新人弁護士の雑記(2)

 ごきげんよう。本当は毎日たったか記事を更新できればと思うのですが、なかなかうまいこと行かないもんですね。

 今日は、実務修習地に行ってから、検察修習まで振り返りますか。感染症で自宅待機が始まる前、2月末くらいまでのお話です。

⒈ 見知らぬ土地に独り言つ

 12月25日に導入修習最終日があり、3つの県の修習地に赴く修習生たちで構成された一つのクラスもいったん解散となりました。一か月という短い期間ですが、収集地に限らず仲良くなり、松屋の出張販売のお弁当を研修所で食べ、ゲームをしたり、飲み会をしたり、カラオケをしたり、体育館でバスケをしたり、夜な夜な寮で麻雀をやったり、2.5次元のコスプレをする謎の修習生が現れたり。

本当に学生生活に戻ったような日常を一か月過ごし、10月に集合修習で再開することを誓って盛大に飲み会をして各地に分かれていきました。そのころはまさかあんなことになろうとは。

そこから実務修習地に行くのは、人によっては年末だったりしたのですが、私は引っ越し準備ができておらず、見知らぬ土地で一人過ごすのも嫌だったので年始に移動しました。年末に移動した人は修習同期と過ごしたりして仲を深められていたそうなので、どういった移動スケジュールにするかは自分でイメージしてみるといいですね。私が年始に移動した日にもクラスの友達と飲みましたから、寂しい思いはせずに済みましたね。

ただ、ついた日に同期と会うまではとても寂しかったです。見知らぬ土地で内見をせずに選んだ物件は壁が薄く、落ち着かない感じで、最寄りのミスター○ーナツでコーヒーをテイクアウトしたらストローが渡されず。スーパーのローカルルールも教えてもらえず。「なんてよそ者に厳しい土地だよ・・・」と何もない家で一人つぶやいたのです。

⒉ 検察という組織へのイメージ

私の修習は検察修習からだった。検察のイメージは、固い、体育会系、厳しいという何とも凝り固まったイメージ。緊張していた我々を待ち受けていたのはそのイメージをあまり覆すことのないインターネットから隔絶されたパソコン、スタンドアロンパソコンと一太郎であった。

検察修習は全修習のなかで最も情報セキュリティが厳しい。パソコンは持ち込めないし、インターネットに接続しているパソコンは限られていたため、必要であれば、修習生指導担当付きの検察事務官に頼み使用させてもらうことになる。証拠はほとんど警察から挙げられているため、インターネットが必要な機会は地図の確認や、証拠として地図を出す場合、あとは具体的な量刑の相場検索など限定的であった。

司法修習生には指導担当検察官とその事務官が担当についてもらうことになる。初日は顔合わせとして、この二名についていき検察庁の中身をまるっと見学できる。この先もなかなか見る機会はないと思うのでこの機会にいろいろ見ておいた。その後検察はいきなり、二回試験でももっとも難しいと言われる、検察起案を起案することになる。起案の成績を良くしたい人、特に任検を狙う人は、事前に対策しておかないと時間切れや悲惨な評価をいただく可能性があるので注意してほしい(導入の復習で良い、私はまったくやらずこの起案で泣きを見た)。

起案後には、各修習生がペアとなり事件が配転される。基本的には、私の修習地では、世間が平常時であるという前提で、修習生1人につき在宅事件が1件、ペアで身柄事件を1件やるのが最低ノルマであった。私はこれに加えて身柄にくっついて在宅事件が降ってきたので、ペアで合計4件処理したことになる。これは、当地基準だが、これくらいで毎日残業なしで帰れるくらいの業務量でした。人数の少ない修習地だと、一人ノルマが多くなり、残業しないと終わらない等結構大変になるところもあったみたいです。

事件処理は、ペアで主任と副主任を行い、事件について記録を読み、被疑者取調べを行い、実際に修習生が調書をとることになります。被疑者から、事実を聞き出し、そこで聞きだした事実を口頭で主任が再構築して、被疑者が供述した内容として読み聞かせる、口授という過程があるのですが、これが本当に難しい。ある程度準備していても、被疑者は思っていた通りのことを言いませんし、それを聞き取ったその場で整理し、構成要件該当事実を漏らさずに書面に落とすために何を言うか。そして記載すると決めたことをどのように表現するか。一発目でできることではない。。。ので、ペアの人が主任にしか見えないパソコンでアシストしてくれたり、事前検討メモを見せてくれたりして何とか乗り切る(メモを詳細にしすぎると都合のいい調書になってしまうのでダメです。気を付けよう。)。

調書ができたら決裁官に自分が考えた処分を通しに行くが、ここも難しい。法律論でめちゃくちゃ詰められるので、あらゆることに理由をつけていかなくてはならない、指導担当検察官がこれくらいが量刑相場だからOK!と言っても決裁官はそう思っているとは限らない。その時、決め手となった理由を指導担当が言ったから、としては絶対にいけない。大目玉を食らう。私のペアは司法試験に出てくる有名論点で考慮要素をめちゃくちゃに詰められてなんども決裁にいっていた。多分こっそり泣いてた。

検察はこのような事件処理以外に、里親検事という担当検事が割り振られ、捜査と公判の実際の手続きを傍聴できる機会もあった。私の捜査担当検事はキレキレ女性検事で、その方の調書の取り方を真似して調書をとっていたら、「ドSすぎない?」とたしなめられたり。公判担当検事は書面の添削指導をしてくださったりしました。

⒊ 意外とお堅くないのね

検察は、お堅いというイメージは最初だけで、意外とラフな方が多かった。もちろん組織としては上下が明確な固いところなのだが、人の気質はそうでもない。検察官は仮の姿で、音楽を愛していた検事正がいたり、アクセサリーを付けて法廷に行く検察官がいたり。意外な側面が多かった。一緒にミュージックバーにいったりもできた。

が、飲み会は奢ってもらえない。これは伝統なので注意。基本的に検察志望の修習生が偉い人を接待するためにみんなで協力するイベントである。検察官は修習生とおしゃべりしたがっている方が多く、こちらからガンガン行けばいろいろなことをしてくれる。私は今年の修習が施設見学が少なすぎる!と飲み会の場で言い渡したら後日施設見学を増やしてくれた(笑)言ってみるものである。

司法解剖が見られるのは検察修習である。もっとも、都合よくタイミングがあるわけではない。私の班はぎりぎりまで機会がなく(それはいいことではあるのですが)、あまりちゃんとした解剖が見れませんでした。しかも私はその機会さえ、自分の取調べとかぶっていけませんでした。そのほか、捜査の現場に連れて行ってもらえることもありました。

修習生の面倒は事務官の方が見てくれます。私の修習先の型は結構ベテランの方でしたので、私のように気に入られれば多少の遅刻も多めに見てくれたりしましたが、そうでないと。。。非常にやりづらいです。気を付けましょう。

検察修習中に、弁護士会の公演がやっていて、指導担当に行ってもいいかと聞いたのですが、基本的に修習中は修習に専念し、専念させる義務があるとのことで、正直に理由を言われてしまっては許可ができない。ということを言われました。修習には有給がないです、、、が、年に何回かまでは休んでも大丈夫です。なので、何が適切な行動かは自己責任で選びましょう。ただし、急な病気は指導担当に電話越しで尋問されることがあります(実話)。最寄りの病院名に加えて治療費がいくらかまでこたえられるようにしましょう。

私は、検察修習が一番環境としては楽しかったです。指導担当検察官はクールが終わった後も、いつでも遊びに来ていいと言ってくれて、実際に遊びに行っていました。それは、まだ馴染めていない班員の同期と同じ部屋で一堂に会して過ごせたということも大きいかもしれません。74期ではおそらく大部屋で一堂に会するというのは厳しいかもしれません。だからこそ私たちはこの機会で仲を深められたのがとても幸福でありました。私の班は検察志望が複数人いましたのでその三人に協力していくという意識もあり、それもまた一丸になれた要因であったかもしれません。(うち一名しか検察にはなれませんでしたが)。


長くなりましたが、検察編はここで筆をおこうかと思います。次回は刑事裁判編になります。ここまで読んでいただきありがとうございました。

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