宇野常寛

宇野常寛 (評論家/「PLANETS」編集長) 連絡先→ wakusei2ndあっとy…

宇野常寛

宇野常寛 (評論家/「PLANETS」編集長) 連絡先→ wakusei2ndあっとyahoo.co.jp 070-6449-6489 著書に『ゼロ年代の想像力』『リトル・ピープルの時代』 『母性のディストピア』など。

マガジン

  • u-note(宇野常寛の個人的なノートブック)

    宇野常寛がこっそりはじめたひとりマガジン。社会時評と文化批評、あと個人的に日々のことを綴ったエッセイを書いていきます。いま書いている本の草稿や没原稿、なども載せていく予定。SNSでは書く気にならないことを、実はかなりマメに更新しています。月に数万字は余裕で更新しているので、かなりお得です。

記事一覧

『新宿野戦病院』と「雑さ」の問題

先日完結した『新宿野戦病院』は、ここしばらくのクドカンこと宮藤官九郎作品のなかでもっとも彼の持ち味がポジティブに発揮されたものだと思う。 しかし実のところ、僕は…

宇野常寛
14時間前
21

僕たちは「コロナ禍」に一度負けた

昨日、丸若裕俊さんと久しぶりにゆっくり話す機会があった。彼とは同世代で、かかわっている分野は違うけれど、彼を紹介してくれたチームラボの猪子寿之さんもそうだけれど…

宇野常寛
2日前
52

事物を「ひとり」で受け止めるとはどういうことか

 ここ最近、考えていることがある。それは、事物を「ひとり」で受け止めるとはどういうことか、ということだ。  僕がこういうことを考えるようになったきっかけは、意外…

宇野常寛
3日前
58

森に入るとき、人間の身体は否応なく変化する➖➖『マタギドライヴ』の旅 #7

 永沢さんと益田さんに連れられて、僕たちは狩り場へと案内された。ほんの少し自動車で走っただけなのに、そこはもう携帯電話の電波の入らない領域だった。僕たちは麓のキ…

宇野常寛
4日前
32

「アジテーション」でも「考察」でもない「批評」の楽しさをどう、伝えるか

昨日、成馬零一さん、三宅香帆さんと映画『ラストマイル』についての座談会を収録した。動画は明日にでも公開になるはずだが、そこで後半、話題になったのはいま、「批評」…

宇野常寛
6日前
58

小泉進次郎出馬会見における「侮辱的な質問」について

先日、小泉進次郎の自由民主党総裁選出馬会見の配信を思わず作業の手を止めて最初から最後まで観てしまった。よく練り込まれた内容だと感心した。選択的夫婦別姓は導入を明…

宇野常寛
7日前
65

距離と技術―― 『マタギドライヴ』の旅 #6

さて、秋田への取材旅行記の続きも、週1回くらいのペースで更新していこうと思う。 僕が食べたさくら定食の馬肉は、しっかり肉肉しい歯ごたえのある牛丼屋の具のような感…

宇野常寛
12日前
37

『きみの色』と「動機」の問題

楽しみにしていた映画『きみの色』をさっそく観てきた。明日はニッポン放送の吉田尚記アナウンサーの司会で、この映画についての座談会も配信する予定なのだが、その前に論…

宇野常寛
13日前
26

自民党総裁選と立憲民主党代表戦のクリティカル・ポイント

さて、今日は久しぶりに「政治」の話をしたいと思う。先日、古谷経衡さんと久しぶりに対談した。テーマはこの国の「保守」だったのだけど、時節的に自民党の総裁選の話題に…

宇野常寛
2週間前
41

「旅」を「観光」から解放する ――『マタギドライヴ』の旅 #5

角館から秋田内陸鉄道に乗って、僕たちは阿仁へと向かった。夏休みのせいか車内は観光客で混み合っていて、その熱気の中でガイドのおばちゃんが慣れた調子で車窓の風景を解…

宇野常寛
2週間前
39

『ラストマイル』と「仕事」の問題

秋田のマタギ取材の旅行記は1回お休みして、今日は別のことを書きたい。 週末に、早速『ラストマイル』を観てきた。後日座談会も企画しているのだが、今日はこの映画につ…

宇野常寛
3週間前
63

土地は「どの道から訪れるか」でその顔を変える 『マタギドライヴの旅』 #4

8月13日の朝、僕たちは秋田の阿仁へと出発した。羽田空港から発つ行きの飛行機は、朝の7時の便を手配していた。だから比較的都心に暮らしている僕も5時には起きなければい…

宇野常寛
3週間前
39

「百姓」性と「マタギ」性―― 『マタギドライヴ』の旅 #3

少し間が空いてしまったが、今日から「マタギドライブの旅」の更新を再開したいと思う(途中、書きたいことが出たら別の話題を挟むかもしれないが……)。このnote自体は基…

宇野常寛
3週間前
45

なぜ「デジタル」ネイチャーが「マタギ」につながるのか――『マタギドライヴ』の旅 #2

さて、今日は前回に続き、『マタギドライヴ』のための阿仁(打当)への取材を振り返りたいと思う。 僕たちはまず古い友人である秋田公立大学の石倉敏明さんに、マタギの発…

宇野常寛
1か月前
60

落合陽一、マタギの里へーー『マタギドライヴ』の旅 #1

『マタギドライヴ』という言葉が、いつから彼の口から出始めたのか、正確には覚えていない。しかし彼の『デジタルネイチャー』という本をつくっていく中で僕と彼、落合陽一…

宇野常寛
1か月前
75

『化け猫あんずちゃん』と「モラトリアム」の問題

 最近観たものの中で、僕がとりわけ感心したのは『化け猫あんずちゃん』というアニメ映画だ。  これはいましろしんじの漫画を原作に、山下敦弘と久野遥子が共同監督を努…

宇野常寛
1か月前
30
『新宿野戦病院』と「雑さ」の問題

『新宿野戦病院』と「雑さ」の問題

先日完結した『新宿野戦病院』は、ここしばらくのクドカンこと宮藤官九郎作品のなかでもっとも彼の持ち味がポジティブに発揮されたものだと思う。

しかし実のところ、僕は危うくこのテレビドラマを「1話切り」するところだった。それは初回の印象があまりよくなかったからだ。実はここ数年クドカンドラマのあの「クドカン喋り」が苦手になってきた。『池袋ウエストゲートパーク』や『木更津キャッツアイ』のころはあの、あれだ

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僕たちは「コロナ禍」に一度負けた

僕たちは「コロナ禍」に一度負けた

昨日、丸若裕俊さんと久しぶりにゆっくり話す機会があった。彼とは同世代で、かかわっている分野は違うけれど、彼を紹介してくれたチームラボの猪子寿之さんもそうだけれど、同じような問題意識を持って活動しているプレイヤーだとずっと思っている。

そして昨日は不意に、お互いのこの10年くらいーー「震災」から「コロナ禍」までーーの活動を総括するような話になった。そこで僕が強く感じたのは、僕たちは「負けた」という

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事物を「ひとり」で受け止めるとはどういうことか

事物を「ひとり」で受け止めるとはどういうことか

 ここ最近、考えていることがある。それは、事物を「ひとり」で受け止めるとはどういうことか、ということだ。

 僕がこういうことを考えるようになったきっかけは、意外と自分の頭と身体で事物を受け止めている人は少ないのではないか、と思うことがこの仕事をする上でとても多かったからだ。

 たとえば、僕はキャリアをサブカルチャーの批評から出発している。これは「好きなもの」を語る仕事のはずだ。しかし実際にこの

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森に入るとき、人間の身体は否応なく変化する➖➖『マタギドライヴ』の旅 #7

森に入るとき、人間の身体は否応なく変化する➖➖『マタギドライヴ』の旅 #7

 永沢さんと益田さんに連れられて、僕たちは狩り場へと案内された。ほんの少し自動車で走っただけなのに、そこはもう携帯電話の電波の入らない領域だった。僕たちは麓のキャンプ場の駐車場に自動車を停めて、改めて身支度した。そこには無数のアブが飛び交っていて、少し自動車のドアを開けただけで数匹のアブが侵入してきた。益田さんは、アブには刺される前提で来るように僕たちに指示していた。僕たちはその指示にすっかりビビ

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「アジテーション」でも「考察」でもない「批評」の楽しさをどう、伝えるか

「アジテーション」でも「考察」でもない「批評」の楽しさをどう、伝えるか

昨日、成馬零一さん、三宅香帆さんと映画『ラストマイル』についての座談会を収録した。動画は明日にでも公開になるはずだが、そこで後半、話題になったのはいま、「批評」が流通しなくなっていることの問題だ。

「批評」とは、特定の政治思想に作品内の表現が合致しているか否かでジャッジするものではない。それはただの「アジテーション」だ。そして、パズルを解くように作者の用意した設定や伏線を読み解き、「正解」の解釈

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小泉進次郎出馬会見における「侮辱的な質問」について

小泉進次郎出馬会見における「侮辱的な質問」について

先日、小泉進次郎の自由民主党総裁選出馬会見の配信を思わず作業の手を止めて最初から最後まで観てしまった。よく練り込まれた内容だと感心した。選択的夫婦別姓は導入を明言する一方で、同性婚などについては触れない、という「(悪い意味で)賢い」戦略が見え透くところが鼻につくが、実際に彼が言葉にした政策の内容そのものは(概ね平成の「改革」派が主張してきたことの最小公倍数であるだけに)異論はなく、素直に応援できる

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距離と技術―― 『マタギドライヴ』の旅 #6

距離と技術―― 『マタギドライヴ』の旅 #6

さて、秋田への取材旅行記の続きも、週1回くらいのペースで更新していこうと思う。

僕が食べたさくら定食の馬肉は、しっかり肉肉しい歯ごたえのある牛丼屋の具のような感じだった。僕はこのときまで、この土地に馬肉を食べる習慣があることを知らなかった。小麦アレルギーの落合君は、うさぎラーメンの麺だけを起用に取り除いて具をつまみ、スープを啜っていた。

早めに食べ終わった僕は、楽天チームと永沢さん、増田さんの

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『きみの色』と「動機」の問題

『きみの色』と「動機」の問題

楽しみにしていた映画『きみの色』をさっそく観てきた。明日はニッポン放送の吉田尚記アナウンサーの司会で、この映画についての座談会も配信する予定なのだが、その前に論点整理をしておこうと思う。

結論から述べてしまうと、この映画について僕は「総合的には」あまり関心しなかった。より正確に言うならこの作品については眼を見張るほど素晴らしい部分と、さすがにこれはないのではないか……と思う部分とがはっきりと分か

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自民党総裁選と立憲民主党代表戦のクリティカル・ポイント

自民党総裁選と立憲民主党代表戦のクリティカル・ポイント

さて、今日は久しぶりに「政治」の話をしたいと思う。先日、古谷経衡さんと久しぶりに対談した。テーマはこの国の「保守」だったのだけど、時節的に自民党の総裁選の話題にも多く触れている。

この議論の内容は動画のほうを見てほしいのだけど、今日ここで書きたいのは別の話だ。
これを言うと、いろいろな方面から怒られそうなのだけど、やっぱり僕はどこかで、立憲民主党と日本維新の会は共闘するべきだと思うのだ。

僕は

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「旅」を「観光」から解放する ――『マタギドライヴ』の旅 #5

「旅」を「観光」から解放する ――『マタギドライヴ』の旅 #5

角館から秋田内陸鉄道に乗って、僕たちは阿仁へと向かった。夏休みのせいか車内は観光客で混み合っていて、その熱気の中でガイドのおばちゃんが慣れた調子で車窓の風景を解説していった。右手に見える山はこのように呼ばれていて、次の駅を過ぎると見えてくる田んぼアートは今年のコラボレーションしている『クレヨンしんちゃん』の野原しんのすけが描かれているとか、その類のことだ。おそらくは定番の、下手をすれば何十年も続け

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『ラストマイル』と「仕事」の問題

『ラストマイル』と「仕事」の問題

秋田のマタギ取材の旅行記は1回お休みして、今日は別のことを書きたい。

週末に、早速『ラストマイル』を観てきた。後日座談会も企画しているのだが、今日はこの映画について観終わってすぐに考えたことをまとめようと思う。

そして結論から述べれば、この作品は国内のエンターテインメント史的に重要な作品になるのではないかと思う。もっと言ってしまえば、今後は「それは2024年に『ラストマイル』が通過した地点だ」

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土地は「どの道から訪れるか」でその顔を変える 『マタギドライヴの旅』 #4

土地は「どの道から訪れるか」でその顔を変える 『マタギドライヴの旅』 #4

8月13日の朝、僕たちは秋田の阿仁へと出発した。羽田空港から発つ行きの飛行機は、朝の7時の便を手配していた。だから比較的都心に暮らしている僕も5時には起きなければいけなかった。台風については、前の晩からあるレベルでは安心していた。奥羽山脈を超えて秋田県北部を直撃した台風は前日のうちに日本海に抜けていて、少なくとも東京は晴れていた。現地の秋田も雨がちではあるけれど風は止み、飛行機が欠航するリスクはな

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「百姓」性と「マタギ」性―― 『マタギドライヴ』の旅 #3

「百姓」性と「マタギ」性―― 『マタギドライヴ』の旅 #3

少し間が空いてしまったが、今日から「マタギドライブの旅」の更新を再開したいと思う(途中、書きたいことが出たら別の話題を挟むかもしれないが……)。このnote自体は基本、週に4〜5日のペースで更新すると思うので、マメにチェックしてもらえたら嬉しい。

さて、前回述べたように僕たちは阿仁への取材の下準備を兼ねて、阿仁の人たちと僕らを繋いでくれた石倉敏明さんと落合君との対談を行った(司会は僕が行った)。

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なぜ「デジタル」ネイチャーが「マタギ」につながるのか――『マタギドライヴ』の旅 #2

なぜ「デジタル」ネイチャーが「マタギ」につながるのか――『マタギドライヴ』の旅 #2

さて、今日は前回に続き、『マタギドライヴ』のための阿仁(打当)への取材を振り返りたいと思う。

僕たちはまず古い友人である秋田公立大学の石倉敏明さんに、マタギの発祥の地である阿仁への取材を考えているのだと相談した。

僕たちがこの時点で危惧していたのは、東京の情報産業やメディアの関係者が、ロマンチックな外部を求めて秋田の中山間地域の文化を見物に来る……といった図式に嵌まらないことだ。僕はもう何年も

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落合陽一、マタギの里へーー『マタギドライヴ』の旅 #1

落合陽一、マタギの里へーー『マタギドライヴ』の旅 #1

『マタギドライヴ』という言葉が、いつから彼の口から出始めたのか、正確には覚えていない。しかし彼の『デジタルネイチャー』という本をつくっていく中で僕と彼、落合陽一君との間では既に次は、これまで書いてきたような「世界はこのように変化する」と分析する本ではなく、変化した世界でどう生きるかを考える本にすることは、暗黙の了解として決まっていたように思う。そして編集の追い込みのころにその「次の本」には「マタギ

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『化け猫あんずちゃん』と「モラトリアム」の問題

『化け猫あんずちゃん』と「モラトリアム」の問題

 最近観たものの中で、僕がとりわけ感心したのは『化け猫あんずちゃん』というアニメ映画だ。

 これはいましろしんじの漫画を原作に、山下敦弘と久野遥子が共同監督を努めたアニメ映画だ。実写映画の監督である山下と、アニメーションを中心に活動する久野がコンビを組んでいるのは、この映画が「ロトスコープ」という実写映像で撮影した俳優の動きを絵にトレースする手法を採用しているからだ。しかも本作では、山下が実質的

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