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平成史──ぼくらの昨日の世界

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まもなく終わりを迎えようとしている〈平成〉。この晴れ渡りながら同時に霧が立ち込めたような、奇妙な時代のあり方について考えます。
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記事一覧

與那覇潤 平成史──ぼくらの昨日の世界 第13回 転向の季節:2013-14(後編)

今朝のメルマガは、與那覇潤さんの「平成史──ぼくらの昨日の世界」第13回の後編をお送りします。 宮崎駿監督の4度目の「引退作」となった『風立ちぬ』が「最良の歴史修正主義」たる相貌をみせた2013年夏の参院選では、平成政治の劇的な展開の原動力となってきた「ねじれ国会」がついに解消。安倍政権の国家主義的な宿願が次々と叶えられていくなかで、右派・左派を問わず歴史の文脈を空洞化させながら、いよいよ「戦後」への逆戻りが本格化していきます。 ※前編はこちらから 與那覇潤 平成史

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與那覇潤 平成史──ぼくらの昨日の世界 第13回 転向の季節:2013-14(前編)

今朝のメルマガは、與那覇潤さんの「平成史──ぼくらの昨日の世界」第13回の前編です。 第二次安倍晋三内閣で掲げられた「アベノミクス」の看板政策として採用された「リフレ」。デフレ脱却を旗印に異次元の金融緩和が繰り返されるなか、それは経済政策としての領分を超え、二度目の東京五輪招致とも結びついて「高度成長期への回帰」ムードを招き、改革の時代としての平成の価値が根底から覆されていく潮流の引き金となっていきます。 與那覇潤 平成史──ぼくらの昨日の世界 第13回 転向の季節

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【新連載】與那覇潤 平成史ーーぼくらの昨日の世界 序文 蒼々たる霧のなかで

今朝のメルマガは、與那覇潤さんによる新連載「平成史」です。昭和のような、誰しもが共通して抱く時代のイメージを、最後まで持ち得なかった「平成」。インターネットという巨大なアーカイブを擁しながら、全体像を見通すことができない、晴れ渡りながら同時に霧が立ち込めたような、奇妙な時代のあり方について考えます。 與那覇潤さんの過去の記事はこちら 【対談】與那覇潤×宇野常寛「鬱の時代」の終わりに――個を超えた知性を考える(前編 ・後編) 歴史を喪った時代 青天の下の濃霧だ――。平成の日

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與那覇潤 平成史ーーぼくらの昨日の世界 第1回 崩壊というはじまり:1989.1-1990

今朝のメルマガは、昨日に続いての連続配信、與那覇潤さんによる「平成史」の第1回をお届けします。昭和最後の年となった1989年は、奇しくも「昭和天皇の崩御」や「東西冷戦の終結」といった歴史的事件が重なった1年でした。それは、保守革新の両陣営における擬制的な「父」の死と、それにともなう抑圧なき時代ーー「平成」の始まりを告げるものでした。 ツヴァイクの「ダイ・ハード」 「昨日の世界」ということばをご存じですか。オーストリアの作家シュテファン・ツヴァイクがアメリカ大陸での亡命行のさ

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與那覇潤 平成史ーーぼくらの昨日の世界 第2回 奇妙な政治化:1991-92

今朝のメルマガは、與那覇潤さんの「平成史」お届けします。第2回では、1991年に始まった『批評空間』と『ゴーマニズム宣言』から、平成初期の言論状況ーー〈子供〉であり続けることと、〈父〉を擬制することが、奇妙に共存する日本のポストモダンについて。さらに、同時期に進行していたアカデミズムの制度的変化がもたらした影響について考えます。 「運動」し始める子供たち 平成3~4年にあたる1991~92年に、平成思想史を描く上で欠かせないふたつのメディアが発足します。91年4月に柄谷行人

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與那覇潤 平成史ーーぼくらの昨日の世界 第3回 知られざるクーデター:1993-94(前編)

今朝のメルマガは、2日連続配信で與那覇潤さんによる「平成史ーーぼくらの昨日の世界」の第3回をお届けします。1993年、自民党一党支配の55年体制が終焉し、細川護煕首相による連立内閣が発足します。しかし、日本型多元主義に基づく「穏健な多党制」を志した改革は、いつしか小沢一郎とそのブレーンである若手学者たちによる『日本改造計画』、小選挙区制による「集権的な二大政党制」へとすり替わっていきます。 フェイクニュースだった大疑獄 1993年(平成5年)が、日本政治の分水嶺だったことを

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與那覇潤 平成史ーーぼくらの昨日の世界 第3回 知られざるクーデター:1993-94(後編)

今朝のメルマガは、昨日に続いての連続配信、與那覇潤さんによる「平成史ーーぼくらの昨日の世界」の第3回(後編)をお届けします。1993年の政変の内部で行われていた「父殺し」。その中心となったのは、左翼運動からの転向経験を持たない世代の学者たちでした。そして同時期、「女(少女)」という論点から旧守派を批判する、2人の若手社会学者が登場します。(この記事の前編はこちら) 転向者たちの平成 ほんらいの細川ブレーンだった香山健一や、佐藤誠三郎らのビジョンの相対的な穏和さを考えるとき、

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與那覇潤 平成史──ぼくらの昨日の世界 第4回 砕けゆく帝国:1995

今朝のメルマガは、與那覇潤さんの「平成史──ぼくらの昨日の世界」の第4回をお届けします時代の転換点と言われる「1995年」。55年体制の終焉、オウム真理教事件、サブカルチャーの爛熟──その背景にあったのは、かつて江藤淳が「ごっこ遊び」と批判した、戦後日本の欺瞞を覆い隠していたアイロニーの機能不全でした。 エヴァ、戦後のむこうに「それは今すぐにも切り裂かれる空の、告別の弥撒(ミサ)のようだ。パイプ・オルガンの光りだ、あれは。  ……この銀いろの鋭利な男根は、勃起の角度で大空を

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與那覇潤 平成史──ぼくらの昨日の世界 第5回 喪われた歴史:1996-97(前編)

今朝のメルマガは、與那覇潤さんの「平成史──ぼくらの昨日の世界」の第5回をお届けします。1996年、日本の戦後史を象徴する3人の歴史家(丸山真男、高坂正堯、司馬遼太郎)が逝去。以降「歴史の摩耗」は止めどなく進行します。今回は「歴史」が生きていた最後の時期──自社さ連立政権時代を振り返ります。 「戦後の神々」の黄昏 後世にも歴史学という営みが続くなら、平成9年(1997年)は「右傾化の原点」と記されるかもしれません。同年1月、西尾幹二会長・藤岡信勝副会長の体制で「新しい歴史教

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與那覇潤 平成史──ぼくらの昨日の世界 第5回 喪われた歴史:1996-97(後編)

今朝のメルマガは、與那覇潤さんの「平成史ーーぼくらの昨日の世界」の第5回の後編をお届けします。1997年の「つくる会」発足に端を発する右傾化、その背景には、基軸なきポスト冷戦期における相対主義の浮上など、複雑な世相がありました。一方、カルチャーの世界では、安室奈美恵が女子高生のカリスマとなり、宮崎駿が国民的映画監督としての地位を固めます。 死産した「歴史修正主義」 私が歴史修正主義(者)という用語をはじめて耳にしたのは、高校2年生だった1996年ごろだと思います。歴史ではな

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與那覇潤 平成史──ぼくらの昨日の世界 第6回 身体への鬱転:1998-2000(前編)

今朝のメルマガは、與那覇潤さんの「平成史──ぼくらの昨日の世界」の第6 回の前編をお届けします。90年代末に進行した「言語」の退潮と「身体」の前景化。それは精神分析的な思想の凋落を促すと同時に、石原慎太郎や小林よしのりに象徴される、身体と国家が直接的に結びついた「平成の右傾化」の始まりでもありました。 自殺した分析医 絶対的な価値観が失われたいま、言葉で議論を尽くしても結論は出ない。だったら結局のところ、圧倒的なカリスマが体現する説得力に頼るしかない──。1999(平成11

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與那覇潤 平成史──ぼくらの昨日の世界 第6回 身体への鬱転:1998-2000(後編)

今朝のメルマガは、與那覇潤さんの「平成史──ぼくらの昨日の世界」の第6回の後編をお届けします。90年代後半、機能不全に陥った「父殺し」の原理を乗り越えるべく、新しい世代の批評家たちが次々と登場します。思想や批評の「情報化」が進む一方、政治の世界では公明党と共産党が、00年代の権力基盤を着々と準備していました。 届かない郵便 政治を構成する表現から言語が退潮し、フロイト的な精神分析すらも無効になって、すべてが身体感覚を通じた同一化に埋没してゆく。最初にそうした転回を見抜いて危

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與那覇潤 平成史──ぼくらの昨日の世界 第7回 コラージュの新世紀:2001-02(前編)

今朝のメルマガは、與那覇潤さんの「平成史──ぼくらの昨日の世界」の第7回の前編をお届けします。2001年、小泉純一郎が内閣総理大臣に就任します。新自由主義の潮流に乗り、高い支持率を背景に構造改革、規制緩和を推し進めたその政策の伏線は、90年代にありました。 エキシビジョンだった改革 元号が替わったいま、遠からず各種の入試でも平成史から出題される事例が増えてゆくのでしょう。それは同時代が「過去」になることの徴候ですが、せっかくですので本連載でもひとつ、問題を出してみようと思い

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與那覇潤 平成史──ぼくらの昨日の世界 第7回 コラージュの新世紀:2001-02(後編)

今朝のメルマガは、與那覇潤さんの「平成史──ぼくらの昨日の世界」の第7回の後編をお届けします。「9.11」で幕を開けた2000年代。政治・言論の領域では「歴史の失効」と「運動への回帰」が進行します。インターネットの大衆化と2ちゃんねるの隆盛にともない、変化する社会の力学。それを利用したのは、昭和期には非主流派だった「異形の父たち」でした。 崩壊するアソシエーション 2001年9月11日、イスラム原理主義のテロ組織がハイジャックした旅客機を世界貿易センター(ニューヨーク)とア

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