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運用終了した衛星は何年で廃棄処理すべきか

 運用終了した衛星の廃棄措置の時期を、現行の25年以内のままでよいか、短縮すべきかの問題。産業界は25年は「長すぎる」と言い、NASAの研究者は5年にしてもメリットはないと指摘した。

 コスト増を考慮すれば、大抵、産業界が25年を維持したいのではないかと思ったが、そうではないようである。その一方で、研究者が短縮すべきではないといっている点が面白い。ただし、NASAの研究者なので、環境保護や規制強化に一辺倒ではなく、産業コストを考慮する側に立つのは当然かもしれない。

 その研究者によれば、25年ルールを90%実施していれば、2210年頃には10cm以上の物体数は、110%の増加に止まるという。しかし、5年ルールで90%実施したとしても100%に止まるだけだという。「統計的には意義のあるメリットはない」と指摘した(※冒頭の図表:J.-C. Liou, Risks from Orbital Debris and Space Situational Awareness, 2nd IAA Conference on Space Situational Awareness, Washington DC, January 14-16, 2020.)。彼によると、問題なのは25年ルールが50%しか実施されていないので、実施すべき内容の問題ではなく、それを遵守しているかどうかの問題であると指摘している。運用終了の時点をいつにするのかが不明確で、その遵守のありようは「複雑」であるという。

 確かに、遵守状況が芳しくないのでそれ自体問題であるが、物体数は現在の倍以上増加することになるし、その物体数のうちデブリがどれだけ増加するのかが、この調査では明らかになっていない。25年ルールの廃棄措置は、物体数の増加率をどれくらい抑えられるかどうかの視点だけでなく、コントロールできない物体が25年も存在し続けることのリスクを検討することも必要だと思う。

 ちなみに、彼は短期的には大型デブリよりも微小デブリ(1cm以下)の方が衛星にリスクを及ぼすとしている。しかし、微小デブリはその所有者を明らかにすることが困難である。国際関係上、衝突で問題になるのは、所有者は判別できるがコントロールできない衛星との衝突になるだろう。


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