません。
デザイナーも企画当初から参画しているから、プロダクトの設計思想に理解があり、医療的にも意味を持たせたものになっています。
なにより、「導入できるよ!」ってNoGucciさんやtokkunさん、たかひろさんが言ってくれていたので

「作ったけど、どこで導入してもらおう?」
「果たして日の目をみるのかしら?」

という懸念が全くなかったのも、プロジェクトに参画するモチベーション維持に大きく寄与していたと思います。
私を一応「PMO」という役割として書いてみたけれど、まぁ正直そんなに動けなくて、皆の議論を聞いて、ちょろっとフロー書いたり、マニュアル作ってみたりしたけれど、全部ごえさんをはじめとする皆さんが改良し続けてくれて、「こんな子産んだかしら?」ってぐらい素晴らしいものが、あっという間に良くなっていく状態でした。(特にマニュアルは別人になってた)
そんなこんなで、「うわぁ。。。」って思ってるうちに、すごいことになってた、という印象です。
なので、正確にいうと僕の役回りはアシスタント&にぎやかしって感じです。

色んな背景や専門性、やれることもバラバラ。だけど必要なパーツはそろってて、向かう方向は一緒。
すごいメンバーの方々でした。勝ち馬に乗ったわ、これは。

フォロワーシップと相互尊重の取り組みが多くみられた

上記で挙げた役割はあくまで「その人のメイン(と思われるような)役割」であって、実際の活動はその範囲を超えあっていたように思います。
Tokkunさんが開発支援したり、しるこさんが要件定義の部分の漏れを確認してくれたり。
たかひろさんもユーザー側に回ってくれたりと、みんな出来ることをやるっていうのが自然と回っていました。
「指示したことだけやれ!」って誰も言われないし、「指示したこと以外もやれ」って誰も言われないのに、めちゃくちゃ自然に意見を出し合って、補い合って、拡大しあってた感じです。
ただ、開発のど真ん中はKinoppixさんにお願いせざるを得ない状況にあったので、大変負荷を高くしてしまったなーと思いました。
なので、みんな出来る範囲でkinoppixさんの負荷を軽減しようと付帯的な部分を獲りに行ってた印象です。これも自然発生的。シンクロニシティを感じました。
運用とか、ドキュメントとか。学会発表の案も急遽出てきたけど、tokkunさんが仕上げてくれたりしたのは感動的でした。

がっかい


私個人としては、このあたり「頑張ったら出来そう」な領域だったのに、がプライベートの都合で獲りにいけなかったのは反省です。ほんとすみません。

4.今後への活用

「医療」の役割を広義に捉える

病院に勤めていたりすると、どうしても

「医療=治療や臨床」

となりがちな気がします。
そしてその正道を突き進んでいるのは病院だという自負も生まれ、式変形して「医療=病院」という思考の枠組みが生まれているのでは。
ましては私のような事務の人間は、そこから更にこじらせて「医療者=神」「診療報酬=唯一無二の収入源」等、いくつかの「病院独自の方程式」が染みついてきちゃう気がするんですよ。
昨今、正にCovid19によるHealthtechの隆盛、あるいはバブルが興っているわけですが、医療専門家の方々の一部から

「オンライン診療?まともな診療できるわけねぇだろ」
「そんなことしてねぇで、病院の為に診療報酬上げろ!」

的な意見や批判がちらほらと挙がるのは上記の方程式が応用され、言語化されたものだと思うのです。

一方で、一般市民の視点に立ってみればどうでしょうか。
医食同源という言葉も定着し、「マグロが認知症予防になる!」とTVに出ているエライ先生が言えば、スーパーからマグロの刺身が姿を消すなんてのは当たり前。
メタボが健康に悪いと聞けば、ひいひいふうふう言いながらダイエット。フィットネスジムもどんどん増えています。
風邪症状がでれば、OTC薬と葛根湯を飲み、ちょっと長引けば病院に行くのです。
健康な時はマグロを食って、体を鍛える。体調が悪くなれば病院に行く。
つまり、

「医療=「健康でいたい」という欲求をかなえてくれるもの(の1つ)」

という、医療関係者が考えるよりも、もっと広い意味が含まれると思います。

今回のCovid19でも、健常な市民にとっては「健康を保ちたい」という欲求しかなく、その欲求をかなえるために「医療を使いたい」のです。
ここでいう医療とは必ずしも病院に行くことではなく、医療的な見識を得て、医療者の指導(マスコミュニケーション経由でも可)を受けて、それを実践するということです。

だから、より簡易に、自分がリスクが少ないと思える方法で、健康を保てるのであれば、そちらを使いたいと思うです。
「○○がCovid19に効く!」と分かれば飛びついてしまうのと同じように、
「オンライン診療であろうと、病院であろうと、なんであろうと、自分を健康にしてくれればいい」のです。

こういった欲求に応えるために「医療」ができることは、治療や臨床だけではないでしょう。もちろん、今回取り組んだIT活用やその他のHealthtechだけでもないと思うのです。
地域の経済や行政と病院が連携して、より生活に応じたサービスを展開するというのもアリだと思うし、臨床研究を地場企業と進めていくというのもアリでしょう。

医療をもっと地域社会へ価値を還元していくために、
病院はもっと何か出来るのではないか

という思想は私のような事務方の働くモチベーションにもなります。

専門性や誰かに頼られる何かを掴む

30代も中盤に差し掛かろうという頃にこんなこと言うのは恥ずかしいですが、全然能力が足りてないなぁというのを改めて実感しました。
医療のプロではないですし、開発もできない、絵も描けない。導入権限もない。
空いているスペースのPMはごえさんという同世代のすげー人がいました。
私が書いた超絶イケてないマニュアルも「ごめん!お願い!」と頼めば1,2日でハイパークオリティまで仕上げられて、「あ、俺の役割無いなー」って正直思いました。

事務方って基本能力の項目って限られていると思っているんです。
ミルクボーイよろしく「コーンフレークの8角形」みたいなものですね。

フロスティ


ごえさんは極めて大きな5角形。コーンフレークのような形です(牛乳込み)
かたや、私は比べられる「パン(トースト)」の栄養素しかない。
こうなると飛び道具を持つか、能力を鍛えるしかないよなと身につまされて思いました、ほんとに。
ただ、そう思ったところで鍛えるのは時間がかかるので、しばらくは日本ハムファイターズ所属の杉谷拳士選手のように
ヤジりと声出しの役割を担っていきたいと思います。

すぎや

いいひとと仕事すると、楽しい。褒めあうと、もっと楽しい。

ブレストとか企画の段階で「うわぁ!たのしいねー!」ってなることは多いと思うのですが
これを「じゃあ、みんな!これこれやってね!」ってなった瞬間に急に覚めちゃって
「えっ・・・面倒です」「こんな要件じゃできないよ」「言い出しっぺがやったらいいと思いまーす」
みたいなのってないですか?
いや、お前ら5分前までノリノリやったのにどうしたん!?みたいなやつ。

これが全くありませんでした。ちょっと遅れたりはするけど、基本的には日々進捗、日々議論。

最大の要因としては「とにかく一歩目が早い」ということです。
ブレストの翌日にはKinoppixさんが完成形ではないけど、「こんな感じすよねー?」ってサンプルを作ってくれていたんです。
一歩踏み出すと、次の一歩はすぐに出るんですよね。このテンポがずっとあった感じです。
いや、あれは思うとKinoppixさんが

「はい、このプロジェクトはこのペースでやりまーす」

っていう宣言だったようにも思えます。
兎にも角にも、このペースがずっと続いていました。開発だけでなく、デザインも、導入も、学会発表においても

「やる?」⇒「やりましょ!」⇒「おけ、こんな感じ?」

が早かった。そこから、

「もっとこうしたらいいんじゃない?」⇒「いいねぇ!さすがっす!」

が繰り返しされていく感覚は刺激的でした。
人間の恒常性(郷に入れば郷に従う理論、住めば都理論)と、報酬系(豚もおだてりゃ木に登る理論)を上手く使って仕事をすると
楽しいが継続する、あるいはどんどん加速するんだなぁと思いました。

5.まとめ

仕事ではない部分で、楽しく「仕事」をするのはとても気分よく過ごすコツだなぁと思いました。
Third Placeの在り方として、「何かを一緒にやってみる」というのは凄く自分の中では大事だったし
そこに還元できる何らかを持ちたいなと改めて思える夏休みの課題でした。
みなさま、ありがとうございました。

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