スキースノーボード盗難のソリューションを考えてみる

今年もウィンターシーズンが迫ってきて、スキースノーボードの話が盛り上がってきましたね。

毎年この時期に聞かれるのが「スキースノーボード板の盗難」です。多いんですよね、盗難……。私自身は遭ったことないのですが、知り合いで盗まれたという話はよく聞きます。

けど毎年問題になっているわりには、ソリューションが少ない気がして。これからインバウンド旅行者も増えていき、各スキー場の対策は必須になっていくと思い、海外事例を中心に調べ考えてみました。

スキースノーボードの盗難は海外でも大きな問題

スキースノーボードの盗難は、日本だけでなく世界のスキーリゾートでも問題になっています。

板って高価なわりに車のようにカギがかかるわけでもなく、雪上という環境的にも板の構造的にも、完全にロックしておくことが難しい。

スキー場では、屋内にはロッカーやカギ付きの棚があることもありますが、基本的には直置きがふつうです。ラックに立てかけるか、雪に刺しておくか、混んでいてスペースがなければレストハウス前などの地面にバフっと置いておくか。

そんな無防備なのに7〜20万円くらいしたりするもんだから、転売目的の盗人からしたら恰好のターゲット。防犯カメラもあまりないので、もはや「雪山に来る人はみんな友達」みたいな性善説で成り立っているようなところがあるのです。(そんな無茶な)


“snowboard theft prevention”で検索すると470万件ほどの検索結果があり、いろいろなブログが盗難防止対策を紹介しています。

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なんと、カナダのカルガリーでは、よほど盗難の届け出が多いのか、市警察の公式サイトに記事が掲載されていたりも。Ski and snowboard theft prevention|CALGARY POLICE STATION


様々なサイトを総合すると、対策として紹介されているのはこんな感じ。

・専用ロックやワイヤーロックをかける
・目の届かないところには置かない
・目印をつけたりステッカーを貼ったりする
・盗まれたときのためにギアの写真を撮っておく
・ギアのシリアルナンバーを控えておく
・なるべく鍵付きのロッカーを使う
・(スキーの場合)左右を分けて離して置く

ふつうですね。当たり前すぎて、だから盗難が減らないんだなって感じがします。けど最近はテクノロジーもいろいろ出てきて、奮闘が見えます。

海外リゾートではロック機能付きラックを導入

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日本ではまだあまり見かけない気がしますが、海外のリゾートで採用されつつあるのが、SnowDocK® というロック機能付きのボードラック。

前後に6枚ずつ板が収納できて、斜めに揃っている様子はディスプレイ感すらありますね。海外の高級スキーリゾートの雰囲気にマッチしそうです。サイズ問わずOKでスキー板も入れられ、ロックシステムも簡単で頑丈。

プロモーション動画もあって、褒め称えられてるんだけど、、、

でもまって。片面に6枚って、少なすぎ。

日本のスキー場の、土日の、あの板が溢れかえっている様子を想像してみると……。とてもワークする気はしませんね笑

スキースノーボード板専用のワイヤーロック

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まあロックも販売されてるんですよね。

BURTON、eb’s、DAKINEなどのメーカーも出しています。卵型なのが特徴のようで。

でもワイヤーが切られて盗まれったて話も全然あって。ペンチとかを使えば切るのは簡単なので、悪質な盗難犯には効かなさそうです。

そもそもですが、ロックいちいちかけるか?て言ったらかけないんですよね。少なくとも私はかけません。。

ただでさえスノーボード中の持ち物ってあまり増やしたくないので、ロックを持ち歩くのは厳しいです。さらに寒い中ワイヤーをまわして数字のダイヤルをずらして……って、けっこうハードなことだと思うのです。

盗難・紛失防止トラッキングデバイス

実は、スキースノーボード板専用の紛失・盗難防止トラッキングデバイスなんてものもあります。

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それがこのNeverLoseという商品。オーストラリアで、Ski and Snowboard Tracker & Anti-Theft と題してクラウドファンディング発で売られていました。

小さなBluetoothデバイスを板に貼り付けておくと、スマホと一定距離が離れるとアラートが鳴るという仕組み。GPSでトラッキングもできます。

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若干VOLC◯Mのシンボルっぽい形だし、板に貼っておいても違和感なさそうじゃないですか?(重いのかな?)


こちらも動画がありますので、どうぞ。

この商品、海外のクラウドファンディングサイト「INDIEGOGO」で2015年に出ていて、約AUS$60,000を達成してサクセスしています。個人向けから小売業者向けパッケージまで完売しているので、けっこう人気だったようです。メディアにも多く取り上げられてる。

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別の商品で、スキー板のビンディングのところに埋め込んでおき、離れるとアラートが鳴るSnowboard Theft-Preventing Alarmsなるアイテムもありました。

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小さくてわかりづらいけど、こんな形状のもの。内蔵チップがアラートを発します。海外では日本以上に盗難が頻発する地域が多いので、Anti-Theft Devicesというカテゴリは一定の市民権を得ている感じがありますね。


 スキースノーボード板専用のものでなくても、紛失防止タグ(=スマートタグ)はアメリカを筆頭に、ここ数年でいろいろ出てきています。

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米国ナンバーワンシェアの製品は「Tile(タイル)」といって、キーホルダータイプのものから小さなカード型のものまで種類が豊富。これを付けたり入れたりしておけばトラッキングができるということで、お財布・スマートフォン・カードケース・鍵などの小物に付けることを主に推しています。

個人的には、紛失・盗難防止デバイスは11月くらいにスキースノーボード板盗難向けになにかやったら売れるとずっと思ってるんですけど、やってるところないですね。単純だけど、

・リフト券とセットにして売る
・レンタル店と組んで板とパック貸しでお試しプロモーション
・リゾートバイト派遣会社の採用祝プレゼントにしてもらう
・雪のなかに埋めて探すイベントをやる

とかやったら面白いと思うのでぜひ。(何かとPR視点で考えてしまう癖)

「悪意」にどこまで立ち向かうかが課題

スマートタグ系は、プロモーションという意味では相性がいいと思うのですが、本当に実用性があるの?といったら厳しいかもしれません。「紛失防止タグ」というカテゴリでいうと日本製のものもあるのですが、それも基本的には、

「失くしモノ・落としモノ・忘れモノ」

を使用目的としているからです。貴重品の紛失がトップイシューなので、「盗難」に最適化しているわけではないんですよね。

「紛失」と「盗難」の決定的な違いは、そこに悪意があるかどうか。キーホルダーテイストだと簡単に取り外しや切断ができてしまうし、シールタイプのものも余裕で剥がせてしまう。悪意に抵抗できる仕様にはなっていないのです。

先ほど紹介したNeverLoseも、メインの用途は、パウダーを滑っててスキー板が外れてしまった!というときに見つけやすくするというのが主な目的でした。(けどこれは「盗難」も2番目くらいの課題として訴求しているので、ひとつソリューションとしてはありだと思う)

わからないように埋め込んでおくなどの方法もありますが、特殊な加工をしないとむずかしそうで、誰もが気軽に使えるようになる未来は遠そうです。

「盗難したら損」、きちんと制裁される仕組みを

個人が盗まれないように対策をするのではなく、「盗難したほうが損をする」というような仕組みをスキー場が作れるのが一番です。ただ置いておくだけでも盗まれない、というのが最高。

たとえばですが、中国では無人コンビニが増えつつあるけど、盗難ってゼロなんですよね。その理由がこちらの【無人コンビニ時代の到来】中国無人コンビニでほぼ盗難ゼロのその秘密、「盗難したら損」の状況を見事に構築という記事に書いてあります。

・入店時にIDが必要で、個人を特定される
・店内には防犯カメラやシステムが張り巡らされている
・もし盗難者になれば信用スコアが減っていくのみ

スキー場でも、論理だけで考えればこの仕組みはできるはず。リフト券購入にID提示を必須とすればデータで紐付けられるし。(余談ですが、日帰り温泉みたいに入場時にバーコードを渡されてスキー場内の決済がすべて集約される日も遠くないと思う)

防犯カメラは、積雪・混雑状況の確認にもなるので、設置しない理由はないと思います。YouTubeで常にライブ配信しておくという発想もTwitterで見かけたけど、いいですよね。

信用スコアの話は面白いので、気になる人は【中国 信用スコア】などで検索どうぞ。

が、しかし、日本のスキー場はなかなかにフットワークが重いので、現実的にはこういうことは進まないのでしょう。。カメラ安いのに。。

いろいろと発想次第でできることはありそう

結局、スキー場頼みになってしまうのも、なんだか悔しい。

やっぱり盗難を防ぎたい個人がネットワーク化して、啓蒙をしていくのがいいのかなーと思ったり。SNSで盗難情報が集約されるアカウントを作って、それを任意のアソシエーションのように動かして、ラックのところに「このエリアはXXXの巡回範囲内です」と張り紙をしてしまうとか。

オンオフミックスの施策でそのアソシエーション的なものの認知度を高められれば、ある程度の監視・抑止力にはなるんじゃないかな。

ジャストアイデアですが、できそうな感じはする。なんかタイトル含め横文字を使いまくってしまったのは、わざとです。


なお、スノーボード買取モンスターのモンスタークリフさんが、今年もスキースノーボード盗難情報の集約を行っています。素晴らしい取り組みですね!万が一盗難にあってしまったら、こちらへの投稿もしてみることをおすすめします!

大切な板が、持ち主のもとを離れることがこれ以上ありませんよう。。

おわり。



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