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本、飛行機、爬虫類……子どもの『すきなもの』と正面から向き合い、認めつづけた実験結果とは

わくわくして動き出さずにはいられない原動力「わくわくエンジン®」を持って活動している方たちを紹介する連載「わくわくエンジン図鑑」。
認定NPO法人キーパーソン21がお届けします。

わくわくエンジンが発動すると
子どもたちはどんな変化が起きるのでしょうか?

これはいいと思ったものは、まず自分の子どもで実験していると語る、堀江さんにインタビューしました。わくわくエンジンを見つけるプログラム「すきなものビンゴ」を体験した3人のお子さんや、ご自身が変化していく様子を聞いていただけで、こちらもわくわく!もう絶対読んでほしい!(毎回そうですけど)
8月に行われたKMPサマースクールを成功に導いた尚子さんの、関西弁を交えた軽快なトークをお楽しみください。

【図鑑No.22】
お名前 
堀江 尚子
お仕事 
育児サークル運営、小中学生へのロケット教室、キャリア教育等子育て支援活動を通して、人と人とがつながる仕組みを街中につくって、仲間の力で夢を実現できる社会を作ること。
わくわくエンジン
相手の上質世界を見つけて、相手と一緒に実現させること

NPOを立ち上げたいきさつ


——8月に行われたKMPサマースクールをオンライン配信で拝見しました!植松努さん(ロケット開発、株式会社植松電機代表取締役社長)や朝山あつこさん(キーパーソン21代表)、工藤勇一先生(麹町中学校元校長)の講演など、濃くて素晴らしい企画をありがとうございました。まずはKMPくさつ未来プロジェクトの設立に至った経緯などをお聞かせいただけますか?

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私は30歳の時に結婚して熊本から滋賀に来て、上の子ども2人が年子で産まれて、育児がうまくできず、すごく苦手で困っていたんです。

だって子どもって泣きやまんもんね。 当時5〜6年ずっと寝れてないんですよ。8時間寝るとか夢のまた夢でその間、4時間以上寝たことがないという。そんな世界があるなんて誰も教えてくれなかった!誰もそのしんどさを教えてくれなかった!だからとても地獄でした。

私が住む南草津は新しい街で、私と同じような悩みを持つ人が大勢いたけど、行き場所もなくて、子どもとの居場所を作るために、みんなで育児サークルを立ち上げたのが15年くらい前。

その後2015年、育児サークルの規模が大きくなっていく中で行った『うまれる』という映画の上映会が、NPOになるきっかけになったんです。
行政との関わりが増えたあるとき、行政からママの声を教えてくださいと言われて。だからアンケートでママの真剣な声を200人くらい集め、「行政のイベントで、『うまれる』の上映会をやってほしい」と伝えたんです。それが上の人たちに理解されずに却下されて、結局上映会は全然違う企画になってしまって。

それじゃあこの宙に浮いた企画はどうすんの?
必死で集めた生の声をどうしてくれんねん!
確実にママたちの声があるんやから自分たちでやろう!

これが大きなエネルギーになって、2015年に映画の自主上映会をやったのがきっかけになり、育児サークルからひとつ大きなステージに上がり、2016年にNPOを設立しました。

NPO事業の軸に見つけた、わくわくエンジン


—— キーパーソン21に出会う前に、NPOで困っていたことがありましたか?

やっていることはママと子どもの居場所づくりだったので、法人として事業の核がなかったんです。NPOにするんだったら軸になる事業がほしいよねと。

「『どうせ無理』をなくしたい!」を、どうやって日常に落とし込めばいいのか。育児で自分を責めがちな母親の自信が取り戻せるプログラム。母親が自分に自信が持てれば、自己肯定感があがる。すると子どもの自己肯定感も同時に上がります。どうやったらそんなプログラムができるかずっと探していました。

そんな時、2017年に朝山さんに出会ってこれしかないって思って!

子どもたちのわくわくエンジンエピソード


—— 湯浅誠さんがキーパーソン21について書かれたYahooニュースの記事をご覧になったんですよね。

そう、植松さんが講演会で言っていることを日常に落とし込めて、私たちが提供できるプログラムを見つけたぞと。

6月に記事をみて7月にわくわくナビゲーター養成講座を受けて、これは滋賀でやりたいと思い、12月はじめに朝山さんに来てもらってセミナーで話してもらい、12月の半ばに地元でわくなび養成講座を開催、わくナビ(わくわくエンジンを引き出すわくわくナビゲーター)を20人作って、12月25日にクリスマスプレゼントとして、自分たちの子どもたちにテスト的にすきなものビンゴをやってみました。

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—— 展開するスピード感が早いですね

自分の子どもにしたいわけなんで、すぐ大きくなるから待ってられないんですよ(笑)

—— そのときにお子さんたちが「すきなものビンゴ」を受けてるんですよね?

そうそう3人とも全員うけとるよ。
12月、1月、2月と3回、みんなの練習で自分らの子どもに対してやっている。手に取るように成果が出るから面白くて。

—— そんなに違いましたか?

3回やったら、(成果が)3回目で出る感じ。
「マインクラフトというゲームが好き」から大学生にプログラマーという仕事を教えてもらって。自分が今好きでやっていることが将来の仕事につながっていると知って、単純にとてもわくわくしていた。だから次もまた受けてみようってなって。受け続けて3回目で今までより深い自分の「すき」がでてくる。

三男 真くんの場合

たとえば三男の真(まこと)は、最初ゲームとかハムスターとか表面的なことを言っていたけど、毎月深めていく中、3回目で「本」というキーワードが出てきた。

それからすぐ、3月に草津市の防災をテーマにしたビブリオバトル(ビブリオバトルとは、本を5分で紹介し、聴衆が読みたくなった本を投票するスポーツのような書評会)に、「堀江さんとこ、誰かでませんか?」と市役所の人に誘われたんです。

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その時に、頼んできた方は長男か次男の大きい子を考えていたみたいだけど、本だったら真がいいなと。ビブリオバトル当日は私と上の子二人は台湾に行っているから、それまでに真を猛特訓して。そして三男真は大人だらけの防災ビブリオバトルに1人で乗り込みました。
普通ビブリオバトルに4年生が一人で行かないし、その上親も来ないてどういうことやねんて(笑)

結局その日ビブリオバトルで優勝、そこからビブリオの道に進み、そしてこの間(2020年8月)絵本を出したっていう。

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あれは本当にすべてのタイミングがドンピシャ。
朝山さんと出会ってから、2月にわくわくエンジンが「本の面白さを人に伝えること」だとわかったタイミングでのビブリオバトルだったからこそ、できた優勝。

長男 善くんの場合

善(ぜん)は飛行機のことが好きで、飛行機を突き詰めてる。初めは飛行機タクシーやりたいと言ってて、それはそれでよかったんだけど。
3回目になってくると今までと全く違うすきなものが出てくる。

(↓4分で善くんのわくわくエンジンの変遷がまるっとわかります)

今、善はN高に通学しています。
飛行機に関しては、今年1年、室屋義秀さんのユースパイロットプログラムの3人に選ばれていて。9月に無事学科の試験パスして10月からソロフライト訓練の予定。車も運転できんのに(笑)

——すごい!着実に進んでますね

無駄な時間がないんですよね、N高は授業もオンラインで一斉授業とかないから。バイトをしたいからバイトもして、頭も染めてみたり。写真も好きで撮ってて、賞(JPS展)とりました。とにかくやりたいと思ったことは全部手を出してて、今絶対楽しいよ。

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次男 虹斗くんの場合

真ん中の虹斗(ななと)は、現在中学三年で、料理と爬虫類が好きなんです。

夏休みに「魚さばきたいから釣りに連れてけ」と言われて、でも私は釣りに行くの嫌で、なので知り合いが釣りが好きだというので頼んで連れて行ってもらったんです。それも親しい友達とかじゃなくてその時は本当にただの知り合いだった人(笑)
魚のさばき方も、その人が昔鮮魚売り場に勤務していたから、教わったら1日でさばけるようになって、ほらきた、わくわくエンジン!と思った。

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その次は、大阪の爬虫類カフェへ行きたいと言う。 どこで調べてんねん!と思ったけど、そこ行っていろいろ食べたりするんですよ。ヤモリの姿揚げとか、バッタ盛り合わせ,ワニのステーキ!

—— え、食べるんですか!?

食べるの。食べたいって言うからしょうがないなと初級ミールワームの素揚げを注文したら、「やっぱり先にママ食べて」と言う。マジかと思ったけど、「私ががんばるのはここだ!」と思って食べました。それで食べる方は満足したらしくて、その後はただ触れ合って帰ってきた、それが小5か小6の時。

さらに去年は、すきなものビンゴで「無人島に爬虫類を捕りに行きたい」と書いたから、沖縄の無人島へ行って、でもそこでトカゲは見つからなかったから沖縄本島でオキナワキノボリトカゲを捕って帰ってきました。今もヒョウモントカゲモドキなど3匹飼ってます。

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部活は全くしないし勉強も好きじゃないし、コロナの間も3月3段ベッドの2番目でずっと座ってひたすらゲームをしてて、まるで入院生活みたい。でも、それでも超ご機嫌な子でした。

多分普通の親だったらこの子どうなるんだろうと心配だと思うけど、私としては実験してるから一番楽しみな子。今上も下もいい感じで方向性が見えてきた。でも真ん中だけが私の予想を超えてくるからすっごい面白い。

今中3だけど、勉強嫌いだったら高校行かなくていいよと嫌味じゃなくて本気で言っている。周りに流されて高校に行っても絶対楽しくない、そんなところ行っても絶対つまらない。
ついおととい、ぽろっと調理科に行きたいと言ったから「それやそれ、絶対それ正解やで!」って。

わくわくエンジンがわかっているから不安はない

虹斗は小5の時には学校休みがちにもなったし、中学生になっても、地域柄、中学校で部活入っていないのはありえない雰囲気なんだけど、部活にも一切行ってない。逆にその度胸がすごいわと(笑)
毎日小学生より早く帰ってきてオンラインゲームをする生活、この人おもしろいわーと思ってます。

ほかのお母さんだったらきっとイライラする人もいるかもしれないけど、私は朝山さんのわくわくエンジンの考え方のおかげで、子どものために何を見つけてあげたらいいんだろうかと考えることができるようになって。

もちろん、子どもに対して怒る時はある。八つ当たりですけどね。めっちゃイライラしてると、何であんたがゲームしてる間にこっちは家事しなきゃいかんのよ!働け!ていう八つ当たりはあります笑

それに私は今までガチガチの受験でずっときてて、仕事も塾の先生で、バリバリ受験勉強を教えてたんですよ。さらに私の親や旦那の親も全員先生だから、勉強ができてなんぼという人たちばかり。だから、今のこの状況はあり得ない。
わくわくエンジンがわかっていなかったら、塾に行かせて、なるべく偏差値の高い高校に入ってとなるんだろうけど、今一切ない。

でもいきなり今のようになったわけではなくて。
朝山さんに出会う前は、虹斗が本当はずる休みなのに「お腹が痛いと言っているので……」とか「熱があって、、、」と言って学校を休ませていたし、家では「行きなさい!」って殴ったりもしてるんです。そんな葛藤の時期も通ってきて。それが次第に休む言い訳をするのもめんどくさくなって、最後は「ぴんぴんして元気だけど休みます」って言うようになった(笑)「今日は有休です!」って言ったら楽になったわ。

それで今はもう休まなくなったんですよ。2人でトカゲとりに行ったくらいから、本人のイライラがなくなったというか。親は僕のことを応援してくれると思ったのか分からんけど、今精神的に非常に安定している感じやな。
それにわくわくエンジンがわかっているので、こちらも不安はないというか。

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—— 本当に180度考え方が変わったんですね

一番最初に変わったのは私。私自身がわくわくエンジンの考え方ですごく楽になった。

尚子さんのわくわくエンジン


—— そんな尚子さんのわくわくエンジンを聞かせてください。

上質世界って知ってます?

—— 選択理論心理学の言葉ですよね?

それそれ、上質世界っていうのは、誰でも頭の中に必ずある、欲しいものや体験したいことなどが詰まった理想のアルバム、理想郷みたいなもの。

それってわくわくエンジンじゃないですか?
私は相手の上質世界を見つけて、相手と一緒に実現させることに、一番わくわくするんだなと思って。

たとえば、虹斗を大阪の爬虫類カフェに連れて行って、虫を食べた瞬間の自分が一番好き(笑)私めっちゃがんばっとるやんと。

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真の場合では、イギリスのロアルドダール博物館に二人で行ったとき。

真が「すきなものビンゴ」で書いたのが、「ロアルドダール博物館に行く」だったんです。ロアルドダールって『チャーリーとチョコレート工場』を書いた人で、ディズニーと並ぶ有名な児童文学家なんですよ。(真が)その人に会いたいとずっと言ってて、それを実現しようと思って、小4の時に連れて行きました。博物館に行くためだけに学校をお休みして。

ただその人は死んでるから会えないんです。でも博物館に等身大のパネルがあって、そこで目をハートにして、「ダールさん♡」となっていたから真としては大満足。ぶっちゃけなんで彼をそんなに好きなのか私には全く理解できない(笑)理解できないほうが面白い!

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誰かの頭の中に形成された夢を一緒に探し、そのわくわくに浸って気分良くなってる人を見るのが好きですね。

上質世界のことを話す時、みんなめちゃくちゃいい気分になる。その気分を感じるのがめっちゃ好きで、わくわくを感じている人から出てる何か、わたしはたぶんそれをバクバク食べて喜んでるんだと思う(笑)

親以外の大人と関わる大切さ


—— わくわくエンジンをみつけてから、周囲で何か変化はありましたか?

うちの子どもたちを見たママたちが、一歩を踏み出しはじめています。

例えば、動物は絶対飼わないと決めていたママ。理由聞いたら「生き物は死ぬから」って。「そらみんな死ぬやろ、意味わからん!」って。「ハムスターくらい今日買いに行き!」とその日のうちに買いに行かせて(笑)
そうしたらハムスターのおかげで子どもが自分で動画を作っている。
2年後、バージョンアップして、長年禁止していた犬を飼うことことにしたら、夫婦の間で話題が増えて、パパも癒されて、子どもはそこからトリマーが気になりだして……今後、いい具体例が生まれるんじゃないかなと思っています。

結局そういうこと。一気に本質的なところにたどり着くことはない。

まずははじめに、小さなわくわくすることを親に認めてもらわないといけない。大体みんなすごく堅い壁がある。子どもがゲームやハムスターが好きと言ったら、まずはそこをOKと認めてあげる。そうしたら次の奥の望みが言えて、つぎ犬飼いたいと言うんだったら飼ってあげる。

それからほぐれてほぐれて、そうするとやっと中の柔らか〜いわくわくエンジンが出てくると思う。

そして子どもにとって、親以外にも自分を認めてくれる人がいると知るのも大事。子どもが「堀江さんのおかげでママが犬を飼ってくれました」って言うから、「そやで!困ったらいいや!」と言ってます(笑)

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—— なるほど、他の大人の関わりも大事なんですね

それめっちゃ大事!
親子だけで子育ては無理だからね。
私は3人とも基本的に他の人に投げてるからね。

ビブリオ好きな館長に任せている。
虹斗鮮魚売り場の人に任せている。
航空関係の人に任せてる。

私は興味ないけどあなたが興味あるなら、その人を全力で探します、と。
親の役目ってこれくらいで十分ちゃう?

これからやりたいこと


—— 今後KMPや、わくわくエンジンを通して、将来やりたいことなどありますか?

プログラムは自分たちで会場借りてやっていますが、まだ学校実施を滋賀でやれていないんですよ。チャンスはあったけど、コロナで今は入れない状況。でも今後は学校に入りたいですね。

キーパーソン21のプログラムは、上質世界を見つけるのを学校で行うプログラムにしているのがすごいと思っていて。

—— それがゲームでできるのがいいですよね。

そうそうこんな楽しく簡単に?みたいな。

—— 伺っていると親が子どもに対してやれることでは、わくわくを見つけるといった、最初のきっかけ作りが大切なのでしょうか?

わくわくエンジンは、見つけようとしないと見つけられないからね。それに1人じゃ見つからないんですよ。うちもプログラムを何回もやって見つかっている。

今うちの息子たちは目に見えて結果を出しているので、今度は周りの子どもたちに結果を出していきたいです。

ただ、それは誰かのためにやるというよりも、私が好きでやってて、自分が一番やりたくてやってます。


あとがき
「わくわくエンジン」と出会って、フルスピードでご自身の子どもたちに実践(実験?)されてきたパワフルな尚子さん!子どもたちの「好きなこと、やりたいこと」をひとつひとつ認めていくと、こんなにのびのびと大きな夢に向かって育つんだ!と、お話を伺っていたわたしが興奮してしまい、インタビュー後、気持ちを落ち着かせに散歩に行ったほどです(笑)
尚子さんのお話は、子育てで悩む方々にとってひとつの指針になるのではないでしょうか?
ただ、虫を食べるのだけは、わたしはムリー!
(ライター・てらっち)

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